鑑定師2
「邪魔するぞ」
そう言いながら宿主が店のドアを開けた。
錆びついたドア不快な音とともに開いた。
中は少し薄暗く、奥のほうはほぼ暗闇だ。
宿主がそのまま歩みを進めるが皆は入り口付近で歩みを弱めながら進む。
白鷹という宿主の二つ名スキルの一部である遠視———数キロ先まで見通せるその影響で多少の暗さはどうということはないとのことだ。
だからといって皆を置いて奥まで行くという理由にはならなない。
「おや、鷹かい?
久しいねぇ、今日は仲間も一緒かぃ?」
奥まで行くと薄暗い部屋のさらに奥の暗闇から急に声がした。
「あぁ、全員分の鑑定紙を頼む」
暗闇の奥には年季の入ったカウンターテーブがあった。
その奥に椅子に座った盲目の老婆がいた。
老婆はエルフ族の作ったと思しき刺繍が入ったフード付きのローブを着ていて、両目は真一文字の切り傷が老婆の光を奪ったと一目でわかる。
我らの後方から光が見えた。
ロイが指先から火を灯して松明がわりにして、残りの者たちを率いてきた。
「この、ばぁさんが鑑定師?」
「ガル、ばぁさんなどと非礼じゃ、ぞ?
この方はその昔シフト卿の師でもあり、ザイル聖卿の戦友でもあった方じゃそ?」
「そうですよ、ガル」
と、ロイ。
ガルの相貌が開かれ、一礼すると老婆は低い声で笑い、よいと一言声をかけた。
「鷹よ、此奴が新しい仲間かい?
珍しい者を連れておるなぁ」
「ガル=イブ=ファーストと申します」
「……。
へぇ、そうかい。
原初?いや、まさかね」
「は?原初ですか?」
ガルが聞き返すも老婆からの返答は帰ってこなかった。
「て、まずは誰からやるんだぃ?」
「俺から頼む」
「鷹かぃ…少し待ちな」
そう言って老婆はカウンターの下から数枚の紙を取り出した。
そして、一枚の紙に手をかざしもう片方の手を宿主に向けた。
少しの間を置いて、かざしていた紙が数瞬発光する。
発光が止むと無造作に宿主に紙を渡す。
「あとは横に一列に並びな。
すぐ終わらせるから、さ」
その言葉通りに他の者達は黙って従い、宿主はカウンターの傍に避けた。
先程と一緒の動作。
少し時間を置いて今度はすべての紙が発光して、瞬きの間に消える。
「確認するといい」
老婆が頭上に向かって手をかざすと部屋が光に包まれる感覚を覚えた。
まるで昼間のような、明るさだ。
光源はなく、部屋全体が明るくなっている。
詠唱がないとうことは精霊魔法の一種でさらに精霊使役のスキルでも持っていないと説明がつかない。
そもそも、この前ガルが魔力を餌と言っていたが実はあれはかなり、的を得ている。
というか、ほぼ正解に近い。
魔力を精霊に与えて、詠唱でその魔法の強弱や種類を指定して操り発動するのが魔法だ。
ロイは異端といっても腐ってもエルフ族だ。
精霊に対してはかなりの畏敬の念を持っているのでそれを餌と言われて唖然したことだろう。
話を戻そう。
光源によってあらわになった自分と他人のスキル鑑定紙を皆が覗き込んだ。