国王襲来
山で暮らすクリスたちはの生活スタイルは“自給自足”である。
調味料や布類や金属などの調達が難しいものを除いて、生活に必要なものは可能な限り自家生産するようにしている。
自給自足生活において主にやらなければいけないことは、安定した食料の確保のための農作業だ。家の周りに作った畑を耕して、種をまいて、水をやる。作物が病気にならないように世話をしつつ、ちょくちょくやってくる獣を追い払うことで、未来のご飯たちを健やかに育てていく。
それはとても大変で面倒臭いことである。クリスも時々おっくうになって、作業をサボって一日中寝転がりたくなることがある。
だが絶対にそうしない。サボってしまえば自分自身の首を絞めることになる。たとえ面倒臭いと思うことがあっても、日々の糧を得るために働き続けなければならない。
そんな面倒は覚悟のうえで、クリスは今の生活を選んだ。だからこそ彼は、今日も愚痴をひとつもこぼさずに、土にまみれて汗水を流すのだ。
クリスは根菜を一本一本丁寧に引き抜いていく。三食分くらいの量を確保したら、カゴにまとめて放り入れる。
ほかの作物も収穫済みで、すでにイモや菜っ葉などの新鮮な野菜たちもカゴに収まっている。どれも新鮮取れたてのみずみずしいものばかりである。
クリスは収穫の手を止めると、カゴを持って畑の側に建つ小屋へと向かう。
見た目は単なる掘っ立て小屋のそれは、ただの小屋ではない。アデアナと協力して作った、魔法の冷蔵倉庫だ。
一定の温度を保ち続ける機能によって、生鮮食品もそれなりに日持ちさせることができる優れものなので、山暮らしには重宝している。
作物をすべて倉庫の野菜棚に置いたら、チーズスティックが入った瓶を取り出す。クリス家定番の自作おやつである。仕事終わりにはこれをつまむに限るのだ。
それから水汲み場で手を洗い、額に浮かぶ汗を拭きとったら、クリスはおやつを手に家へと戻った。
「終わったぞー」
「お疲れー」
クリスが家に入ると同時にアデアナの私室の扉が開いて、そこから竜モードのアデアナが白い顔を出してくる。
彼女はくんくんと鼻を鳴らすと、クリスが持ってきたチーズの存在に気付いた。
「あ、それ持ってきたの?」
「ああ。食うよな?」
「もちろん!」
アデアナは真っ赤な眼を嬉しそうに輝かせると、すぐ部屋に引っ込む。
それから少しすると、いつもの人間の姿になって出てきた。その手にあるのは作りかけの服と裁縫用具である。
それを見たクリスは、やや心配そうに眉間にしわを寄せる。
「これを食いたいんなら自分の部屋に持っていったらいいだろ。なんでわざわざ化けるんだ? その姿を続けるのは大変だって、おまえ言ってただろうが」
「あのねえ、何度も言わせないでよ。私がこうしたいの。ちゃんと自己管理したうえでこうしてるんだから、いちいち文句言わないでよ」
刺々しく返すアデアナは、クリスには目もくれずにそう言い切って、さっさと席に着いた。
クリスはこの家を建てる前に、竜もいっしょに過ごしていけるバリアフリー住宅にする計画を立てていた。だが、当の竜がクリスの過ごしやすさを優先させたために、この家は普通の人間向け住宅となったのだった。竜用の私室を除いてだが。
アデアナはいつだってクリスのことを優先する。その頑なですらある姿勢は、しばしばクリスの心配を誘っている。
「だから寝起き悪くなるんだろうが。ったく、変なところで意地を張りやがる」
「クリスがそれ言う?」
クリスはやれやれと首を振ると、次いで彼女の正面の席に着いた。ちなみに両者とも定位置だ。
クリスはテーブルの上に置いてあった本を左手で開いて、右手でチーズ入り瓶をテーブルに置く。アデアナはチクチクと手芸に勤しみ始める。
