表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/24

プロローグ

「はぁ~ どこまで行っても景色が変わらないなぁ」


 この世界に転移してもう5日。


 神様によって転移させられた場所は、人の気配どころか動物の気配もない森の中だった。


 貰ったスキルのおかげで飢えることはない。いきなり街に行ったら慌ててボロを出していただろうな、と考えると悪くない場所だったとは思う。


 でもスキルの成長のためには人と関わる必要がある。スキルの使い方は色々確認したし、次は人を探そう。そう考えて森の中を進むこと3日、未だ人の気配はない。


 同じ場所をぐるぐる回っているんじゃないの? と勘ぐってもしまうけれど、目印代わりに折り曲げた小枝も見当たらないし、たぶん進んでいるのだろう。


 早く人の気配が見つからないかなぁ、でも知らない人にばったり会っちゃうのは怖いなー、なんて考えながら進んでいると、天然の空き地にたどり着いた。ここだけ光が綺麗に差し込んでいて、神々しささえ感じる。


「おなか空いたし、そろそろお昼にしようかな」


 誰に言うでもなく呟いて立ち止まる。


 寂しいからか、独り言が多くなって仕方ない。


 ちなみに寂しいけれど、一人旅というわけではない。転移後に出会ったスライムのスーちゃんと一緒に行動しているので二人旅だ。スーちゃんは今も肩の上でおとなしくしている。スーちゃんはスライムだからしゃべれないけれど。この世界のスライムは、非敵対的で仲良くなれる存在なのだ。


 それはさておき、ちょうど良い場所があるのだし休憩することにしよう。


「出てこい、テーブルと椅子!」


 呪文を唱えると、目の前に折りたたみテーブルとパイプ椅子が出てくる。これはスキルではなく、神界にある倉庫から物を取り出す転移者特典の宝玉の力。


 出てきた椅子に腰掛け、テーブルに向かって呪文を唱える。


「サモン、かけうどん2つ! どんぶり入りで箸載せて!」


 すると目の前のテーブルの上に、どんぶりに入ったうどんが現れる。これがボクのスキル、うどん召喚だ。


 唱えたとおり、どんぶりの上には箸が乗っている。


 最初はどんぶり無しでこぼしてしまったりもしたけれど、5日目ともなれば、もう慣れたもの。


 出現したどんぶりからは、いりこ出汁の芳醇な香り。中身は黄金に輝く出汁。そこに浮かぶのは、エッジの立った断面を持つ、艶やかな白い麺。


 一杯はスーちゃんに渡す。スーちゃんは器用に突起を作り出し、その突起でどんぶりを持ち上げうどんを飲み込んでいる。


 そんな様子をほほえましく眺めつつ、ボクもどんぶりを持ち上げ、さっそくすすり込む。


「うん、おいしい!」


 のどを勢いよく滑り落ちる感覚は、まさに至高。


 ひんやりとした森の中、出汁の暖かさは心まで暖めてくれる。


 心が満たされるのを感じながら、ふうっと一息。


 もう一口、もう一口! と食べたくなる気持ちを抑え、おかずを出すためにどんぶりを置く。


「そして、サモンおでんの大根、すじ肉、もち巾着! 皿に載せて!」


 そう唱えると、目の前のテーブルの上に、大根串、すじ肉串、もち巾着の載ったお皿が現れる。


 出汁が染み込み、茶色になった大根。すっと箸を入れ、切り分けた半分をスーちゃんに差し出すと、喜んで吸収している。そして残り半分を口に放り込む。口の中でほろりと溶けて、うん、うまい!


 お次はすじ肉! こちらも串から外し、スーちゃんと半分こ。腱のプルプルな透明感。かみつくと適度な弾力! これもたまらない……!


 最後はもち巾着! コレばっかりは箸で切り分けられないので噛み付く。みょーんと伸びる餅。そして、それを包む稲荷は出汁をたっぷり吸い込みジューシー! さらには巾着を止めている味の染みこんだかんぴょうが良いアクセントになる! 噛み切った残りの半分を箸につまんだまま、スーちゃんに近づけると、箸でつまんでいない部分をはむっといった感じで器用に包み込み、吸収していく。まるで、あーんをしているような気分!


 どれもうどん出汁をベースにした、うどん屋さんのおでんの味! うどんと一緒に召喚できるようにして貰って正解!


「しかし、いつになったら森を抜けられるんだろうねぇ。が○うより大自然の中でうどん食べるとか、ある意味貴重な体験かもしれないけど。でも3日目ともなると、さすがに飽きてきたよ」


うどんとおでんを交互に食べながら、誰に言うでもなく呟く。


 2日目の事件以降、ときどき何か生き物の気配がすることがあるけれど、人を恐れてか近づいてくることはない。襲われるよりはよっぽど良いけれどね。こんなかわいらしい女の子の姿では対抗できるはずもないし。


 そう、今のボクは金髪碧眼の人形みたいにかわいらしいお嬢さんである。


 身長も130cmくらい、年齢は10歳といったところだろうか。


 服装も白いノースリーブのワンピースに麦わら帽子。


 足下がロングブーツでなく、背中に2泊用くらいの体には不釣り合いなリュックさえなければ、さながら避暑地にでも来たお嬢様といった感じ。


 ステータスプレートなんてものがあれば正確なこともわかるのだろうけれど、神様曰く、あいにくこの世界にはそんなものはないとのこと。


 転生前は170cmは超える男だったわけで、最初は戸惑いも大きかった。けれど神様と話す機会はもうないわけで、しぶしぶながら認めるしかない。


 最初は下着のフィット感やらワンピースやら慣れないことも多かったけれど、さすがに5日目ともなれば慣れてきた。


 どうしてこんなことになったか、せっかくなので食後の休憩ついでに思い返してみようかな。

書いた理由など:異世界転移・転生したいな~ と筆者は思うこともあるわけですが、香川県民である筆者としては、転移先にうどんがなければうどん欠乏症で倒れると思うんですよ。というわけで、異世界でもうどんが食べたいし食べさせたい!あと食べさせてくれるなら美少女がいい!ならTSさせよう!ということでこうなりました。みんなもTS転生してうどん食べようぜ!(?)


7/3:あとの展開に合わせて少し修正しました。

7/13:表現を少し修正

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