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学年一の不良が図書館で勉強してた。  作者: 山法師


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52/54

52 マリアちゃんとウェルナーさん


 ここまでの誤字脱字報告ありがとうございます。見落としがめちゃくちゃあってすみません。(2024/8/14)



「(なあ光海)」

「(なんでしょうか、ウェルナーさん)」


 バイト先にて。

 三者面談終わったな、と思いつつ、呼ばれたので、そっちへ行けば。


「(マリア、まだ、フリー?)」


 おおう。


「(マリアちゃんから、そういう話は聞いてませんね。……交換した連絡先は、どうしたんですか?)」


 後半を、小声で言う。


「(ん、まだ、持ってる。繋がってる)」

「(なら、連絡してみたらどうでしょうか?)」

「(……まー、だよなー。悪い、コーヒーくれ)」

「(かしこまりました)」


 メモ、厨房、コーヒーを持って、ウェルナーさんの所へ。

 おまたせしました、と置けば。ありがとう、あとはいい、とのことで、引っ込んだ。


 ウェルナーさんは今年で23歳である。私がここで働き始めて、マリアちゃんと桜ちゃんを呼んで。その時に、丁度ウェルナーさんが、ヴァルターさんと一緒に来ていた。

 私は、ウェルナーさんにマリアちゃんのことを聞かれて、友人です、と答えて。

 あとは、ウェルナーさんがマリアちゃんに話しかけて。ヴァルターさんがウェルナーさんを宥めつつ、それに加わり、桜ちゃんも話に加わって。

 ウェルナーさんがマリアちゃんの連絡先をゲットした、とこまでは、実際に見ている。


 そのあとは、ウェルナーさんとマリアちゃんからの伝聞だ。ウェルナーさんが連絡してはマリアちゃんが返事をする。その繰り返しを、ぽつぽつと。で、2ヶ月ほどして、ウェルナーさんから、食事に誘ったのだとか。マリアちゃんはそれを断り、気持ちには答えられないと返事をした、そうだ。ウェルナーさんはそれに号泣したらしいけど、私がシフトに入った時、また、少し泣きながらその話を聞かせてくれた。私はそのあと、自分なりにさりげなぁくマリアちゃんに、ウェルナーさんのことを聞いて。


『そのままの気持ちだから。気を遣わせて悪い』


 と、言われたので。

 気にしないことにした。そして、二人は店で顔を合わせても、会話をしないか、距離を保ちつつ会話をする。そんな関係になった。

 と、回想しながら、会計を済ませる。テーブルを片付け、店内を確認して、隅へ。

 マリアちゃんなー。そもそもそういう話、苦手そうなんだよなー。けど、連絡先が繋がってるなら、まだ、望みはありそうに思えるけど。

 考えていたら、呼ばれ、注文を取り、ルーティンをこなし。


 ふと、思う。今日も、ベッティーナさんとアレッシオさんが来ている。ウェルナーさんは、マリアちゃんのお姉さんであるベッティーナさんのことを知っている訳で。

 ……想い人の姉が恋人と愛を語らっているのを、どんな心境で聞きながら、コーヒーを飲んでいるのか。

 いや、接客接客。切り替えよ。私はバイトに集中した。


  ◇


 渡された通知表を見て、私は、ほっと息を吐く。

 うん、特待生の枠内に、収まってる。しかも少しだけど、前より良い待遇だ。

 まだ教室内はざわついているし、時間も少しあるので、涼へと顔を向ける。


「…………」


 なんだか難しい顔をしているな。ちょっと聞こうかな。


「では、そろそろ終業式なので、皆さん、一度、第一体育館へ」


 担任の先生がそう言ったので、涼に聞くのはあとで、と、第一体育館へ向かった。


「終わったねー。一学期」


 桜ちゃんが言う。


「終わったな。学校関連では特に何もなくて良かった」


 マリアちゃんが言う。……それは、ベッティーナさんたちのことを言ってます?