それから二人は思い思いのタイミングでチーズをつまみ取っては、ぽりぽりとかじっていく。
その間は無言。静寂に満ちる室内に響くのは、クリスが本をめくる音だけだ。それぞれの趣味に没頭する二人の間に会話が起こることはない。
一仕事終えたあとの彼らはいつもこんな感じである。日が落ちるときまで、各々が好きなことをやりながらまったりと過ごすのが彼ら流だ。
だが、そんなくつろぎの空間に押し入ろうとする者がいる。二人の縄張りへの侵入者にいち早く気づいた魔法人形のピーちゃんが、慎ましい地鳴きでそれを伝える。
クリスは窓の外を一瞥するとため息をついた。
「また来たのか」
「どうする?」
「無視だ無視」
その短いやり取りだけで、二人の考えは通じあう。居留守を使うことにしたのだ。
玄関扉に鍵はかかってないが、侵入者防止用の魔法がかかっているため、並みの力では開けることができないようになっている。
壁も窓も同様に強化処理が施されているので、よほどのことがない限りは、招かれざる客が家に侵入してくることはない。
外にいるやつがどれだけ騒ごうが、家に入ってくることはできないだろうから、諦めて帰るまで放置してやれば良いだろう。
そんなわけで、二人は来訪者のことはなかったことにして、趣味の世界に帰る。
ことはできなかった。
玄関扉のノブが捻られると、重々しい軋み音をたてながら、ドアがゆっくりと開いていく。
入り口の守りが突破されたことに気づいたクリスは、呼気を整えながら本をゆっくりと置いて扉の方に注視する。一方のアデアナは開くドアをチラ見しただけで作業は止めない。
果たして扉は完全に開け放たれて、一人の男が許可もなく敷居をまたいできた。
白銀の美麗な鎧を身にまとう白髪の老人が、射抜くような視線をクリスに向けながら、威圧感のある重々しい足取りで歩を進める。
老齢ながらも、その体つきは衰えを感じさせず、その足運びには一切の隙が見当たらない。腰に差している古びた剣は、幾千幾万の敵を葬ってきたことだろう。目に見えてくるほどの強者のオーラを全身から立ちのぼらせる、古より伝わる勇士の姿がそこにあった。
クリスはその姿を見て、彼が何者なのかを一瞬で看破する。
彼は一国の王、武神の国と呼ばれるレムス王国の王。十数年前に起きた世界大戦で、王様なのに常に最前線で駆け抜けてきた困った英傑である。
クリスはなにも言わずに立ち上がると、王の視線を受け止めて、鋭い目付きでにらみ返す。
英雄睨みつけを食らったにもかかわらず、王はひるんだ様子を見せずに歩みを緩めない。相当な力の持ち主でなければこうはいくまい。
二人の視線がぶつかり合って、辺りは緊迫した空気に包まれる。もし常人がこの場に居合わせれば、失禁失神したのちに心停止すること請け合いだ。アデアナは平然と内職を続けているが。
王は目をそらすことなくクリスの目の前まで到達する。そして、厳めしいひげ面をクリスの至近距離に突き合わせると、貫禄に溢れる低い声で告げた。
「出ろ。余とともに行くぞ」
「嫌だね」
クリスは憮然とした顔で王の言葉を突っぱねた。
「十年前にあんたは、俺が引退することを認めて、今後は関わることはしないと宣言してくれただろう。今になっていきなり誓いを破るとは、どういう了見だ? 国王陛下よ」
一国の王を前にしても、クリスは臆することはない。そして、王も引き下がることはない。
「状況が変わった。話は聞いているだろう? 魔王が逝った。我らは盟約にもとづき、勇者を送り出さなければならん。その役に適う者は、貴様以外におらんのだ」
「俺である必要性を感じないな。俺以外にも強い戦士はいる。代役はいくらでも立てられるだろうに」
