ゲーマーの日常(現実)
MGO最強のプレイヤー[メティ]それを天使として崇める森岡沙月(変人)と幼馴染の主人公、鈍感難聴野郎の天野祐志(モブA)が登場します。
オレンジ色に染まったストリート。そこには1人のプレイヤーがいた
そのプレイヤーの名は[メティ] MGOの中でそのプレイヤーに勝てたものはいない。大会でも連戦連勝、今や彼女の手には、このゲームで最強であろう武器を多数所有している。
そんな最強の名にふさわしい彼女は今日も不敗記録を刻んでゆく。しかし、彼女の顔には笑顔はない。
…いつからこんなにも無気力になったんだろう。ただ楽しんでいただけなのに
彼女は最強と言われると同時に周囲から蔑まれた。どんなにすごいプレーをしても武器の手柄、どんなにすごい記録を打ち立てても武器のおかげなど、何をしても彼女自身のことを周囲は認めてはくれなかった。
どうしたら…
彼女は考える。別に周囲から認めてもらいたいわけではない。しかし、何をしても武器の手柄にされるのはとても不愉快だ。
彼女は考える。何でどんなことをし成し遂げたらこの胸のモヤモヤが取れるだろうか…?
その時、地面に倒した敵が持っていた[秋刃魚]というナイフが目にはいった。
彼女は考えた。そして、彼女は良いことを考えついた。
そして、MGO最強のプレイヤー[メティ]はその日をもって 、現れなくなった。その後オークションにメティが使っていたとされる全装備が出品された。その独特な強化方法は大会を何度も優勝し、得た素材でされていたのでほとんどのものは真似ることのできない最強装備として流れた。これを人は[メティ装備]とし、この装備を持っているものはランキング上位に確実に入ると言われ、メティがいなくなった後も、MGO最強プレイヤー[メティ]の名はその装備とともに語り継がれた…
「…と言うのが、MGO最強のプレイヤー[メティ]様の伝説なんだけど、どう思う祐志?」
「ど、どうって言われても…。」
と、ここはとある喫茶店。モダンな雰囲気の洒落た感じの店だ、今は学校帰りの学生が八割を占めている。そしてこの俺[天野祐志]もその学生の1人なわけだが…そして、この目の前で[メティ]について熱く語っているのが[森岡沙月]、茶髪のショートヘアで容姿は良いほうだがまぁ…性格が足を引っ張っている感じだ。学校でもゲーマーぶりを発揮し少し引かれている、本人は気にしてないようだが…。沙月とは昔からのゲーム友達で幼馴染だ、こうして学校帰りに喫茶店に寄って熱くゲーム話を繰り広げているのがその証拠だ。
「あの可愛さであの声であの体格でWGOの頂点に君臨してたのよ?信じられる? あ〜忘れもしないあの輝く瞳、可愛い声、きっと天使かなにかだわ!」
「まるであったことがあるような口ぶりだな?しかもWGOは現実と性別が違くてもAIがその人の顔の形からその人の女性バージョンを作れるし声だって変えれるそれで、女だと決めつけるのはどうかと思うが?」
「へぇー、変に詳しいわね?」
「ぐっ…」
痛いところを突いてくる。しばしの沈黙…、とりあえず話題を変える。
「そ、そんなことよりもだ、その[メティ]様ってのやめてくれないか?」
「なんでよ!天使様に様をつけてはいけないなんてあなた本当に人間?」
「お前のその発想やばいからな!それだからクラスで変人のレッテル貼られるんだよ!」
「うるさいわね! そこらへんのモブがなにを言おうが私には関係ないわ!!それに変人といえばあなたも十分な変人だと思うけど?」
「どこが変人だ!俺は立派なモブAを演じているだろうが!」
「だーれが、リアルの話だといった!!MGOであなたがまともな武器を持っているところ見たことないんだけど⁉︎」
「ネタ武器と言えっ!」
「そんなところ、こだわるんじゃないわよ!」
「いーや、違うねまともそうに見えても使えない武器のほうが多い!それに対してネタ武器はネタとして造られたぶん強さへのバードルが低いっ!しかも俺が使っているのはその中でも選りすぐりをe…」
「はいはい、分かったわよ!まともなネタ武器もあるってことね?それでも強くなかったらそれまでじゃないの!」
「お前俺と一緒に戦ったことないだろ!いつもゲーム内で話してるだけじゃないか!」
「それは、まぁ…あなたと話すほうが楽しいからでありまして…」
「えっ?なんだって?」
最後のほうが周りの声で聞き取れなかった。
「うっさいわね!そこまで言うなら今日は一緒に戦って強いかみてあげるわよ!この鈍感難聴男めっ!!」
なんかすごい罵倒された…こいつは俺に本当に容赦ないな。まぁ、聞き取れなかったこちらにも責任があるが
「…分かったよ、じゃあ今日8時ごろログインするから」
「分かったわ、じゃあ今日のところはおひらきね、じゃあ会計よろしく〜」
そう言うと沙月は店を出ていった。
「ちょ、ちょっと待て!」
俺の声はすでにドアの向こうにいた沙月には届かず、帰ってくる気配はなかった。
はぁ、自分が食べたものぐらい自分で払えよな…
会計を済ませ、財布の中身を確認し、心許なくなっていることに絶望感を抱きながら俺も店の外へ出る。
「じゃあ、またね、[祐志]」
「…あぁ」
そう言って背向け家へ帰っていく沙月を見送った後、今日はいつも以上に面倒くさそうな用事ができたな、と思いながら祐志も帰路につくのだった。