表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学年一の不良が図書館で勉強してた。  作者: 山法師


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/54

46 期末試験、からの打ち上げ

 一学期の期末試験は、3日に渡って行われる。

 私はいつも、前日と2日目までバイトをいれないことにしているけど、今回は、打ち上げがあるので、最終日も入れていない。4日連続でシフトを入れないなど、いつ振りだろうか。けど、ラファエルさんも、安定期に入って随分楽になったというアデルさんも、大丈夫だと言ってくれた。ので、甘えることにした。


 私はまだ、17だ。高校生だ。両親にも祖父母にも、もっと甘えてくれていいと言われた。ので、今は試験に集中だ。

 初日。しっかりと手応えを感じた。一緒に帰りながら涼に聞けば、なんとか全部、埋めることは出来た、と。そのまま一緒に、次の日の対策。

 マリアちゃんと桜ちゃんとも、対策期間の途中から、放課後一緒に1時間、対策をしている。涼も同席して。


 そして、2日目が終わり、3日目の昼過ぎ、最後のテストの、終了の声がかかり。

 私は細く、長く息を吐いた。……うん、どれも手応えはあった。あとは自己採点だ。その前に打ち上げだけども。

 そして、テストは回収されて、あとは、下校するだけ。


「光海」

「涼」


 振り返れば、すぐ近くに涼がしゃがみ込んでいた。


「(お疲れ様)」


 涼に言われる。


「(あなたもお疲れ様です。涼)」


 周りは私たちのやり取りを気にしていない。もうとっくに、お付き合いはバレている。口にしてはいないけど、暗黙の了解みたいな感じ。


「みっつみん!」


 ドアの所に、桜ちゃんとマリアちゃんが居た。


「行きましょうか」

「ああ」


 私が椅子から立つのを見てから、涼は立ち上がった。涼も、打ち上げに参加する。

 さて、これから、約1年ぶりに、あの店のお客さんになるんだけど……。


  ◇


 カラン、と、マリアちゃんがドアを開ける。4人でお店に入る。

 伝えてはあるけど、なんか、緊張する……。


「いらっしゃいませ」


 マタニティのワンピースを着たアデルさんが、出迎えてくれた。

 席は決めるとマリアちゃんが言ってくれて、壁際、真ん中あたりの4人席へ。

 私と涼は隣。対面にマリアちゃんと桜ちゃん。

 おお、またアイリスさんが来ている。細身だけど沢山食べるらしいアイリスさんは、この店の味を気に入ってくれたようで、会う度、制覇する勢いで注文をしてくれる。

 周囲を見れば、他にも常連さんが、それなりに。


「メニューどうする?」


 桜ちゃんに聞かれてハッとした。店員目線になっている。


「どうしよっか?」


 私の問いかけに、


「私はビーフシチューが良いな。まだ少し、テストの緊張が抜けない」


 マリアちゃんが言う。


「あー分かるー……なら、私はラタトゥイユにしよっかな。好きだし」


 と、桜ちゃん。


「じゃあ私は……アッシ・ド・ブフ・マンティエにしようかな。涼はどうします?」

「1回しか来たこと無いからよく分からん」

「アデルさんに、説明聞きます?」

「あー、じゃあ、そうする」

「他はどうする? スイーツ系と飲み物。決めとく?」


 と、私が周りに言ったところで、アデルさんがお水を持ってきてくれた。

 私たちは一旦注文することにして、涼はアデルさんから説明を聞き、フリカッセにした。

 少々お待ち下さい、と、アデルさんが離れていく。……良いなぁ。私もあんな、余裕がある感じで行きたい。3年生になる頃には、少しは上達しているだろうか。


「で、飲み物とかだけど」


 おっといけない。また仕事目線になっていた。桜ちゃんの声で、目の前のことに頭を切り替える。


「私、ディアボロ・グルナディンが良いかな。デザートはお料理食べてから決める」


 と、桜ちゃん。


「私はカフェオレにしとこう。それと、リンゴのコンポートで」


 続いてマリアちゃん。


「私はディアボロ・シトロンが良いかな。……デザートは……私も食べてから考える。涼は?」

「あー……さっきの料理だと。……バドワにしとく。それと、クレームダンジュ、で」


 あとは、料理を待ちながらお喋りだ。桜ちゃんとマリアちゃんが──特に桜ちゃんが、涼のホームステイについて聞いてきた。


「で、どういう予定にするか決めたの? 二人は」

「……色々候補を絞ってるところ」

「候補って? スイーツのお店?」


 桜ちゃんの問いかけに、涼が頷く。

 桜ちゃんもマリアちゃんも、涼の家がカメリアなのを知っている。てか、4人で勉強しているうちに、その話になった。クラスでも、涼は製菓職人を目指しているとか、進路の話になると少し言うようになったし。馴染んでくれて、とても満足。


「住所がパリなのは有り難いが、一日中菓子巡りって訳にもいかねぇだろうし。予算は、まあそれなりに貰えたけど。俺、初対面の人たちの家に行く訳でもあるし。……てな、感じだ」


 涼は、ホームステイが決まったら、ラファエルさんにお礼を言いたい、と私に言ってきた。私はそれをラファエルさんたちに伝え、ラファエルさんたちは、OKを出してくれて。客じゃなくて頼む側だからと、涼はカメリアのお菓子を持って、裏口から中に入り、ラファエルさんとアデルさんと、それに私にもお礼を言った。まだ片言のフランス語で。ラファエルさんたちはそれを、受け止めてくれて。私は、涼はやっぱり律儀だなぁ、と、思ったりした。

 そんなことを思い出しながら話をしていると、アデルさんが料理を持ってきてくれた。私たちは飲み物とデザートの追加注文をして、


「いただきます」


 と、食べ始める。

 うむ。美味い。この味を、こうしてゆっくり食べるの、いつぶりだろう。


「美味しーねー。頑張ったあとのご褒美は最高だね!」

「ね」


 桜ちゃんの言葉に同意しながら、ご褒美、という単語で、体育祭の時のバナナカップケーキのことを思い出していた。当たり前だけど、あの時、もう好きだったんだろうな、涼のこと。


「……フリカッセ、美味いな……」


 涼がなんだがしみじみ言ってる。


「そういえば。初来店の時は、橋本は何を頼んだんだ?」


 マリアちゃんの言葉に。


「あー……ちょい待ち」


 涼は、メニュー表を開き、「……これと、これとこれと、これとこれ」と、示してメニュー表を閉じて戻した。


「初で結構食べたな。気に入ったのか、ここの味」

「……まあ、気に入った」


 歯切れが悪い。気持ちは分かる。半分くらいは、私のために来てくれてたんだろうし。

 そこに、アデルさんが、追加注文した飲み物とデザートを持ってきてくれた。……あー、ディアボロ・シトロン美味しー。

 そうして食べて、飲んで、お喋りして。全てが空になって、これからどうするか、という話に。


「まだ頼む? 私、お腹いっぱいになっちゃった」


 桜ちゃんが言う。


「私も緊張が解れてきたな。コンポートも美味かった」

「私も丁度いいかな」

「俺は、まあ……まあ、いいか。俺も」


 涼、食べ足りないらしい。


「……みつみん。橋本ちゃんの様子をご覧になって、どう思います?」

「え? あー……あ、みんなまだ、時間ある?」


 三人とも、大丈夫だと言うので。


「ならさ、カラオケ行かない?」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