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明日への系譜   作者: ツキトハクヤ
輝かしい過去よりも
4/9

早すぎる再会もどうだろうか

一話目に書き忘れたのですが、この小説での『ギルド』は簡単にいえば人材派遣会社のようなものです。もつと簡単にいえば、一般的なファンタジー小説のギルドとあまり変わりません。

「全員揃ってるな? んじゃとりあえずこのクラスを担当する岸嶺亘キシミネ・ワタルだ。んーよし、お前が後をまとめろ」


 とりあえず指定されたクラスに到着し、まだ少し眠気が抜けていなかったので適当な席に座り仮眠を取ろうと微睡(まどろ)んでいたら、担当の教師らしき人物が自己紹介を一瞬で終わらせ、多分だが自分の役割を生徒に丸投げした。


「先生、仕事してくださいよ! えっと、私は三期生の米上杏奈ヨネガミ・アンナです。よろしくお願いします。まずは新入生のためにクラス全員で自己紹介をしたいと思います。端からよろしく」


 丸投げされた少女は何度か同じような目に遭っているのか、対応は慣れたものだった。早速どっちが教師なんだか分からなくなりそうだ。

 そして生徒の自己紹介が始まる。正直、思考が定まらないので半分聞き流している様なものだが。


「おれは立花煉タチバナ・レン。二期生だな。ま、適当によろしくな」


「っ!?」


 未だ半覚醒な思考に不意打ちを食らった気分だ。寝耳に水と言い換えてもいい。とりあえず予想もしていなかった事態に思わず声が出そうになってしまった。なんとか堪えたが。

 紫紺の髪を掻き上げたり弄りながら雑な自己紹介を済ませる人物には十二分に心当たりがあった。風間からこの学園にいることだけは聞いてたけど流石に遭遇するのが早すぎる。


「はい、次の人お願いします」


 平常心を保とうと努力する前に俺の番が来てしまったようだ。さっきの衝撃で考えていたことが全部飛んだ。当然、代わりの言葉を考えているはずもなく、


「結木彩人です。一期生なので色々と迷惑をかけると思いますが、よろしくお願いします」


 なんとか当たり障りのない言葉を捻り出せたが、煉の背中は肩を震わせて笑うのを堪えている。

 その後も自己紹介は続いていくのだが、煉の他にもう一人知り合いがいた。もはや風間の嫌がらせと言われても疑問は抱かないだろう。


「先生、終わりましたよ」


「そうか。それじゃあ、このあとはエキシビションがあるから二期生以上は一期生を闘技場に案内してやれ。解散。あ、結木だけ残れ」


 生徒の自己紹介なんて聞いてなさそうだが聞いてたことに失礼とは思うが驚きながら返事を返しておく。これで少なくとも煉たちとの会話の内容を考えられる時間ができた。

 俺を除いたクラスの全員がいなくなると、教師が口を開いた。


「結木、お前にはエキシビションの新入生代表をやってもらう。学園長から直々の指名だ」


「……えっと、新入生代表とは何をすれば良いんですか?」


 聞かされた内容が一瞬理解できなかった。とりあえず風間が俺に嫌がらせをした、ということだけは理解した。


「言葉にすれば楽だな。在校生代表と戦え。出来たら勝て。以上だな」


「出来たらって……それって勝つ必要あるんですか?」


「出来ないのか?」


「それは……まあ、出来ますけど」


「よし、なら絶対に勝て。ボーナスが懸かってるんだ」


「最後の一言でやる気が失せましたよ」


 しかし、どの程度の実力を持った人物が相手なのだろうか。煉たち程だったら手を抜くのは厳しいか。得物を普段使わない物にすれば手を抜かなくても良いかもしれない。

 そんなことを考えていた俺を尻目に教師が教室の外へ出ていき、俺は初めてこの教室を見渡す機会が出来たが、何か感慨が浮かぶ前に重大な事を思い出してしまった。


「あ……俺、闘技場の場所知らないぞ……」


 迷子になって相手が不戦勝と笑えない。前代未聞だろうし、そんなことで後世に伝えられても困る。適当にそこら辺にいる教師に道を聞く他ないだろう。


「まさか、道が分からねぇってオチか?」


「闘技場の場所なんて知るわけがないだろ。それに盗み聞きはどうなんだ、煉」


 先程から扉の反対越しに人の気配がすると思ったら、予想通り煉であった。俺が闘技場の場所を知らないことを予想していたのだろう。俺としても願ったりかなったりなのだが、自己紹介の時に笑っていた恨みは忘れてはいない。


