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tremendous love  作者: yion
4/4

act.4

 



 次の日


 私は天音さんとのことを取り持ってくれた男にお礼を言おうと思った



 塀を飛び越えると彼がいた



「おはよーございます」


「ん?あぁ優愛ちゃん♪」


「あの、日曜は天音さんとおでかけしました、ありがとうございます」



「ああー、全然いいよ」


「あの、これ、お礼にカップケーキ焼いてきたので、ついでに天音さんにも渡してもらえますか?」



「ああ、うん、いーよ」


「あんまり、仲良くないんですか?」


「ううん、そんなことないない♪それよりさ、俺とは遊んでくれないの?」


「えっ…っっとぉー…」



 こんなイケメンと一緒にいたら

 またなんて言われるかわかんないし…



「…ふふ、何てね。いいよ、気が向いたら誘って。俺、いつでも暇だから」


 頭ぽんぽんされた



「あ、はい!」


「じゃ、俺、行くね」



 久々に男の人とちゃんと話すからドキドキしちゃった



 ただ、それだけだよね。






 教室に入ると

 亜子の質問攻めだ



 全然嫌じゃなくて、楽しかった




 そのころ斎藤飛樹也は着々と準備を進めていた





「ええ、そうです、父さん。藜根椎名。と、神楽智也」



 俺は奴らを許さない


 大丈夫だ。優愛。

 俺がお前を守るからな…




 飛樹也は目を閉じた



 高校一年生の入学式を思い出す






「飛樹也!クラス一緒だね!亜子も一緒だよ!」



「優愛、はしゃぎすぎ、落ち着けって」


「あはは!」


 優愛は人にぶつかった


「いてっ」



「!?すみません!」


「あー大丈夫だか…」



 相手は黙り込んだ



「?あの、?」



「何もないよ♪ごめんごめん、前見てなかった、じゃ」



「だから言ったろ?落ち着けって」


「す、すみません…」





 教室に着くとグループができ始めていた



 中でも金髪で化粧の濃い女の子が目立っていた




「んで、海斗がさw」


 まわりには何人か群がっていた




 一人の男が言った



「あの子かわいくない?」



 優愛のことだった




「優愛は亜子のですぅ〜!」



 亜子が優愛に抱きつく



 クラスはたちまちこちらへ注目した




 それを恨めしそうな顔で見てたのは


 藜根(あかざね)椎名(しいな)

 化粧は濃く、金髪のセミロングは内側に巻いている




「椎名のが…かわいいわよ…」






 その日の放課後


「椎名」


 教室にイケメンが迎えにきた



「海斗ぉ〜♡」


 大きな声を藜根椎名が出す




 藜根椎名には彼氏がいた


 名前が





 天音海斗






 天音海斗は教室の隅にいた優愛に気づいた



「あ」


 優愛が顔をあげる


「!?」


 優愛はやべっという顔をした



「朝は強烈なパンチありがとう」



 と言って海斗と藜根は帰って行った




 藜根は最高に不満だった




 海斗の知らない笑顔にも

 自分より優れている優愛にも






 そしてある日

 藜根が朝学校に来て優愛の顔を平手で叩いた



「この泥棒猫!」



「えっ…」




 変な噂は瞬く間に広がった



 藜根と天音海斗が別れたのは

 優愛が横取りした、と




 それだけで気が済まなかった藜根は


 優愛に暴行が及ぶように手配した











『やめてーー!!!!はなして!』


『痛い!』


『亜子っ!飛樹也!助けて!』






 携帯から優愛の悲痛な声が漏れる


『あんたのせいだから』



 藜根椎名の声も





 この、優愛に対する暴力沙汰は

 優愛の希望により

 優愛の父と斎藤飛樹也の父に揉み消された




 優愛には心の傷が残り

 飛樹也の心は恨みしかなかった









 飛樹也は考えた


 何故天音ときいて優愛が何も反応しないのか



 忘れてしまったのか


 優愛は一部記憶が抜けている



 飛樹也のことを斎藤と呼ぶのも

 記憶が曖昧だからだ



 元凶の天音に何故近寄る。


 優愛…







 亜子は全てわかっていた



 優愛が久々に楽しそうに笑うのは嬉しかった




 でも確かめなければいけなかった





「天音いる?」



「…一葉さん」


「あんた、何してんの?優愛に近寄るなって言ったよね?」



「…」



「天音海斗…あんたのしてること、どんなひどいことかわかってんの?!あとであんたの事知って優愛がどれだけ悲しむかわかってんの?!」




「…一葉あのな…俺は絶対、天音さんが男だってバレないようにする。わかってんだろ…?俺が本当に優愛ちゃんのこと…」


「うるさい…!私はあんたも許せないのよ…!」



 亜子は走ってその場から、逃げた。


 逃げたという表現が妥当だ



 亜子だってわかっていた


 天音海斗が辛いことも。


 好きという感情を持ったことで

 その人を傷つけ

 一生の傷を負わせてしまい


 二度と自分には振り向いてもらえない


 正体を明かすこともできず


 気持ちすら伝えることは許されない




 亜子に着信が入った



【斎藤飛樹也】


 亜子は電話に出る



「もしもし」


『亜子、準備は整った』



「やっとなのね。二年…と半年。随分長かったわね」



『ああ。本当にな。』



「じゃあ今からそっちに行くから」




 亜子は電話を切って顔を上げた




 亜子の決心は固かった



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