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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

箱庭

作者: BOX0987

レナは暇を持て余していた。


やることもなく、友達も捕まらなかった。

それで、用事もなく街をぶらぶらしている。


せっかくの休日を何もせず終えるのは嫌だったが、

特にやりたいことも思いつかない。



しばらく経って、空腹を覚えたレナは

雰囲気の良さそうな建物を発見した。


「いらっしゃいませ」


ドアを少し開けると、中から声がした。

レナが中に入ると、1人の女性が出迎えてくれた。


「1名様でしょうか?」


「はい、そうです」


やりとりの後、レナは個室に通された。

店内は広く、ここ以外にもいくつか個室があった。


もしかしたらすごい高級店かもしれない…


レナは財布が心配になり、中身を確認する。

その時、扉が叩かれた。


はい、と答え店員を中に入れる。

店員は一礼して個室に入ってきた。

美しい金髪の女性だった。


「ご来店ありがとうございます。」

「当店のご利用は初めてでしょうか?」


「はい、ここ、もしかして高級レストランとかだったりします…?」


レナは恐る恐る尋ねた。


「いえ、当店はいわゆるコンカフェでございます」

「初めてとのことですので、当店のシステムをご説明しますね」


店員は微笑んだ。


・コンカフェ『フォレスト』

ここは「寿命の差を楽しむ」というコンセプトらしい。

要するに、ファンタジー映画で「エルフ」と「人間」が交流するイメージだ。

寿命の「スケール」が全く異なる者同士が一緒に過ごすことで得られる非日常の体験を売りにしているのだそう。


ちなみに、役割分担は決まっているらしい。

 店員:人間

 客:エルフ



・コースは次の2種類。

12時間コース

6時間コース

内容自体は変わらないため、

12時間コースはより詳細に「2人の人生」を楽しみたい人向けのコースだそうだ。



・コース開始前に、店員は老化をシミュレーションする特殊メイクを施す。

この特殊メイクは時間が経過するにつれて40歳、60歳、最終的には85歳の外見となるよう設計されている。


説明を聞いたレナは、ニッチすぎる設定に驚きつつ、楽しみに感じていた。


「以上が、当店のシステムとなります」

「コースはどちらにいたしますか?」


「それじゃ、6時間でお願いします」


「承知いたしました。準備いたしますので、少々お待ちください」


しばらく個室内のチラシを見て過ごしていると、扉を叩く音が聞こえた。


「失礼します」

先程の店員が入ってきた。


「本日担当させて頂きます。ラナです」

「改めて、よろしくお願いいたします」


「あ、はい、レナです…」

「よろしくお願いします…」


どこか緊張しているレナ。

しかし、名前が似ていると言う話題から、徐々に仲良くなっていくのだった。


ロールプレイを始めた2人はボードゲームや軽食を共にし、順調に中を深めていく。楽しい時間はすぐに過ぎて行き、気づくと2時間が経過していた。

時間が過ぎるにつれ、ラナの顔には少しずつシワが増えている。

確かにこれはすごいメイクだ。


「レナと出会ってから、もう20年も経ったみたい。」

「レナは昔のまま、変わらないね」

「私はもうおばさんになっちゃった…」


「そんなことないよ」

「ラナだって、ずっと綺麗なままなんだから」


そう言うと、ラナは恥ずかしげに笑った。



さらに2時間が経過した。

ラナは座っている時間が増えた。

美しかった金髪は銀に近い輝きに変化している。


「ねえ」


「どうしたの、ラナ」


「私がまだ若かった時のこと、覚えてる?」


「もちろん覚えてるよ」


レナはラナの隣に座り、手を握りながら答えた。

「良かった…私はすぐに老いてしまうから」

「レナの中では、若くて綺麗なラナでいたかったの」


レナは何も言わず、ラナの手を握りしめていた。



1.5時間後。残り30分の頃になると、ラナはすっかりおばあちゃんになってしまった。

美しい金髪は絹のように白くなり、顔には深いシワができていた。


「ねえラナ」


「なあに、レナ」


レナは少し恥ずかしそうに今までのことを振り返る。

老いてしまったラナは恥ずかしがっていたが、

レナはそんなこと気にならなかった。


「今まで、楽しかったよ」


「私も…」



ラナが目を閉じたのと同時に、終了の鐘が鳴った。



「お疲れ様でした」


ラナは老婆の姿のまま、レナに語りかけた。


「楽しんでいただけたでしょうか?」


レナは興奮気味に答える。


「すっごく楽しかったです!」

「ほんと6時間の出来事とは思えないです」


60年分ですからね、そう言ってラナは笑った。



会話しながら帰宅の準備をし、会計を済ませた。

ラナに別れを告げて店を出る。


今日が暇な日で良かった。

絶対また来よう。


レナは家路についた。

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