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お風呂

 お風呂場を覗くと、湯船にはすでにお湯がなみなみと入っていて、湯気もモワモワ上がっていた。なので、早速脱衣所で服を脱ぐ。


 脱いだ服は洗濯機に放り込み、さぁお風呂だ! と思ったときに、脱衣所に姿見がおいてあるのに気がついた。


 そういえば女の子であることは確認したけれど、どんな容姿なのかまでは確認できていないなーと姿見をのぞき込む。


 そこで見たのは金髪ロングでまん丸な碧眼、すっとした鼻にぷっくりとしたかわいらしい口、そしてそれらがバランス良く配置されたちいさな顔。


 まるでお人形みたいな少女が鏡の向こうからのぞき込んでいた。


 「うそ、これが俺……!?」


 そのあまりの可愛らしさについ一目惚れしそうになるが、鏡の中の女の子も自分に合わせて目をぱちぱちしたり、首をかしげたりして、否応にも自分であることを思い出させてくる。


 顔はかわいい。じゃぁ体は? と、体も眺めていく。


 すらっとした手。


 手で包み込めるくらいの、ささやかながらゼロではない胸。


 転移前みたいに出っ張っていることもなく、きゅっと細いお腹。


 毛も生えていないつるつるな股。


 そしてすらっと伸びた、むだ毛ひとつない足。


 顔もあわせて、本当にお人形さんみたいで。


「かわいい……!」


 ついつい見とれていると、腰に微妙な打撃感。


 何だ何だと振り返ると、スライムがジャンプして腰にぶつかっているのが見えた。縮んでジャンプすることで、体の5倍の高さはある腰まで届かせているのか。


 こんなにジャンプできたんだな、と見つめる。するとジャンプを止め、まだ入らないの? といった感じで今度は足をつんつんしてきた。


「わかったわかった。じゃあ入ろうか!」


 ということで、一緒にお風呂場に飛び込んだ。どうということはないユニットバス。でも慣れ親しんだ感じでありがたい。


 まずはシャワーで汚れを落とし、お風呂にダイブ! 


 ばさぁとお湯が溢れる。はぁ、暖かくて心が癒やされる……!





 髪の毛がふわふわとお湯になびいているのを見て、そういえばお風呂では髪を上げておくのがマナーなんだっけか、と思い、頭の上に持ち上げて見るも、上手なまとめ方がわからない。まぁ、一人風呂だしいいか、とあきらめてなびくままにする。


 ちなみにスライムは、初めての場所が気になるのか、あっちへうろうろ、こっちへうろうろ。時折バスタブの上に乗っては、体の一部をそっと伸ばして、お湯に触れてたりする。


 かわいいなーってぼーっと眺めていたが、そうだ、名前を付けてあげよう! と思い立つ。


 「そうだなー、スーちゃん、ってのはどうかな?」


 それを聞いたスライムは、ぴょんぴょんと跳ねて喜んでいるっぽい。


 よし、スーちゃんで決定だ。


 名付けセンスが無いのはわかっているけれど、わかりやすい名前で良いじゃない? かわいい響きだし、本人(?)も喜んでいるみたいだし。


 スライム改めスーちゃんに自己紹介してあげよう。


「俺の名前は~」


 と言いかけて、ふと思う。


 前の名前は男の名前で、それではこの可愛らしさには似合わない。それにこんなにかわいいのに、俺ってのはないなー、と。


 名前はあまり変わっちゃうのもイヤだし、見た目も違うのに名前まで違ったら、妹に会えても気づいてもらえないかもしれない。そう考えると幼い頃のあだ名、ユウでいいかな。

 俺、ってのは無いにしても、わたし? それだと完全に女の子を認めたことになるし…… ボクでいいかな。ボクっ子もいいよね。


「ボクの名前はユウ。よろしくね」


 わかった、というかのように揺れるスーちゃん。


「スーちゃんもお風呂入ろ?」


 そう呼びかけて、風呂でたゆたったまま手だけさしのべると、手の上に飛び乗ってくれる。


 そのまま手を引き寄せて、スーちゃんをお風呂に入れてあげる。


 はー、極楽極楽。





 ほー、っとお湯につかっていてふと思う。スーちゃんお湯は大丈夫なのだろうか、と。


 そう思ってスーちゃんに聞いて見るも、いいよーって感じでお湯の中でゆらゆら揺れている。とりあえず大丈夫そう。


 スーちゃんと一緒にしばらくお風呂を楽しむのだった。





 お風呂は温めでいつまでも入っていられる感じではあったが、制限時間も気になるし、上がることにした。


 湯船のお湯は流し、スーちゃんを抱きかかえて脱衣所へ。


 と、脱衣所に小さな冷蔵庫が置いてあるのに気づく。開けてみると瓶のコーヒー牛乳が2本。うむうむ、風呂上がりはやっぱりこれだよねー。


 タオルを棚から取り出し首に掛け、瓶を取り出しふたを開ける。お、紙キャップとか懐かしい。ということは開ける器具は…… と、冷蔵庫につるしてあった。


 2本取りだし、2つともキャップを外す。そして1本はスーちゃんに。


 そして残りの1本は、腰に手を当て、ぐっと背をそらしつつ飲む! うん、うまい!


 飲みながらスーちゃんを見ると、スライムの体から突起が出てきて、器用に瓶をつかみ、ボクと同じように体をそらしつつ飲んで?いる。スーちゃん口とかどこなんだろうね。どこからでも吸収できるのだろうか。まぁいいや。またゆっくり観察しよう。


 飲んだ後は、体を丁寧に拭いて、髪の毛も丁寧に拭く。髪の水気をあらかた拭き取ったが、長い髪は濡れていると重い。ちゃんと乾かしたいなーと見回すと、ドライヤーも発見。ドライヤーで髪を丹念に乾かす。


 乾かした後は服を着る。のだが、棚においてあるのは先ほど着ていたのと同じ下着とワンピース。他に無いのかなとタブレットを呼び出して見るも、同じ物しか無い。


 妹の下着も洗濯していたから、見慣れないものなわけでは無い。けれども、だからといってそれを穿くは違和感がある。でも、下着を着けてないと、ノーパンにワンピース一枚の姿…… それはイヤだ。どうしよう……


 しかし、ここで悩んでいても始まらない。意を決して下着は穿き、せめてもの抵抗とスポブラは付けずにワンピースを着て、脱衣所を出るのだった。

次回、うどんを召喚します。本日17時更新予定

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