2人で踏み出して
「くぅっ……」
「さぁ、そろそろその傘と盾で防ぐのも限界だろう!」
強化されたオーガの猛攻はソフィアを次第に追い込んでいった。そして、ついにはシュヴァリエの盾を後ろに弾き飛ばした。
「ここまでだな、まずはガラ空きの左腕でも吹っ飛ばして……」
「ここがどこだかご存知ですか?」
「……お前たちの出撃地点の近くか、それがどうした」
「あなたは追い込んだのではなく、誘い込まれたのですわ!」
「何っ……つまらんハッタリだな、しかしまた変な小細工が発動しても面倒だ。一撃で終わらせる、≪魔力集中≫……」
オーガがマギアバーストを撃とうとした瞬間足元が光り、走った電撃がオーガの各部に流れる魔力を遮断させた。
「マギアバーストに反応して5秒間スタンさせるトラップかっ!しかしその程度!」
「終幕ですわ。先程から流れているでしょう? オープニング曲」
「はぁ!?」
シュヴァリエがすかさず横に飛び退くと、その影に隠れていた、オーガが弾き飛ばしたシュヴァリエの盾が少し遠くの地面に突き刺さっていた。そして、その盾に巨大な砲塔を乗せたソルジャーの姿が見えた。
「お前はっ……何故そんな武器を持ち込んでいる!? 何故その武器を持ち運べているっ!?」
「新たな冒険の始まりに祝砲を、ヒバナッ!!」
「全部乗っけて! ≪魔力終局≫! セレモニアル・スパァァァク!!! 」
「バカなぁぁぁ!?」
電光を帯びた光弾は、空間を切り裂くような速度でオーガへと一直線に進み、そのまま着弾したオーガを連れ斜め上空へと昇っていった。
「打ち上がれぇぇ!!」
ヒバナの叫びに呼応するように光弾は炸裂し、大きな爆発音と共にオーガは空中で爆散した。
ーー オーガ GARDEN LOST ーー
ーー WINNER ヒバナ & ソフィア ーー
「勝っ……たぁぁ!! 私たちって……最強!」
「ですわー!」
「「いぇーい!!」」
激闘の末、見事勝利したヒバナとソフィアは手を合わせ飛び跳ねながら喜んだ。
「ソフィアすごいカッコよかった! フィナーレですわ……ってとこ!」
「あれは上手くいったからテンションが上がって、からかわないでください、もう!」
「……一つだけ聞かせろ、何故お前はあそこでビクトリー・セレモニーを撃てた……?」
「えーっと、まず超強い武器!と思って装備してたんだけど、知っての通り重量制限で出撃地点に置いていく事になって。そのあと頭とか腕とかやられた時に気づいたんだよ、総重量が減ってる事に。それからソフィアに上手くやってもらって、片腕で不安定だったけど何か地面に盾が刺さってて……」
「基本パーツを落として重量を……? それ以前に偶然が重なり過ぎている。 いや……全て含めて完敗だ。 あんたも悪かったな、無理に引き入れようとして」
「いえ、分かってくだされば結構ですわ」
「それじゃ、邪魔者はとっとと消えるとするか。折角のお祝いムードが台無しだ」
「次も私が勝ちますよ!リードさん!」
「……次は負けん」
そう言い残し、リード達は冒険者ギルドから出ていった。彼らに注意するのが目的だった2人はそれを静かに見送るのであった。
「社長ー?あの人たち捕まえなくていいのー?」
「彼らはもう大丈夫でしょう。誰しもが、最初は子供のような純粋な好奇心を持ってこの世界に降り立った。私も、いつまでもそうありたいものです」
「そういえば新人の子が使ってた≪インビジブル・ドレス≫、社長があげたでしょー?」
「さて、何の事でしょうか」
「最近噂になってるよー、怪しいパーツ配りおじさん」
「おじっ……!? っ艦隊戦には人数が必要ですので、一人でも多く楽しく続けていただける方が増えればと……少し控えるとしましょうか……」
「じゃあ気を取り直して、ユニークレアのエクスマギア探しに戻ろー!」
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「疲れたー、楽しかった! でもやっぱり疲れた……」
「あらあらあらあら、それではこの先の目を見張る大冒険に着いて来れませんわよ!」
「随分と嬉しそうだね……」
「ええ、わたくしこの世界で守るべき≪愛≫手を見つけまして、この気持ち、まさしく……」
「ねぇソフィア、腕掴むのやめてくれると結構嬉しいんだけど。歩きづらいし……」
「ソフィでいいですわ。ああ、わたくしたちの伝説はこうして始まるのですね……!」
「あはは……これからもよろしくね、ソフィ」
こうしてヒバナは、ソフィアと共に次の冒険へと歩みを進めるのであった___