「ドア越しで屈伸してたら勝手に聞こえてきたんだ。仕方ないだろ?」


「なんで屈伸してるんだよ……」


 いくらなんでも理由が酷すぎるだろうが。

 そんな風に呆れていると、姿を表したのはまたも紫紺の髪を弄り、今浮かべているように悪戯っぽい笑みがよく似合う友人――立花煉。


「ま、つまんないことは置いておいてさっさと闘技場に行こうぜ。新入生代表」


 この野郎、他人事みたいに考えやがって……まあ、他人事か。調子よく煉は俺の肩を軽く叩いて先導する。

 先程の自己紹介の時には気付かなかったが、煉の制服はよく見てみれば俺の制服と多少の違いがある。例えば、俺の制服は黒が基調だが、煉は紺色を基調としているし、他にも肩から肩甲骨にかけて花の刺繍が縫い付けてあるなど、地味な改造が施してある。

 改造は一般的にありなのだろうか? いや、する気も起きないが。


「在校生代表ってどのくらい強いんだ?」


「おれよりは弱いな。つか、目ぇ(つむ)っても勝てんだろーな。正直、雑魚だ」


「なら軽く流してもいいか。それにしても久しぶりだな。最後に会ったのっていつだ?」


 俺と煉たちが出会ったのは半年と少し前ぐらいだっただろう。確か俺が単独で風間から指名依頼をこなしていた時に自分達も連れていけ、と無茶を言ってきたのが最初の出会いだった。

 単独でこなすことが前提の依頼だったので、理由をきちんと説明して断ったのだが、とんでもない屁理屈を並べて同行しようとする煉たちに我ながら短絡的だったが遠回しに戦力外と言ってしまい、その時だけは引いたのだが、変な対抗意識を燃やしたらしくその後も絡んでくるようになり、その後ちょくちょく一緒に依頼をこなすようになり今のような悪友に至る。


「半年と少しぐらいじゃね? つっても、おれらはおめー智樹がいなくなってからも三人で色々とやってたけどな」


「……まさかとは思うけど大助と智樹もこの学園にいるのか?」


「応よ。達也に関してはおれらと同じクラスだしな。こりゃ面白くなりそうじゃん」


 ……まさかこんなに早くこの依頼を受けたことを後悔するとは思わなかった。

 なんとか楽しそうな煉に合わせる様に笑っているが、自分でも引き攣っているのががわかる。本当に風間の嫌がらせと言ってもいいくらいに会いたくない人物が揃ってしまっている。


「ま、今は雑魚をぶっ飛ばせ。楽しみにしておくぜ」


 そう言ってどこかへいなくなる煉。どうやらここが闘技場のようだ。


「……」


 王都にあった闘技場がデカいのだが、紗紀も言ってたけど、いくらギルドの直轄でも学園にそこまで立派な物は求めちゃいけないのか……?

 そんな感想を抱きつつも表情には出さずに中に入っていく。中はとりあえず学生が使うには勿体ないと思うくらいには整っている設備だ。どれほどの金を使っているかなんて想像したくもない。想像よりも一桁多く使ってそうで怖い。


「あの、すいません。エキシビジョンの新入生代表ってどうすればいいんですか?」


「ああ、君が新入生代表か。それじゃ、ここを右に曲ってすぐの部屋で時間が来るまで休んでて」


「分かりました。ありがとうございます」


 用意されていた部屋には当然と言うべきか特に何も置いていない。することもなく時間がただ過ぎていく。


『新入生代表と在校生代表はステージに入場して下さい。繰り返します。新入生代表と……』


「ようやくか……あ、武器は何にしよう」


 部屋を出てすぐに見つけた案内図を見てステージの場所を確認する。どうやらステージへ向かう最中に武器を選べるようだが、何にするべきか頭をひねる。

 申し訳ないが煉が雑魚と言ってしまった以上、手加減しないと一瞬で終わってしまう。なので扱い慣れて無い武器が一番なのだが、そこまで癖の強い武器は置いていなさそうだ。それにいくら弱いと言っても在校生代表に選ばれている人物を一瞬で倒してしまい、変に目立つのだけは勘弁だ。


