風紀委員
難しいと思われる漢字の読み方
悔いて⇒くいて 美貌⇒びぼう 腕章⇒わんしょう
堪らず⇒たまらず 相俟って⇒あいまって 執拗に⇒しつように
憎悪⇒ぞうお
2032年4月2日
「はっはっはっ」
時刻はPM8:17分。裏路地を一人の少年が走っている。少年は金髪に唇にピアスを付けており、
残念ながら整った顔立ちとは言えない顔を歪めて必死に走っている。
何かから逃げる様に時々後ろを振り返っては、路地を右に左に複雑に曲がる。
少年は俗に言う不良と呼ばれる分類だった。少年は走りながら7分前自分がやった事を悔いていた。
今日は、朝からイライラしていた。何をしても自分に損ばかり降りかかってきてそんな中、
目の前にコンビニが有った。そこで少しのスリル得るためとと憂さ晴らしに万引きをしたのだ。
その結果今こうして逃げ回る羽目になったのだ。
少年は後ろを振り返り誰もいない事を確かめると走るのをやめた。背中を壁につけ座りこむ。
座りこむと強烈な悪臭がした。臭いの元を見ると鮮やかな青い塗料が服や腕に付着していた。
これは風紀委員が使う犯罪者追跡用のカラーボールが当たったのだろう。
「糞、どうすれば良いんだよ。」
衣服に付けば専用の洗剤を使用しないと取れないし、肌に付着したら一週間は取れないらしい。
少年は自分の服装をみた。ユニ・クローゼンと言う安物ブランドの白いTシャツとジーパン、
と帽子を被っていたが、帽子は走っている途中に落としてしまった。
少し肌寒い今日だが、男らしさを見せようとした事が裏目に出たらしい。
肌に付いた塗料を乱暴に拭う。そんな事をしても、肌に付いた塗料は取れないのだが。
それよりも、まるで下水道の中にいる様な酷い悪臭が少年を悩ませる。
吐きそうになるのを必死に我慢してこの状況を抜け出す方法を考える。
自分を追っているのが普通の風紀委員だったら、ここまで必死になる必要は無いだろう。
だが、今自分追っているのは普通の風紀委員ではない。
白地に黒い風紀の文字。
第一級風紀委員。風紀委員の中で一握りしか居ない風紀委員最強の者達。
コンビニを出たところで、「そこの貴方。」とセーラー服を着た15,16ぐらいの女子生徒に
声をかけられた。少女は十人が居れば十人とも振り返る美貌の持ち主で、腰まで伸ばした黒髪、
大きな瞳が特徴的で、可愛らしいと言うよりも華があると言ったほうが良い。
そんな少女に声をかけられて初めに思った事は「俺の時代がキター!」
そして少女の左腕を見て思考が一瞬止まった。
少女の腕には風紀委員である事を示す腕章が有ったのだ。その腕章見た瞬間、少年は万引きをした
商品を捨て裏路地に、逃げ込んだ。
(糞、どうやって家に帰ればいいんだよ。)
青い塗料が付いてる状態で路地を出れば確実に風紀委員に通報される。
流石にこの歳で前科を作りたくない。どうやって逃げるのかを必死に考えていた。
だから気付くのが遅れた。死神の足音が近づいているのを。
「見つけた。」
(え)
顔を上げようとした瞬間、頭部に凄まじい衝撃を感じた。自分が殴られたと分かったのは、
鋭い痛みが頭を襲ったからだ。
「うっ」
次の瞬間、右のこめかみ辺りに衝撃を感じた。少年は堪らず倒れこむ。
霞む視界の中で少年が見たのは警棒らしき物を携えている先ほどの少女だった。
少し先の通りの街灯に照らされた少女は美しかった。
自分が殴られている状態で、なければ見惚れていただろう。
だが・・・今の状況ではその暴力的な美しさも相俟って
死神に見えた。
少女が警棒らしき物を振り上げる。咄嗟に腕で防ごうとしたが体が痺れた様に動かなかった。
そのまま警棒らしきものが振り下げられる。警棒らしき物が肩を殴る。
肩を殴られた瞬間、痛みが走る。しかも、ただの痛みでは無い。
まるで殴られた部分に電気が走る様な痛みだ。
少女はひたすら殴る、殴る、殴る。肩を、腕を、足を。ひたすらに、執拗に。
殴られる度に、声を挙げようとするが呻き声しか漏れなかった。
何度殴られたかわからないが、少年が最後に見たのは憎悪に満ちた少女の目だった。
少年を一頻り殴った後で、少女はスカートのポケットからスマートフォンを取り出した。
画面の中の風紀委員会《犯罪者取締部》と書かれたアイコンをタッチした。
そのまま少年に興味を失った様に背を背けた。スマートフォンを耳に当て呼び出し音を聞きながら
通りに出た。程なく「風紀委員会、犯罪者取締部です。」
と受話器越しにオペレーターの声が聞こえた。少女は言った。
「第一級風紀委員、四ノ原彩月です。」
四ノ原彩月さん怖いな~でも普段はいい人なんです。
次はその事を書きたいな~。後、金髪くん出落ちです。