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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

史上最強の剣豪

作者: 高谷 氷理
掲載日:2012/12/11

三千文字に収め、疾走感溢れる作品に仕上げました

俺は物心付いた時から刀の美しさに心を奪われ、その有り様に憧れていた

刀ほど美しく、武士の品格を示す人殺しの道具は無いだろう

それに惹かれた時から俺の命運は定まった様なものだ


貧乏武士の身分にある父は家訓の掟というものを遵守し、主君に忠誠を誓っていた

俺はそれを馬鹿馬鹿しく思った、徳川天下の太平の世というものにもだ

たかだか二十石も無い一武士が忠義など守ってなんの得なるというのだ?

征夷大将軍せいいたいしょうぐん犬公方いぬくぼう綱吉公つなよしこうがいかに愚かなまつりごとを行ったのか知らぬ筈はあるまい

故に愚鈍な幕府の為に我が一生を捧げるには釣り合わぬ

刀は使わねば意義を果たせず只の飾りに成り下がる。人をあやめるために使わず、何が業物か!何が名刀か!


十四の夜を迎えた時、俺は思うところがあって刀を盗み、床に就いた親父を斬った

父の首は月明かりの下でごろんと転がり、目は虚ろに見開かれていた。何が起きたのか判らないまま逝ったようだ

俺は息子に切られた親父を哀れで、弱いと断じた。親子の情など要らぬ、その晩の内に藩を抜け浪人に身を落とした

娑婆にて俺は親殺しの大罪人とされ、お尋ね者として追われたのも昔の事

今では一介の人斬りとして江戸の町を騒がせていた。刀によって名を馳せたのは本望である


俺は差別せず人斬りを続けた。武士も、浪人も、町人も、商人も、清国人も、果てや妊婦や幼子さえも容赦なく斬り続ける

振り下ろされる銀色に閃く白刃の下には誰であろうと平等である

それこそが当時十九の人生の中で得たきわみであり武士道だった

切り捨てた数は百を越えた辺りから覚えていない。切る事こそが俺の目的と化していたのだ

力の無い者は容易く蹂躙される義務を負う。それこそ己が人生で得た俺の武士道!

我の剣と技を以ってそれを証明し、これを世に知らしめて見せようぞ!