 仕方が無く、あまり使ったことのない槍を選ぶ。訓練目的で作られた木製の槍なので先は潰れ、丸くなっている。これなら死ぬどころか重傷もきっとないだろう。というか一本だけ刃を引いてない剣があったのだが、それはどうなのだろう。主に安全管理の面とか。

 というか、全く笑えない。


『両者が入場します』


 入場口から出ると、あまりの光景に戸惑ってしまった。


 人、人、人。見渡す限り人しかいない。恐らくこの闘技場に集まっているのは入団式にいなかった人もいるのだろう。明らかに入団式よりも人が多い。そしてその全員からの歓声のような声に眩暈めまいを起こしそうだ。

 俺は思った以上の人の多さに圧倒されているが、相手は慣れているのだろうか余裕は感じさせないが適度に力を抜けている。


『両者は位置について下さい』


 向かい合う在校生代表はどうやら剣を使うようだ。俺が槍を持っていることに確認し、少し嫌そうな顔をしていた。なんだか申し訳なく思う。

 確かに射程リーチが違う相手だと戦い難いだろうけど、そこまで露骨に嫌がられると申し訳なくなってくる。

 相手が腰を落とし、構えを取るのを確認し俺も槍を引くように構える。


『始め!』


 先に動いたのは在校生代表だった。射程範囲は槍の方が勝っているのでなんとかこちらの懐に入りたいのだろう。恐らく全速力に近い速度で駆け出す。

 まずは小手調べとして槍を突きだすが、当然相手は難なく避ける。そのまま俺に接近するつもりだろう。しかし突きだした槍を強引に相手の避けた方に振り払う。それに見事に当たった相手は苦しそうに表情を歪めながら距離を取る。


我が敵を破壊しろワガテキヲハカイシロ 岩石の長槍ロックスピア


 在校生代表が地面に手を置き、そこから地面が隆起し槍の形を取る。それが俺に飛んでくるが直線的な動きなので容易に避けられる。


凍りつけコオリツケ


「っ!?」


 なにやら相手が驚いているが、どうしたのだろうか。特になにか変なことをした訳でもないのに。

 地面の上に薄い氷の膜を張り付ける。こすれば相手は転ばないように気を配り全速力は出せないし、地面に直接作用するような魔法は使えまい。


 相手も自分が不利なことを理解してしまったようで半ば自棄になりつつ接近する。流石に転ぶようなヘマはしてくれないが、その動きは転ばないように注意しているせいか先程までより遅い。

 折角なので使い慣れていない槍で攻撃してみようと槍が届く範囲までこちらから接近する。相手はこの機会を逃したらもう勝てないと踏んだのか、走る速度をあげる。


 折角、捨て身の覚悟をしたところなのだろうが、俺も氷の魔法を解除し相手に向かって走り出す。突然、地面の感覚が変わったので不意をつかれた相手に足をかけ相手を倒し、首筋に槍の穂先を向ける。


「参った。降参だ」


『勝者、新入生代表、結木彩人!』


 入場した時より大きな歓声に少しだけ五月蝿いと思ってしまったのは仕方ない思う。槍をどかし倒れている相手に手を差し出す。これで手を取ってくれなかったらどうしようかと一瞬だけ思ってしまったが、幸い、相手はすぐに手を取り立ち上がってくれた。


「いや、強いな。君は」


「ははは、少しばかりか腕には自信があるんですよ」


 そのまま一言二言交わし、元来た入場口へ帰る。


 ……気のせいだろうか、戦っている最中によく分からない強い感情を感じた気がするんだが、一体誰のものだったのだろうか。


ちなみに煉の制服はどう考えても893な感じです。桜吹雪みたいな。あと、わりかしタイトルは適当です。適当に考えたものだったり、微妙に内容に即してたり、キャラの台詞から抜粋する事もあります

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