8 我の名は死りょ……
死霊龍ネクロム、それは死を超える者、死を告げる者、そして死をもたらす者。
死霊術に長け、自身の身体をアンデッド化し、スケルトンになった。
だが、スケルトンには弱点があった。
身体を構成するのに必要な魔石、これが剥き出しだったのだ。
弱点が露出しているスケルトンは、簡単に倒されてしまう。
そこから研究を重ね、ゾンビを生み出した。
弱点である魔石を肉の鎧で覆い隠せるゾンビはスケルトンとは違い、十分な脅威となった。
研究の終わった死霊龍ネクロムは世界にそれらを解き放った。
死霊龍イベントは、プレイヤーの目に見えないところで進行していく。
もちろん街や村にヒントは隠されている。早期に気が付き、対処出来れば恐ろしいイベントではない。
だが、初見ではまずこんなイベントが進んでいるとは想像もつかないだろう。
それなのに、通常なら三都市崩壊までにこのイベントを止めないと疫病が蔓延して、複数都市崩壊、街が機能しなくなり、攻略がかなり困難になる。
まあこのイベントのことを知っていれば、研究直後の死霊龍を低いレベルで撃破することも可能であり、倒すと手に入る経験値もお金も多くありがたいイベントと化す。
放置しすぎて困ったときには、救済措置なのか、血塗れセルファを突っ込ませて相打ちにさせることが可能であった。
「きゃー! ホネ、骨が動いてるぅ〜!」
はい、俺たちはそんな死霊龍の研究施設に来ています。
騒ぎ、震えているメーヤに言いたい、出会ったときの君の方がグロ画像っぷりでは勝っていたよと。
「大丈夫だから、ほら胸のところにキラキラした石みたいなのがあるのがわかる?」
「え、ううぅ〜〜、あ、あった! あったよお兄ちゃん!」
俺の背中に隠れながらスケルトンを見るメーヤ。
「それが魔石、あいつらはアレで身体を維持しているからアレを抜いちゃえば動かなくなるよ」
そういって一気に近づき、魔石を抜き取る。
動きも鈍いので楽なものだ。
「お兄ちゃん〜〜置いてかないでよぉ〜!」
なんかどんどんと幼くなっていく気がする。
本来は姿はこっちなのかな?
「ごめん、ごめん。でもこれで怖くないのがわかったでしょ」
「見た目が怖いよぉ〜!」
それは耐えてください。
「魔石は傷付けずに抜き取るか魔法を当てて落とすように」
そういってどんどんと出てくるスケルトンの魔石を抜いていく。
「うぅぅ〜〜、本当に怖い思いをしてますぅ〜〜!」
怯えながら魔法を放っていく。
メーヤは龍の持たない聖属性の魔法を使う。
ほとんど補助魔法、回復魔法だが攻撃魔法がない訳ではない。
ほとんどの場合、攻撃魔法は役に立たないが、アンデッドには効果的だ。
叫んでいても、ホーリーショットを打ち込んで魔石を落としていく。
やるじゃないか、いいぞ、もっとやれ!
着いてきたのはメーヤなんだから。
警備用のスケルトンを倒し終わり、魔石を回収していく。
魔石×230
結構いたものだ。
人間のスケルトンだけでなく、リザード、リザードマン、様々な種類のものがいた。龍だけはさすがにいなかったが。
そうしてやっと研究施設内に入ることができた。
そこは生物のホルマリン漬けがたくさんある生物の研究所みたいなところだった。
「お兄ちゃん、なんなのここぉ?」
もうビビリまくりだ。だから初めて会った時のメーヤの方が……
俺は驚いていた。
ゲームのマップそのままだったこともそうだが、元の世界に戻ったような、そんな光景だったから。
やはり噂だけされていた裏の設定は本当だったのか?
マップ通りなら話は早い。
宝物庫に直進! 金目の物などをアイテムボックスに入れていく。
「お兄ちゃん、大剣があったよ!」
見てみるとアンデッドブレイカーという名の大剣が。
「ありがとうメーヤ」
そういって頭を撫でる。それだけで不機嫌というか怖がっていたのが笑顔になってくれた。
それにしてもなんでドラゴンの巣窟にドラゴンキラー、魔王城に悪魔殺し、死霊龍の研究施設にアンデッドブレイカーと、その種族の本拠地にそれに対応する特攻系の武器があるんだろうな。
それにしてもこんな大剣あったっけ? 全く記憶にない。
序盤の頃だから忘れたんだろうな、とりあえず今の大剣より間違いなく良い物だからこっちを使おう。
あとは、あ、あった! 耐性のペンダント。
「メーヤ、ちょっと来て」
「はーい、お兄ちゃん!」
早! 声をかけたと思ったら後ろにいたでござる。え、忍者? ストーカー?
気にせず、ペンダントをつけてあげた。
「ふぁ〜、ありがとう、でもいいのお兄ちゃん?」
回復役のメーヤが状態異常になられると困るしな。
「それは若干の効果しかないから気をつけるんだぞ」
「わかった! ありがとうお兄ちゃん!」
よし餌は与えた、次は鞭だな。
「お兄ちゃん危ないよ! あれは危険だって!」
メーヤが震えながら俺に言ってくる。
そう、あれは危険だ。
死霊龍ネクロム。
10メートル近い体格とそれを覆う金属の鎧。
その鎧どこで作ったんだよ、と言いたい。
スケルトンになった今でも高い知能を有しており、生前の上位龍としての魔法も使ってくる。
まさに死神。
そんな龍と俺たちは戦おうとしていた。
「メーヤ、大丈夫だ。俺が合図したら放つんだぞ」
「う、うん、わかったよお兄ちゃん!」
メーヤの左手を握り、死霊龍の元へ━━
「こんなところへ小さなお客さんが来たようだね。何用かな? 我が名は死りょ……」
「今だ!」
「ギャーーー!」
ッチ! 一撃で消し飛ばせるかと思ったが鎧が邪魔で手足だけか。
「まだ話している最ちゅ……」
「次!」
あ、頭が消えたら叫び声も無くなった。
そこに声帯はないと思うんだが……
鎧で守られている部分しか残っていないので最後は鎧の中にドラゴンブレスを放ってもらって終了した。
「お疲れ、メーヤ! よく頑張ったな!」
「……え、え? あんな強そうな龍が……え、ぇ?」
なんだかパニックを起こしている。
肉の鎧がないスケルトンなんてこんなもんだと思うんだけど。
それにメーヤの対アンデッド能力が高いというのもある。
これでどれだけレベルアップできたか楽しみだな。
鎧は呪われているみたいだから放置して特大の魔石は回収。
「よし、帰ろうか」
「……う、うん!」
早く帰りたかったのだろう、何かを考えていた様子だったが、すぐに返事をした。
さて、帰りますか。
魔石がかなり手に入ったのと、奴の研究費にするためであろう貴金属類も手に入った。
研究の最中でまだたくさん残っていたのは幸運だったな。
さてこれを売り払ったら五番地、ランダム屋に行くか。




