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FD-煽りで始まる新世界  作者: Yuzi
一章
31/34

27 死にたくなければ早くやれ

 鍛えた脚力で偵察龍に襲われそうなアスカに向かってレスリングのタックル風に突っ込む!

「え、グベェラ!?」

 勢い余って酷いことになった気がするが、まあいい、攻撃を避けられたし。

 そのままお姫様抱っこで偵察龍から引き離す。

「ああ!!」

「お兄様……」

 なんかメーヤはアスカに怒っていて、ミヤは俺を悲しそうに見つめてくる。

 まあそんなことをしつつも偵察龍が近づかないように牽制してくれている。

「おい起きろ!」

 俺のタックルで気絶したアスカの頬を叩く。

「う、うぅ……、は?」

 唸っていたアスカと目が合った。

「え、近!? え、誰? て、痛い!」

 俺に驚いていたがお腹を押さえだした。

 どうしたんだろう? 誰かにタックルでもされたのか?

「もう何がどうなっているんですか!?」

 なんか状況がわからなすぎて涙目になって叫んでいる。

 もう一度頬を叩き、戻って来させる。

「痛い!」

「とっとと自分に回復魔法をかけて戦いに戻れ!」

 そういって偵察龍の方に向かった。


 今にもアスカに襲い掛かりそうな偵察龍に向けて大剣を構え、語る。

「すまないが選手交代だ。ここからは俺たちが相手になろう」

 俺がそういうと偵察龍はなんだか納得したような顔に……顔はよくわからないな、雰囲気になった。

「なるほど、どうりで先ほどの者たちは歯ごたえがないわけだ。そなたが本物の救世主というわけだな」

 いえ違います、ラスボスです。

 なんて言っても意味がわからないだろうし、頭がおかしいやつと思われるだけだから黙っとこう。


(りき)(しゅ)(そく)!」

 メーヤが補助魔法を唱えた。一文字詠唱まできたのでもうそろそろ無詠唱で発動できるようになるだろう。

「え、え?」

 展開についていけないアスカに叫ぶ。

「アスカ、観ろ!」

「なんで? なんで知って(・・・)いるんですか!?」

 しょうがない状況とはいえ、パニックになっている暇はないんだよ!

「死にたくなければ早くやれ!」

 さらに叫ぶとパニックになりながらも観た。

 龍の巫女であるアスカ、彼女のスキルは龍観

 ━━龍の気配を察知したり、観ることでその龍の本質や特徴を掴むことが出来る。

 対龍系のスキルだ。

 まだ彼女のレベルは低いだろうから多くを観ることはできないだろう。だが、ここでは観ることが必要なのだ。


「え? あなたたちまさか!?」

「今は俺たちのことはいいんだよ!!」

 本当にふざけているのか! とっとと敵を観ろよ!

 こっちは偵察龍の相手で必死なのによ!

「よそ見とは余裕だな!」

「したくてしてんじゃねぇよ!」

「お兄ちゃん!」

「お兄様!」

 アスカに話した隙を狙われ、飛んでくる尻尾をメーヤが防ぎ、ミヤがカウンターで攻撃した。

 この辺の連携は素晴らしいものがある。

 二人でいれば彼女たちの心配はいらないと思えるほど信頼している。

「グオォ! これは毒か!?」

 そこで予想外のことが起きた。

 偵察龍が毒に反応し自らの左足を切ったのだ。

「メーヤ、飛べ!」

 それだけだがメーヤはちゃんと俺の意を汲んでくれてミヤを抱きしめて高く飛んだ。

 俺はアスカに必死で近づき、翼も使いながらレスリングのタックル風にぶつかり、そのまま飛んだ。

「速! グベェラ!? く、くぅぅぅ……」

 悪いとは思うが死ぬことを考えたら痛い方がいいだろう。


 俺たちが上空へと退避した直後に地面から巨大な剣のような物が円形に現れ、地面を砕いた!

 そう、偵察龍が地面を噛み砕いたのだ!

「……逃したか」

 そういって偵察龍の本体は姿を現した。

「ヒィィ!」

 その全容にアスカは悲鳴をあげた。

 本体は頭部が身体の半分を占めていて、小さい手足が付いた、端的に言えばアンコウに近い身体つきをしていた。

 そして先ほどの地下からの噛み砕きが初見殺しと呼ばれた所以である。


 偵察龍とは提灯アンコウのような龍なのだ。

 本体は地面の下にいて、地上に出ているのは本体の身体の一部で龍の形をとっているだけ。

 それでもその擬似龍は高性能でブレスを放つことも、動くことも、攻撃することもできる。

 本物の龍との違いは、ただ左足を地面から離すことができないだけだ。

 そして擬似龍がどれだけダメージを受けても本体には影響しない。

 この特性で擬似龍を使い、相手の能力を見極め、本体が情報を持ち帰るという偵察に適した龍なのだ。

 そんな龍なのに、擬似龍がやられた後になぜ主人公パーティーに本体が攻撃したのかはわからない。

 だが、それ故に致死率95%の初見殺しが成立したので、ある意味で正解なのかもしれない。

 この致死率には他にも要因がある。

 アスカの初期の技、観るがゲームでは死にスキルと呼ばれていたことだ。

 ターンを一つ消費して観るわけだが、序盤では観れることも少なく、見た目で属性もなんとなくわかるので、そんなもの使うくらいなら殴れと言われたほどだ。

 正直、俺たちが見てわかることをスキルで説明されても……というのがプレイヤーたちの総意だった。

 しかし、それがここでは必要となってくる。


 アスカの観るを使わずに擬似龍を倒してしまうと偵察龍本体に奇襲され、必ず殺されるのだ。

 正直、意味がわからなすぎて呆然とした覚えがある。

 ヒントはアスカが戦闘前に言った、『気をつけてください、何か違和感を感じます』のみ。確かにヒントと言えばヒントなんだろうが、本当に記憶にも残らないスキルで一度も使ったことがないプレイヤーも多かったことからそれを使うことを思いついたプレイヤーはごく少数で全体の5%ほどと言われた。

 致死率95%はここからきている。


 だが、他にも方法があったらしい。

 擬似龍と偵察龍本体は繋がっているので毒は本体にまで通じてしまうようだ。

 擬似龍へのダメージは全く影響しないから毒も効かないと勝手に勘違いしていた。

 しかし、多分ゲーム中では気がついた人もいたのだろうが、アスカに観るを使わせていなければ結局奇襲で殺されるので語られることは少なかった……のか?

 よくわからないが俺は聞いたことがなかったな……


 まあそれはいい、ここまでが大変なだけだからな。

 もう勝負はついている、なぜなら……

「残念だったな」

「ああ、口惜しや。任務すら果たせんとは……」

 相手も認めているくらい状況は詰んでいるのだ。

 先ほどの説明のようにアンコウのようなこの龍は奇襲による噛み付きとその大口径によるブレスしか戦闘方法がない。

 移動方法も擬似龍に引っ張らせるとか地中を潜るとかしかないのだ。

 それも移動速度は超低速。

 口の周りに近づかず、腹や背を攻撃し続ければ逃げられる前に倒せてしまうのだ。

 そうしてせめてもの情けでミヤに睡眠薬を投与させて、倒した。

 ━━スキル『ドラゴンイーター』が発動しました。

 攻撃力が上がったような気がした。

「あ、あなた、その腕は?」

 あ、アスカがいるの忘れてた。

 説明が面倒……

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