いざ、謁見へ
「頭を上げてください、二人とも。そもそもティアは俺をスライムの中から救い出してくれた恩人です。この提案を受けずして、どうやってこの恩に報いればいいのでしょうか。さらに、衣食住を保証していただける。こんな理想的な環境はメルクロワ家以外にはあり得ません。
正直言うと、こちらからお願いしようかな、とさえ思っていましたよ。」
そういうと、二人の顔がぱあっと輝いた。「本当か!よかった・・・。本当に良かった・・・。」
「良かったですね!お父様。」
「では、早速養子の契約を行いたいのだが、いいかな?タクミ。」
「ええ、もちろん」
「我、縁の神カルデアの名のもとに誓う。我、父となりてタクミ・シラセを生涯守り続けることを」
そうヴェリテさんが唱えると、手の甲から金色の糸が螺旋状に伸びていった。そしてそれはティア、父さんの糸と絡まり、俺たち三人の体を引き寄せた。三人の手が互いに触れ合った時、その光は消え、後には満足感のみが残った。
「さて、もういい時間だし。今日のところはこれでお開きにしよう。私は明日、王宮に赴いて陛下にこのことを報告しに行く。タクミ、お前にもついてきてほしい。」
「全然いいよ」
「!そうか。ちょっと陛下は変わったお方で、いろいろ大変かもしれないが・・・まあ、頑張れよ。おやすみ、皆」
「おやすみなさい、お父様。おやすみなさい。そして、、、お兄ちゃん?」
グハッ。か、かわいい。
「お、おう。おやすみティア。お休み、父さん」
そう言って俺らは自室に戻っていった。
次の日の朝、軽く朝食を取った俺たちは、礼服に着替えてから馬車で王宮に向かった。転移があるのに、なぜ馬車を使うのか聞くと、王宮では古代の魔術師によって描かれた転移防止の魔法陣が作動しているんだとさ。
おー、ってことは・・・ワンチャン俺それ突破できるんじゃね?
「父さん。俺もしかしたらその術突破できるかもだからさ、先行っててよ。守り人倒す力量があるって証明にもなるし。
だから、王の間に入ったらこのボタン押して。俺その真横に転移して見せるから。いいよね?父さん。」
「・・・ほんとにそれができるのか?と疑いたくはなるが、お前のことだから何とかなるんだろう。フッ。わかった。勝手にしろ。」
そういって父さんは俺の召喚魔法、「出現<アドベント>(advent)」で地球から取り寄せた小型GPSを受け取った。これくらいの技術なら神様も許容してくれるでしょ。
「じゃあ、また後で。」
「ああ、しくじんなよ」
まるで悪党の会話である。
そうして、俺と父さんは王門の手前で別れた。
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