「必要なのは“最強の”勇者なのだ。貴様が動かなければ盟約を果たせず、人間と魔族の間で築かれてきた永年の平和が失われてしまうかもしれん。
十年前、貴様が死に物狂いで勝ちとったこの平和、貴様自ら壊す気か?」
かつて、人間と魔族は憎みあっていた。最強の人間である“勇者”と、最強の魔族である“魔王”を中心として、両種族が殺し合い続けるという不毛な闘争を続けていた。
だが、永い時はいつしか憎悪を溶かして相互理解を生み、現代では相利共生の関係を築くまでに至った。
魔王の座継承の儀式の内容が、『勇者と魔王が剣を交えた末にその力を認め合う』というものであるところに、古の時代の名残が見られる。
人間と魔族の間で結ばれた盟約を守れないようなことが起きたら、確かに問題が出てくるかもしれない。先人が築きあげてきた磐石の平和にヒビをいれるようないさかいが起きるかもしれない。
だが、クリスには知ったことではない。
「盟約を果たせない? 平和が壊れる? そうなったとしても、俺に依存しないとなにもできないあんたの責任だな」
「ならば余は国王としての責任を果たそう。力づくでも貴様を連れ帰るまでよ。心配するな、クリスよ。働くのは今この時だけで良い。ことが終われば再び関りを断とう。無論、土産を持たせてな」
強引な言葉にクリスは形の良い眉を寄せて、王を睨みつける目力を強める。
「俺はもうあんたのために働かない。俺は俺自身のためだけに働く。国のために身を削らされるのは二度とごめんだ。誰かに踊らされるのはまっぴらなんだよ」
会話が途切れると二人は黙り、殺気すらこもった視線で火花を散らす。
場の雰囲気は異様に重苦しく、彼らを包む空気が怯えて震えているかのように揺らめき続ける。
そんな語り合いをしばし続けたあと、ふと王は入り口扉のほうを親指で指した。
「表へ出ろ。十年ぶりに語り合おうではないか」
王は腰の剣を見せつけながらそう言うと、表に出ていった。もはや剣で語るのみと、彼の背中は語っていた。王とは思えない脳筋ぶりである。
クリスはその姿を見送ったあと、窓際に括り付けてあった物干し竿を外して手に取る。いや、それは物干し竿などではなく、鞘に収まった剣だ。
彼が引退してから約十年、彼の愛剣は物干し竿としての仕事に甘んじてきた。だが今、剣は再び戦場へと舞い戻る。もし心持つ剣だったら、感動でむせび泣いているだろう。
久しぶりに剣を腰に携えたクリスは、アデアナにお出かけの目配せをしてから、国王の後を追って表に出た。
彼らが向かった先は、剣を交えるのに適する開けた場所、最近開墾中の広場である。ここならば、思い切り剣を振り回すことができるだろう。
二人は位置につくと、もう一度至近距離でガンをつけあったあと、背進で十歩ほどの距離をとってから剣を抜き放つ。
王の得物は、レムス王家が古来より受け継いできた、王族の象徴である伝説の剣。
クリスの得物は、戦いの中で鍛えあげてきた、これから伝説となる無銘の剣。
王は剣を斜めに構える。クリスは剣を正眼に構える。
戦いが始まった。
二人は油断ない目つきで相手を見据えながら、じりじりとした足さばきで間合いを測る。
交わす言葉は無い。深沈としたにらみ合いが二分、三分と続く。
それは端から見ると、二人は剣を構えたまま立っているだけのようにに見える。だが実際には、見えざる刃による応酬が繰り広げられているのだ。
それは二人の体力と気力をじわじわと削っていった。
「……貴様、鍛錬を怠っていたようだな」
クリスの力を分析していたらしい王が厳かに言う。クリスは戦いを離れで十年近く経つのだ、多少鈍っていると思うのは当然だろう。
「あんたはだいぶ老いたようだな」