しかし、二十五を過ぎた辺りから俺はだんだんと飽きてきた。何よりも自分が切り捨てる人間が弱い故にだ

無論だが、刀の血錆となる人間を区分する気など毛頭無い

弱い人間が生き残るならば俺を切って捨て刀の錆にしてしまえば良いのだ。俺は斬った人間より強い、だからこうして生きている

しかしそればかりでも興は乗らぬ。近頃の人は俺を見るとすぐに怖気づいてしまうようになった

農民や町人のように帯刀を許されず、部門の下に生まれなかった者はまだ良い


しかし最近は腰に魂たる刀を差す武士すらも、俺の姿を見ると怖気づいて命乞いをするのだ

百年近く続く太平の世が奴等から武士の気骨を奪ったのか、それとも人斬りの俺が異端なのか知らぬ

中には刀を差し出し、代価だいかとして見逃してくれるよう嘆願たんがんした者も居た

武士の魂に等しい刀を安易に手放す者を俺は嫌悪し侮蔑した。そのように情けない輩はすぐには殺めず生きたまま切り刻んだ

俺はつまらなかった。そのようなことを続けてきたからだろうか?次第に強者との死合しあいを望むようになったのは


そして三十に差し掛かろうとした時、俺はある噂を聞いた。「神速の剣」を体得した剣豪の噂を

聞くところによれば名門・柳生やぎゅう一門の人間だと聞く

それを耳にしたときから。かの者を斬りたくなり俺は捜した、しかしなかなか見つからず途方に暮れた

ある日だった、その剣豪が江戸の町を騒がせている人斬りを討伐するようにと将軍直々の勅命が下されたのは

かの人斬りとは無論、我の事である。俺は歓喜に震えた、直々に死合を果たす機会がやって来るとは

武神の導きかも知れぬ。かの剣豪を切れと俺に天命が下ったのだ


俺は奴との決闘の場へ赴いた。こうまで心が躍ったのは親父を斬って以来である

父を殺した夜と同様に、決闘の場所は朧な月光に照らされていた。運命を悟らずにはいられない

そして奴は姿を見せた。傘を取ったその姿は俺より歳若い青年であった


「御主…今まで何人その刀で殺めた?」


「百を越えた辺りまで数えてきたが、その後は覚えておらぬ」


「無辜の民を切って捨ておきながら、武士としての呵責は痛まぬのか?」


「否、全く断じてそのような事は無い。刀とは人を切る為の道具、主の腰に差しているのは飾りか?」


「人を切らず人を生かす…活人剣というものを知っておろう?」


「そのような遊戯は人を斬る事に臆病風を吹かれた若輩者の戯言に過ぎぬ。

問おう。おぬしは何人、強さを会得せんが為に人を斬った?」


「無い。それがしが刃を向ける敵は幕府に仇成す者と、帝に弓を引く朝敵以外にござらん」


「成程。我は治世を乱す幕府の敵というわけか…ならば貴様を斬って捨てた後、将軍の首を取るのもまた一興」


「…内なる悪鬼に呑み込まれ、武士の名を汚す外道に堕ちたか。最早、貴様と言葉を交わすのは不要だ」


「無駄口は要らぬ、来い若造!」


「……」


刃の如し殺気を向けられ、刀に手をかける。奴が抜いた直後に斬りつけるそのつもりだった

幾人もの武士を葬ってきた我が目を以てすれば、奴の動作を見抜く事など朝飯前

だが、奴は刀に一瞬のみ手をかけ柄を握った。だが、すぐに離しこちらへ歩み寄ってくる

若造の意図が全く掴めず、俺は困惑する

奴には先程迄の殺気は無い。何がしたいのだ?

怖気づいたか?それとも我が油断を誘い斬りかかろうという腹つもりなのだろうか?

俺は得体も知れない不安に襲われた。このような気分を抱いたのは初めてのことだった


「貴様、勝負を捨てて逃げるか?」


「…もう、貴様に抜く刀は無い」


「何だと?」


「さらばだ。地獄の閻魔様に裁きを受けた後、罪を悔いながら無限獄むげんごくに堕ちるが良い」


「待て、敵に背中を見せるか!」


「……」


静かに奴は立ち去ってゆく、追って背中から一刀の元に切り捨ててやろう。そう思った

しかし、体が動かない。奴の体が逆さまに、そしてとても大きく見える

何があった?判らないそして次に目に入ったものを見て俺は驚愕した

見覚えのある着物を着た誰かが俺の前に立っており股の間から去ってゆく若造の姿が見える。いきなり体が縮んだのか?


「な……に………?」


それは俺の下半身だった。しかしその上にはあるべき物が何も無い

無いはずの上半身そのものは今や俺自身だった。あの若造は柄に手をかけた直後、神速の居合い抜きで俺の体を真っ二つに断ち切ったのだ

あまりにも太刀筋が早く、鋭く、知覚する間も無かった。居合いの達人の抜刀は空駆ける燕も難なく落すと聞く

故に俺は体が両断されたことにも気付かなかったのだ

それを自覚した直後、目の前が急に闇に閉ざされた俺は叫んだ。生まれて初めて無様にも助けを求めた

死にたくない、まだ人を斬っていたい。しかしその叫びは何者の耳にも入らず意識もまた曖昧なものになっていくが、今際の時に遂に俺は悟る


(成程…力が劣ったから、俺は奴の剣に下されたのか……己が定めた武士道を若造如きに証明させられるとは…老いたな……)


俺は静かに意識を手放した。闇の中は案外心地良く何事も考える必要は無い

成程、地獄というのも修羅と化した俺には悪くない場所なのかも知れぬ

この場所で朽ちるのも天命と受け入れ、一介の人斬りとして生きた俺は現世からの忘却を迎え入れる事にした

この作品みたいに時代劇めいた物を書くのは初めてだったのですが

やはり言葉遣いがかなり怪しかったと思います、いかがでしょう?


江戸時代、この頃の時代の大河といえば「元禄繚乱」ですね

予算のかけた関ヶ原合戦、大阪の陣が見所の「葵徳川三代」も中々の傑作だと思います。新人を殆ど使わないベテラン俳優陣で主役、脇役の雰囲気をイメージどおりに固めています

特に津川雅彦氏の家康、西田敏行氏の秀忠はかなりのハマリ役でシリアス、コメディのバランスの取れた脚本で史実以上に二人の魅力を引き出しています。関ヶ原で家康に一矢報いた島津義弘の奮闘も必見ですね

他の時代では「武田信玄」「毛利元就」辺りが面白かったですね

「北条時宗」も終盤の元寇は迫力があり、見ごたえ十分なのですがなんと言うかこの辺りから、脚本家のイデオロギーというかフェミ思想が前面に押し出されたドラマ作りが気になったので、翌年を最後に大河は見なくなりました


近年の作品では「風林火山」の評判が良いので機会があったら視聴したいと思います

ちなみに…今年の大河は全く見てません(笑)

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― 新着の感想 ―
[一言] 拝読させていただきました。 人斬りと武士、両者とも一本筋の通った生き方を貫いているのは見事というか、読んでいて気持ちが良かったです。 特に柳生一門の剣士は物語の後半に出てきたとはいえ、人斬り…
[一言] 最後で二人の武士が二人の生き方を示し、かつ散っていく様はカッコいいと思いました。 特に主人公の人斬りが多くを語らずに剣を交えるところなどは、不器用さと同時に彼の信条をも表しているようで、うな…
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