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第二王女

久々です。またしばらく空くかも?



「はあ、めんどいなあ…」 


 そういうわけで、依頼の話からしばらくして、件の護衛のために王都へと来ていた。



◆◆◆◆

 


 学園はもちろん休んでいる。単位的にはシグレスもユナも卒業レベルまで稼いでいるので問題ないといえば問題ないのだが、剣術と体術の授業以外は少しでもやりたかった。授業を抜けた分だけ、知識や使える魔法が覚えられないためだ。まあ、後で個人的に担当の教師に頼めば済む話なのだが。

 

 立場上、ユナは学園を抜けることも珍しくないが、シグレスはあまりない。冒険者の仕事だって、日帰り、短時間という条件で少しずつポイントを稼いでいるのだ。シグレスが教師に少しの間休む旨を伝えると、珍しそうな顔をされ、次の瞬間には苦笑された。

 学園は受ける奴は勝手に受ければいいというスタンスなので、授業のランク分けさえあれ、あまりシグレスのように事前に言っておく奴は少ないのだ。前世とは大違いだ。

 

 まあ、かくいうシグレスも必要性が感じられる、回復魔法と薬草学の担当教員以外には言っていないが。決してその二人が美人だからというわけではない。そう、後々、個人指導を受けやすいよう取り計らってもらうためだ。じゃあ、他の授業にも言っておくべきでは…という質問は受け付けません。


 ちなみにサミュエルは知っていた。少しの間、放課後訓練ができないことを謝ろうとする前に、


「ああ、第二王女の護衛ですか?」


 と言われた時には凄まじく焦った。

 曰く、国王自ら『そっちに娘行くから仲良くしてくれ』と言われたらしい。マジで馬鹿じゃねえの。仮にも機密情報だ。教えていいことじゃないだろ。つーか、護衛する前に言うなよ。


 ちなみに、エミルにも言っておいた。ただ、


「ええ、気にしていませんよ。どうせ、私との食事なんて面白くもないでしょうし」


 と言われ、拝み倒して許してもらうのには苦労した。まだ、具体的な日取りも決まってはいなかったので、謝るのもおかしい気がしたが。

 その後の冒険者のオッサン達との追いかけっこも良い思い出だ。


 それからユナと共に片道三日ほどかけて、王都リントスへと到着。シルゼヴィア学園とか言うくせに、何故かシグレスたちの学校は王都にない。まあ、大方頭のお堅い貴族様方のせいだろうが。



◆◆◆◆



 今回、王女の護衛作戦の重要な部分は隠密。そこで、部隊をハリボテのものと本隊の二つに分けているそうだ。もちろんのことユナとシグレスは本隊の王女様の方だ。

 そして、シグレスの冒頭のセリフに戻る。


 王女様と落ち合う場所は王都の中でも比較的一般的な宿屋。

 そこから行商の偽装をしつつ、学園へと向かうというわけだ。

 で、現在、シグレスとユナはその宿屋の前にいる。これから王女とご対面だ。シグレスも一応は子爵家ということもあり、挨拶くらいなら貴族が大好きなパーティーでしたことはあるが、基本、シグレスの興味は食事ぐらいであり、それ以上は関わらなかった。


 パーティーでは一回くらいは踊らなければ、ほかの貴族様方から白い目で見られるので、壁の花と化した同類の匂いがするご令嬢を誘って、それ以降はずっと食べていた。ぶっちゃけ、あれを軽々と行う他の貴族の坊ちゃんたちの神経が信じられない。

 ただ、ユナと参加するパーティーが被ったときにはユナを誘わなければ、翌日は無詠唱で狙い撃ちにされるので、極力被らないように日程を調整したり、バレないレベルで仮病を使うのには本当に苦労した。