だが、同様に分析をしていたらしいクリスも軽口で応じる。
いかに優れた戦士でも老いには勝てない。彼は王の衰えを感じ取ったようだった。
「ふん、条件は五分か」
それを指摘されても、王はにこりともせずに視線の斬り結びを続けるだけだ。
さらに静かな相対が続く。
あるとき、一陣の風が二者の間を吹き抜けると、ついに二人は動き出した。
先に動いたのはクリスだ。地を踏みえぐる勢いで駆け出して、力強い袈裟斬りを繰り出す。
剣同士が食らいつきあって激しい金音をたてる。王は斬撃を受け流そうとするが、だめ。威力を殺しきれなかったか余分な後退を余儀なくされて、反撃を封じられてしまう。次の一太刀もさばききれずに間合いを狂わされてしまうため、防御に専念せざるを得ない。
クリスは容赦ない攻めを展開しつつも愚直な剣技に逃げず、フェイントなども駆使して王に揺さぶりをかける。技術勝負での逆転は許さない。
力はクリスが明らかに勝っていた。
ひとつ、ふたつと打ち合うたびに、王は一歩ずつ退かされていく。やがて森の中にまで押し込まれようかといったとき、王は切り返すべく初めて前に踏み出した。
が、そこで鞘。クリスは剣の鞘を素早く振るって王の足を打つ。それはダメージにならないが、王の体制を崩して隙を作るには充分すぎる威力である。
クリスはその隙を逃さずに剣を振るい、王の首筋に刃がひたりと触れるところで止めた。
決着がついた。クリスの圧勝だ。
二人は向き合ったまま離れると剣を鞘に収めて、戦闘態勢を解いた。
「貴様、聖剣技を使わなかったな。この余に手心を加えるか」
王は不快感をあらわにして握りこぶしを震わせる。
クリスは本気を出していなかった。剣の力を圧倒的に高める聖剣技も攻撃用の魔法も無しに、純粋な力と技だけで圧倒されたのだ。王が悔しがるのは無理もない。
「それだけあんたが老いたということさ」
「フン、やはり貴様には敵わんか……」
しかし実力では勝てないことは元々わかっていたのだろう。王は特に引きずることなく負けを認めるのであった。
と、そこでアデアナが戦いを終えた二人のもとに駆け寄ってくる。
「やっと終わったね。あのーそろそろお昼ですし、よければうちのご飯を食べていきませんか?」
そして、とっても気楽な調子で王を食事に誘った。
今日の料理当番は彼女だ。ちょっとわくわくしている様子から察するに、自分の料理を食べてみてほしいのだろう。一国の王を食事に誘うとは、大層な自信家であるといえる。
「ふむ、英雄の食卓か……ではいただこうか」
王は相変わらずのしかめっ面でありながらも、二つ返事で誘いを受け入れる。彼もクリスがどんなものを食べているのか、興味があったのかもしれない。
アデアナはさっそく料理を始めるということで、クリスと王は二人で家に戻り、椅子に座って料理の完成まで待つことにした。
クリスはテーブルの上に置きっぱなしだった本の続きを読み始める。王は目を閉じて腕組みしながら静かにたたずむ。
食材を持ってきたアデアナが調理台まで走る。アデアナがナイフを使って食材を切り刻む。アデアナが鍋を火にかける。アデアナが鍋に具材を投入して手際よく炒める。アデアナが……。
会話がない。誰も口を開くことがない。男二人はろくに動きもしない。
狭い部屋に三人もいるのに、いつまで経っても誰もしゃべらないという奇妙な状況が続く。それに違和感を抱くものは誰一人としていなかった。
その沈黙は、アデアナが手料理をテーブルに運んできたことでようやく打ち破られる。
「できたよー。はいどうぞ!」
チーズが乗った白パンに三種類の菜っ葉の炒め物、鶏肉たっぷりの根菜スープが二人の前に並べられた。
「だいぶいいやつを持ち出してきたな、おまえ」
