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学年一の不良が図書館で勉強してた。  作者: 山法師


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25/54

25 体育祭、始まる

 校長や理事長や招待された人たちの挨拶が終わり、いよいよ競技が始まる。

 ABC、3クラス対抗のこれは、各競技の勝敗で点数が入る加点式。けど、犯罪に近い行為が行われたら、そのクラスの競技には、点数は入らない。それと、ちゃんとあとで、指導される。

 そして、行われる競技数は多く、時間が被るものもそれなりにあるので、生徒も見学者もみんな、事前に見るものを決めていて、その通りに動くことが多い。全体のリレーは午前の最後で、玉入れは午後の真ん中辺りである。

 そして、私はそのまま、座っていた。

 ここで始まる50m走と100m走と、400m走を見るために。因みに、どれも、男女混合だ。


「わー速ー」


 小さく呟く。周りは応援をしていたり、スマホで動画を撮っていたり。

 と、スマホが震える。桜ちゃんからの電話だ。


『見てる? 50m』

「見てる。みんな速いよねー」


 一応、クラス対抗の体を取るために、見学席も3クラス分用意されていて、そこから動くのは、あまり得策ではない。

 けど、こういうのは、セーフと見なされる。


『マリアちゃん、もうちょいあとだよね』

「うん。その筈。それと、橋本も後半だって」

『そっかー。橋本ちゃんのも、見る?』

「ん、まあ、その予定。体育祭の存在を忘れていた人に、思い出せてしまった責任もあるし」

『忘れてたんだ……』

「そう言ってた。あ、マリアちゃん、準備に入ったね」

『だね』


 マリアちゃんが位置につく。合図で、走り出す。


「はっや」


 6名同時に走り、3位だった。赤、青、青、緑、赤、緑、だから、マリアちゃん、結構良い点数になるはず。


『み、緑が……』

「いや、その前の緑の人、1位だったじゃん」


 そんなふうにだべりながら、橋本の番を待っていたら、何か通知を受け取った。見れば、愛流からだった。


「ごめん、ちょっと切っていい? 愛流からなんか来た」

『おっけ』


 通話を切り、それを見る。


『その、橋本さん? だっけ。なんの競技に出るの?』

『色々出るよ。今やってる50m走にも出る』


 送ったら、愛流から電話が。


『いつ出る? どんな見た目? 足速いの?』


 いつになく食いついてくるな。妹よ。


「後半に出るよ。まだ先。足速いよ。で、見た目はね、えー、背の高さが180近い。今日は赤組の見た目で、ハチマキをネクタイにしてて、オレンジと赤の髪色。赤のカラコン着けてて、赤のネイルしてて、両腕に赤のタトゥーシールしてる」

『他には何に出るの?』

「このあとの100mと400m、あと、走り幅跳び。リレーが全員参加なのは、覚えてる?」

『オッケー分かった。リレーのは覚えてる。で、お姉ちゃんはそれ、見るの?』

「うん、その予定」


 そう言っている間に、橋本が立ち上がったのが見えた。


「今、橋本さん、立ち上がったよ。分かる?」

『背の高い人多くて分からん』

「えー、今動いてるんだけど。あと2組走ったら、来るね」


 言っていると、その1組目が走った。


「この人たちがおわ……たな。の、次の次」

『あ、あー……分かったかも。オレンジと赤。そっちから見て、手前から、2番目?』

「そうそう。その人」


 で、橋本の番が来た。


『わー……この人が』

「そう。橋本さん」


 位置に着き、合図で走り出す。ぶっちぎりの1位。


『はっや……』

「ね。6秒切ることあるらしいよ」

『6秒……切る……?』

「最高ね。いつもじゃないから」

『はあ……分かった……じゃ、一回切る……』

「ん、分かった」


 で、切れた。

 桜ちゃんに、愛流とのやり取り終わったよ、と送り、お茶を飲む。


「……あ」


 普通に飲んでしまった。リップが取れ……てない。


「……リップも、水に強いやつなのかな?」


 と、桜ちゃんから、連絡が。緑組でだべってていい? と。

 OKのスタンプを送り、終わりかけの50m走を眺める。


「橋本、めっちゃ速いね」

「ね。練習見てなかったけど、陸上に勧誘された噂、嘘じゃないのかも」


 うん。嘘じゃない。皆さん、橋本へもっと、興味を持って下さい。良い人なので。

 周りの会話に混ざりつつ、100m、400m、を眺めて。

 橋本は全て、ぶっちぎりの1位だった。


「赤、今のところ、1位だね」


 クラスメイトに言われ、掲げられている順位と点数表示の電子掲示板を見る。

 1位、赤。2位、緑。3位、青。だった。


「そうだね。このまま行くかな?」


 言いつつ、さて、そろそろ、女子バレーの席確保に行きますかと、カバンのベルトを肩に掛け直す。

 周りに一言断って、荷物を持って、第二体育館へ。今は男子バレーをやってるけど、……わあ、なかなかに、混んでいる。


「あ、空いてる」


 後ろの方だけど、空席が幾つかあったので、失礼しますと言いながら、その一つへ。

 桜ちゃんに着いたことを連絡しよ。と、スマホを取り出し。

 橋本からの通知に気付く。


『今どこ』

『第二体育館です。マリアちゃんの女子バレーを観るために』

『行く』


 少しして、追加が送られてきた。


『どこ座ってる』


 ……。赤の席、て意味じゃないな、うん。


『後ろから2番目、右から5番目です』

『近く、空いてるか』

『左隣は今、誰もいません』

『席の確保、頼む』


 了解、のスタンプ。

 ちょっと失礼して、左隣の空席へ、カバンを置く。何かあったら怖いので、ベルトは持ったままで。

 桜ちゃんへも、着いたよ、と送信。

 そんな作業をしていたら、試合が終わった。赤と緑で、赤の勝ち。こういうのは総当たり戦なので、男バレは、あと2戦だ。

 と、桜ちゃんから電話が。


「はーい」

『席が、全然……』

「こっちも混んでた。なんとか座れたけど。男バレ、人気だっけ?」

『……去年にさ、全国行って、ベスト4だったよね、確か。それかな』

「あーそういやそうだったね。それかも。バレー部が全員参加してるとは……参加してるのかな?」

『分かんない……あ、空いた! 座るね!』

「頑張れー」

『座れた!』

「良かった良かった」


 そんなやり取りをしていたら、「すいません、通ります」と、聞き覚えのある声が。

 振り向けば、タオルを持って、リュックを肩にかけた橋本が。

 私は、スマホを耳から少し離し、


「席、ここで良いですか?」


 と、カバンを持ち上げる。


「ん、助かる」


 橋本が頷いたので、カバンをどかし、膝の上に。橋本はリュックを肩から下ろしながら、私の隣に座る。


『みつみん、橋本ちゃんっぽい声聞こえたけど、いるの?』


 スマホからの声に、橋本がビクリとする。


「うん。今来たとこ。左隣にいるよ」

『ほーぉう。みつみん、橋本ちゃんが走ってるの、ずっと見てたよね!』

「え、うん」

『速かったよね』

「うん。ぶっちぎり1位だったし。周りも何人か、その話してたし」

『うん。じゃ、私、切るね』

「え、あ、うん」


 で、切れた。




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― 新着の感想 ―
[良い点] おー、橋本が隣にいると分かって橋本の話題出した桜ナイスアシストなのでは。まあ光海の反応が「急にどうしたの?」って感じなの光海らしいけども。
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