 仮にも公爵家の令嬢を誘うハードルの高さをわかって欲しいものだ。


 そんなことを考えている内にいよいよ王女の待機している部屋の前まで来た。

 ユナがドアをトン、トトン、トン、とリズムを刻むようにノックする。大方暗号の役目を果たしているのだろう。

 十秒ほど空けて、ドアが開く。現れたのは水色の髪を後ろで一つにまとめた少女。その姿は軽鎧に包まれ、どこか凛とした雰囲気を感じさせる。顔立ちも整っており、年齢(見た目の)もシグレスたちと変わらないくらいだろう。

 そして、その脇には侍女らしき女性が脇に控えていた。ユナが水色の髪の女性へと声をかける。


「久しぶりね、カーミラ。元気してた?」


「はい。ユナ様も相変わらずのようで安心しました」


「アンタも相変わらず固いわね。ああ、それと私の後ろにいる、死んだ魚のような目してんのが今回の協力者のシグレス=ソルホートよ」


 おい、コラ、誰が死んだ魚のような目だボケ。という言葉を飲み込み、よそ行き用の笑顔を貼り付け、挨拶をする。


「ハハ、ユナ様は手厳しい。失礼、ご紹介に預かりました私がソルホート子爵家のシグレス=ソルホートでございます。以後、お見知りおきを」


「ふむ、お噂はかねがね聞いております。私はバルトルン伯爵家のカミーラ=バルトルンと申します」


「バルトルンのご令嬢でしたか、なるほど、噂に違わぬ実力とお見受けします」


「ありがとうございます。では、挨拶はこれくらいにして。中でお待ちです」


 そう言って、カミーラはスタスタと部屋の中へと進む。それにユナ、シグレスの順でついていく。最後にシグレスが部屋へと入ると、脇に控えていた侍女らしき女性がドアを閉め、シグレスたちの後をついてきた。恐らく、滞在中は彼女とカミーラの二人で王女の身の回りの世話をしていたのだろう。

 ただ、先程からユナが気持ち悪いものでも見るような目で見てくるのはやめて欲しい。そんなに俺の笑顔がキモかったのか。悪かったな。


 奥へと入れば、中は思った以上に広かった。流石に一般的な宿屋といえども一番上等な部屋をとったようだ。

 そして、そこに備え付けられた椅子に座り、テーブルの上で優雅にティータイムしているのが――


「あら、ユナ、久しぶりね。それと、そちらがシグレス=ソルホート様ですね。私、シルゼヴィア王国第二王女エリシア=シルゼヴィアでございます」


 そう言って椅子から立って優雅に一礼する少女、エリシア=シルゼヴィア。王家特有の白が強めのプラチナブロンドの髪は腰に届きそうなくらいに長く伸ばされ、丁寧に手入れされているのが素人目でもわかるくらいにサラサラと流れ、顔の作りはまさしく深窓の令嬢という言葉がふさわしい、清純系美少女であった。そして、エミルと同等クラスの素晴らしい双丘を持ち、腰もキュッと締まり、ヒップは大きい。まさにボン、キュッ、ボン、という言葉通りのスタイルだ。


「ご丁寧な挨拶、痛み入ります。私、ソルホート子爵家、シグレス=ソルホートでございます。エリシア殿下とはパーティーのご挨拶で顔を合わせたくらいであったのにも関わらず、覚えてくださっていて、恐悦至極にございます」


「ふふ、父上と親友がよく話されるお人だもの。覚えていて当然ですよ。でも、パーティーじゃもっぱら踊らずに、料理ばかりに興味を示していましたのが印象的でしたし」


「お恥ずかしい限りです。私のような無作法ものだと、華やかなパーティーではつい壁の花になりがちになってしまい……」


「ふふ、想像以上の方ですね。なるほど、ユナはともかく、父上が気に入るのもわかる気がします」


(あのオッサン、娘に何吹き込みやがった…)

 内心、溜息をつきつつ、笑顔を保つ。つーか、ユナはその変なもの見て、今にも吐きそうな目やめろ。流石に泣くぞ。


 波乱の護衛が、始まる。


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