「王様の感想を聞けるんだもんね。ちょっと本気を出してみたよ」
アデアナが作った料理はなかなか贅沢なものだ。貴重な食材を一気に使われてしまって、クリスはちょっぴり物申したそうな顔をするが、文句を言うようなことはしなかった。
自分たちが苦労して育ててきた食材たちが、かつては人間基準で悲惨な腕前だったアデアナの料理が、舌が肥えているであろう王様に通用するかについて、少なからず興味があったのだ。
王は銀色のスプーンを手に取ると、二人に見守られるなか、野菜スープをすくって口に運ぶ。
ひとつ……ふたつ……みっつ……。しわだらけの頬がリズム良く動き、味を確かめるようにじっくりと時間をかけて咀嚼する。最初の一口めを飲み込むまでにかかった時間、ゆうに三十秒。
次に王はスープをすくい、音を立てずにすすっていく。すべての汁が口の中に注がれていっても、王は動かない。汁を舌で転がして味を見ているのだ。
アデアナは緊張した様子で息を飲む。王は彼女に構わず、次は野菜炒めに手を付ける。
音もなくスプーンを置いたあとにフォークを手に取って、野菜炒めの十分の一を突き刺す。その汁がこぼれないように口に運んでいき、そして食む。
しゃり、しゃりという鮮烈な音が幾度も響く。その音は次第に萎びてゆき、なにも聞こえなくなったところで、王の喉頭が上下した。
「粗野な味よ……」
王はフォークを手元に置くと、無表情につぶやく。
「痩せた素材を濃い味付けでごまかしているのが丸わかりだな。まさに料理を知らぬ素人が好みそうな料理といえる」
王は仏頂面でまったく容赦のない酷評を淡々と下す。
アデアナがその感想を聞いた瞬間、ちょびっと変身が解けかけて牙やらなにやらが出てきたが、クリスは視線で暴発を制止する。
「だが、なかなかどうして悪くない……」
王は目前の料理を眺め直したあと、ここに来て初めて微笑を浮かべた。
「食べる者のことを真摯に考えた、優しく暖かい味だ。我が宮廷の料理人たちでも、この暖かみを再現することはできまい。これが十年間の隠居生活で見出した味なのだな……」
「めずらしくべた褒めしてくれるじゃないか、国王陛下よ」
「今のでべた褒めだったのー!?」
実はこれで手放しの大絶賛なのである。かなりわかりづらい判定にアデアナだけが思いっきり驚愕していた。
それきり口を閉ざした王は、黙々と食事を口に運び始めたので、クリスたちも席について昼食をとることにする。
三人でテーブルを囲んで、よく噛んで食べること二十分。並べられた料理たちは、スープの一滴も残ることなく三人の胃の中に消えた。
満足そうにしている王は、手拭で口元をふいたあと、柔らかな微笑をアデアナに向ける。
「堪能させてもらったぞ、竜の姫君よ」
「ど、どういたしまして」
アデアナはちょっぴり引き気味に笑う。王という人物が良くつかめないという感だ。
「さて、そろそろ行くか。外に兵たちを待たせていたのでな、すぐに戻らなければならぬ」
王はすっくと立ち上がると、迷いない足取りで出口扉へと向かう。それからドアノブに手をかけて、きしみ音を立てながらゆっくりと開けていく。
「クリスよ、今日はおとなしく引き下がろう」
彼は半歩だけ外に踏み出したところで、肩越しに振り返る。逆光になっているので、その表情はクリスたちからは見てとれない。
「だが忘れるな。勇者としての貴様の力を求める者は、ほかにもいるということをな」
戒めるようにそれだけを言うと、王はさっそうと去っていき、手放された扉は勝手に閉じられた。
「あの人が勇者やればいいのに」
「俺もそう思う」
残された二人は、閉じた扉を見ながらのんびりとつぶやいた。
村は今日も平和である