ご対面
「ちょっ、待って。これは、死ぬ。休ませて。おい、くそじじい。きいてん、のか、この、やろう。」
次のは、俺は庭の一角でくたばっていた。
そこへ例の爺さんが近づいてくる。
「これくらいの軽い訓練でへばってたらここではすぐ死にますよ。旦那様も、厳しめに、とおっしゃっていることですし。。」
いや、まあ、確かに大樹の守り人?を倒したんだから期待するのもわかるけどさ。
そうはいっても、この訓練は異常だ。なにせ強化されたはずの俺の体が再起不能にまで痛めつけられているからだ。
細いのに、50キロはあるであろう棒を素振り1000回。間発入れず、耐G訓練と空間把握。つまり紐に括り付けられてぶん回されること三時間。反吐を吐き、右も左もわからないまま爺さんと対人訓練。
この爺さん、人にやさしくってのを小学校道徳で習わなかったのか。なんだか昭和の部活動に入った気分だ。しかも爺さん、俺と戦っても汗一つかいていない。そもそも攻撃が一本も通らなかったのだ。こいつはマジもんの化け物であると再認識させられた。そんな彼がどうして執事長をやっているのか気になったが、深入りするなと俺の経験がいっているため、控えよう。
幸い、水はしっかり取らせてくれた。回復魔法のようなものがかけられているらしく、体の不調はかなりましになった。
途中、なんかティアと一緒に、威厳のある当主っぽい人が見学に来ていたのは気配で分かったが、挨拶どころじゃなかったんだ。ゆるしてほしい。
「んー、わたしも鬼ではありませんし、今日はこの辺にしておきましょうか。
夕食の準備が出来ておりますので、食堂に移動をお願いいたします。当主様もお待ちですよ」
そういってジクレは転移していってしまった。
おれも何気なくそうしようと思ったが、
「あ、俺できないんだった」
そう、おれはただ「転移」というだけでは魔法が発動しないのである。
「仕方がない、作ろう。」
俺はそう言って単語帳を取り出した。
取り出したといっても、念じれば手元に現れる便利な仕様である。
「転移<トランスポート>(transport)」
屋敷に付くとすぐ、俺はメイドさんたちの手によってあれよあれよとタキシードに着替えさせられた。そして
例のサラさん、というメイド長に連れられて立派な扉に案内された。
「この先に皆様方がお待ちです。当主様もいらっしゃるので、失礼のないようにお願いいたします。」
俺は軽く息を整え、扉を開いた。
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