エピローグ
「やあ、リディア」
リディアはヴィルヘイムに呼ばれ、登城した。従者に案内され中庭に着くとそこには既に彼が待っていた。いつもの意地悪そうな笑みを浮かべて……。
「今日は式の日取りが決まったから、真っ先に君に知らせたくてね」
「そうですか」
「相変わらず冷たいな。僕達の式だよ。もっと嬉しそうにして欲しいなぁ」
アロイスと婚約破棄してから、リディアは程なくしてヴィルヘイムと婚約をした。彼の強い希望だったらしいが……リディアには彼の意図する事が分からずにいた。
「……ヴィルヘイム様は、何故私を婚約者になさったんですか?同情や哀れみですか?」
あんな形で婚約破棄になったのだ。次婚約するのは難しいだろう。最悪修道院に入る事も覚悟した。だが彼は、迷う事なくリディアを選んでくれた。
「違うよ。リディア、君が好きだからに決まってるじゃないか」
ヴィルヘイムはそう言うと席を立ち、リディアの横に跪いた。
「ヴィルヘイム様⁉︎」
手を取られ口付けをされる。戸惑いながらも、恥ずかしさにリディアは頬を染めた。
「ずっと、君が欲しかった」
「ずっと……?」
「そう、ずっとね。ようやく僕のモノになった。リディア、これからは君は僕だけのモノだよ。浮気なんてしちゃダメだからね?無論僕も君だけだよ。アロイスとは違って僕は一途だし、君を不安になんてさせないからね。……でももし、万が一君が他の男に気のある素振りなんて見せたら……」
リディアは息を呑む。彼の笑みが少し怖く感じた。
「その男を、殺しちゃうかも」
「っ……」
不意に抱き寄せられた。
「でも、安心して?僕は君を何があっても離さないから……。僕達の仲を邪魔するものは、また排除するだけだからね」
「ヴィルヘイム、様……?」
「愛してるよ、僕のリディア。2人で、幸せになろうね」
リディアとヴィルヘイムの婚儀の日、アロイスの訃報が届いた。死因は不明。突然死だったそうだ……。
「彼は、ずっと僕のリディアを独占していたからね……それ相応の報いを受けないと」
そう言って、彼が笑った。
終




