鑑定師
ガルの勉強会から数日後、ギバザルトの動きがなく軍や依頼を受けたギルドも追ってはいるが足取りは掴めずにいた。
特に新たな命令もないので四人はシャインの都市部にある市場に来ていた。
石造りの民家や建物が整然と並び、行き交う人種は様々だ。
その、一角に向けて我らは足を向けていた。
「その鑑定紙屋ってなんなんだ⁇」
相変わらず、白い仮面をつけているガルがくぐもった声で質問する。
仮面をつけているだけで周囲からは浮いているように感じる。
「鑑定という、基本的な魔法があるのはご存知ですか?」
ガルの横を歩くロイが声をかける。
鑑定とは任意の相手のスキルを読み取る力だ。
流石に戦闘中に全部とはいかないがだいたいのスキル構成がわかる魔法だ。
「それはわかる。
基本的な魔法は使えるが魔法だとヴァンパイアへの効果は薄いからな」
今までヴァンパイアを狩ることのみ執着してきた男はさすがに、基本的なのは使えるようだ。
そもそも、鑑定が使えないのでは新兵すらにも劣るというものだ。
情報は大事だ。
「鑑定紙屋というのは鑑定師スキル持ちの鑑定官が専用の用紙に全スキルを転写して可視化した用紙を売るところです。
スキルは新たに習得したり、あとは鑑定魔法だと強弱に関係なく記憶できないくらい多くのスキルを保有する方もいらっしゃいますからね」
「需要ありそうな、ないような商売だな」
ガルは歩きながら道の横で露店をやっている小物を手に取り興味なそうにそれを店主に返した。
「そうじゃ。
大抵、鑑定紙屋は骨董や遺物の鑑定も兼ねておる」
「遺物、か…」
そうこうしてるうちに市場の一角に少し古びた石造りの建物の前で皆の足が止まった。
「ここか?」
ガルがここで大丈夫か?とも言いかねない口調だ。
確かに周囲の建物から見るにここが一番古びていて少し風化した石が周りから浮いてる店だ。
「少し、古臭いが信用できる店だ。
鑑定紙屋は公的機関が認可を受けた店にしか鑑定紙を下ろしてるから軍人も出入りする」
「軍人のスキル内容秘匿のために軍ではやってないのか?」
宿主が入り口上部の看板に目を向け、次にガルへ目を向ける。
「確かに通常の部隊なら部隊ごとに専属の鑑定師がいて厳重に保管しているが俺たちの隊は予算や指揮系統とか他とは別だからな」
「イース、それじゃいいように聞こえるが?」
ルーも宿主の発言には苦笑いだ。
「…私たちは軍籍、といっても殆どがギルドか傭兵みたいな扱いですから、ね。
私ちの階級もあってもないようなものですし…」
「…もう少し待遇がいいと思ったがあとでそれを聞いて耳を疑ったぞロイ?」
「…さて、なんのことでしょうか?」
ロイは自然とともに生きるエルフの中では異端といってもいい。
普段、エルフの中でも饒舌だが物事の多くを真の意味や意義を語らないロイは弓を多用するが時には腰に下げている銀で装飾されている自動拳銃も使用する。
一般的なエルフは銃は使わないし、弓と魔族と同等の魔力を保有するため魔法を主に使う。
銃はエルフからみたら邪道もいいところだ。
狩りなどで銃の音が邪魔なのが表向きの理由らしい。
エルフはそのほかに他種族に対して横柄というか表情の変化がない態度で接するのが普通であるし、基本的によそ者を嫌うかのような風習のがある。
それが普通だと思われているから特になんとも思われない。
エルフだからな、とかそんな感じだ。
ほかの種族も似たような特徴はあるが。
とにもかくにも、ロイの丁寧な言葉の裏にはなにを隠しているのか定かではない。
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