「終わったねー。まあ私、このあとバイトだけども」

「え、ならさ。また行っていい?」


 桜ちゃんの問いかけに「うん、どうぞ」と答えて。


「お二人さんは? これから空いてる?」

「5時までなら」


 と、マリアちゃん。


「空いてる」


 と、涼が言う。


「ならみんなで行こ♪」


 店に着いて、三人に入ってもらって、私は裏から。

 挨拶をして、支度をして、ホールへ。


「……」


 おおう、ウェルナーさん。ヴァルターさんも居るけども。


「(光海、いいかい?)」


 既に来ていたらしいクリスさんに呼ばれ、ルリジューズ──シュークリームを重ねたお菓子──とアイスコーヒーを頼まれ、ルーティンをこなす。

 涼たちは、夏休みの過ごし方について話しているらしい。注文は、アデルさんが取った。


「みつみん、今いい?」

「うん」


 そのテーブルへ行けば。


「フランスには8月に行くんでしょ? みつみんはそれまで、どうするの?」

「んー……ホームステイの計画を涼と確認する予定をしてて、荷物のチェックしたり、勉強したり……あ、二人はお土産、何が良い?」

「可愛い工芸品」


 と桜ちゃん。


「何か、布系のものが良いな。ハンカチとか」


 とマリアちゃん。


「了解」

「でさ、私が言いたかったのはね? お二人はどっか、遊びに行かないのかなーって」


 遊び、か。


「涼、どうします?」

「……なんか、考える」

「分かりました。……あとは、何かある?」


 三人の顔を見回し、聞く。無いということなので、引っ込んだ。

 そのあとは、普通にバイト。お昼の賄いを食べて、身だしなみチェックして、またホールへ。

 マリアちゃんと桜ちゃんの会計をして、涼は残るということで、飲み物を頼まれ、メモして、食器を持って厨房へ。ルーティンで、涼の所へ。

 飲み物を置いて、引っ込みかけたところで、ウェルナーさんに呼ばれた。


「(なんでしょうか?)」

「(いやさ、この前のこと。連絡してみた)」


 そこで口を閉じられたので、


「(……それで、どうしました?)」


 と、小声で聞く。


「(返してくれた。また、連絡して、良いって。今日会う……来るとは思ってなかったから、内心びびったけど。勇気出して良かった。ありがとう、光海)」

「(いえ、こちらこそ)」


 で、そのまま会計するとのことで、会計へ。


「(ありがとう光海。弟の相談に乗ってくれて)」


 ヴァルターさんに言われ、いえ、こちらこそ、と答えた。

 そして、テーブルを片付け終え、店内を見回すついでに、涼を見る。テーブルに広げた本をそのままに、スマホで何かしていた。まあ、困ってはなさそうだ。

 そして、仕事を終える時間が迫ってきているので、私は涼の所へ。


「そろそろ上がりますけど、どうします?」

「ああ、一緒に帰るわ。会計頼む」


 スマホから顔を上げた涼は、そのままササッと片付けて、会計へ。それを終え、私はテーブルを片付け、丁度時間で。

 奥へ引っ込み、身じたくを整え、挨拶をして。

 出てからスマホを見よう、と裏から出たら、涼が居た。


「あ、来たか。一応、送ったんだけど」

「すみません。まだ見てません」

「そか。まあ、帰ろう」


 で、手を繋いで、帰る途中、


「涼、通知表を見ている時、なんだか難しい顔をしている感じでしたけど、どうしました?」

「ん、や、……これは現実かな、と」

「……良い意味で、ですか?」

「うん。そう。……父さんたち、どんな顔するかなと」

「喜んでくれると思いますよ。……あと、差し出がましいかも知れませんが、日向子さんも」

「……ああ、そうだよな。……ありがとう、光海」

「こちらこそ、涼」


  ◇


「(お前は彼女一筋だな)」


 家に帰ってきて、ヴァルターは言った。


「(兄さんだって義姉さん一筋だろ)」


 ウェルナーは、なんでもないことのように言う。


「(そうだな。(かおる)は天に行ってしまったけど、彼女はまだ、ここに居るしな。……イタリア語、ちゃんと話せるようになったんだから、話してみればいいのに)」

「(うっせ。簡単に出来てたら苦労しねぇわ)」


 ウェルナーは苛ついた声で言い、自室へ入ってしまった。


「(……兄弟だからかな。お前と私は似ているよ)」


 閉まっているドアに向かって、ヴァルターは苦笑した。




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