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AI棒(あいぼう)と行くVRMMO配信 ~外道プレイヤーの邪道攻略~  作者: ジッロ
一章 【配信事故】初心者配信者、ドラゴンを強奪してしまう
8/20

七節

視界がゆっくりと晴れていく。


「……やられた」


息が漏れた。

立っている場所を確認する。


見覚えのある街並み。

淡く光る石碑。

ここは――トマリの街の石碑前だ。


プレイヤーはHPがゼロになると、最後に触れた石碑へ転移する。


つまり、俺は普通に負けたということだ。

現実を理解した途端、さっきの戦闘が頭の中で再生される。


(なんで負けた?)

(戦略はこっちが上だった。攻撃回数も俺が圧倒的に多かったはずだ)

(しかも相手はモンスター戦の直後だぞ?)


それなのに、一撃。

一撃で、この俺がやられた。


腑に落ちないまま、ステータス画面を開く。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

キャラクターネーム:チリアクタ

LV:6

HP:27/55

MP:22/45

攻撃能力:10+15

防御能力:10+15

魔法能力:10

信仰能力:10

抵抗能力:10

速度能力:14+1


装備品

頭:なし

胴:革鎧

手:革鎧

靴:革鎧

武器:ファーストダガー

盾:なし


アビリティ:テイム LV1

ジョブ:レンジャー


スキル:気配遮断LV2

    罠作成

    不意の一撃LV1

パッシブ:なし

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



その瞬間、コメント欄が一気に流れた。


『ステータス低すぎて草』

『レベル1より弱いやん』

『アビリティのせい???』


「俺が……弱いですと?」


思わず眉がひそむ。


「リスナーさん、同じレベル帯のレンジャーだとどれくらいなの?」


問いかけると、視界に滝のようにコメントが流れた。

その情報をまとめると――



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

LV:6 レンジャー基準

HP:100

MP:75

攻撃能力:70

防御能力:60

魔法能力:30

信仰能力:30

抵抗能力:60

速度能力:80

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



俺は堪らず叫んだ。


「なんでこんなに違うんじゃい!!」


コメント欄は即答する。


『ドラゴンいないから』

『加護がゼロの状態やん』

『ドラゴンなしならこんなもん』

『RFOはドラゴンゲーやで』


「ドラゴンの加護……」


理解が追いつくと同時に、力が抜けた。

RFOは『ドラゴンを連れている前提のバランス』で作られている。

ドラゴンがいなければ、ただのモブ以下のステータスになる。


俺は完全に――ハズレを引いたのかもしれない。


視界の端を見ると、視聴者数も減っている。


【視聴者:6】


「うぅ……残ってくれてありがとう……みんなのために頑張ります」


『おう』

『がんばれ』


優しい。

優しいけど、核心は変わらない。


このステータスじゃ、いずれ雑魚モンスターすら倒せなくなる。


「……ドラゴンを奪えば強くなれるのか?

 でもドラゴンテイマー相手に勝てるほどのステータスじゃないし……」


詰みだ。

どうやっても詰んでいる。


考えがグルグル回る中、一つのコメントが光った。


『レンジャーならジャイアントキリングのビルドあるやん』


「……お?」


その一言が脳を刺激した。

俺は即座にジョブツリーを開く。


ジョブツリーとは、“ジョブを強化する専用の育成ルート”だ。

ポイントを使ってステ上げたり、新しいスキルを取ったりして、キャラクターを強くする事ができる。

ポイントはレベルアップと、特殊な敵を倒す事で入手できる。


要するに、このゲームにおる強化要素の一つだ。

蜘蛛の巣のように広がるツリーを表示させる。


その奥に――あった。


【毒攻撃】

【麻痺攻撃】

【睡眠攻撃】


「……これだ」


プレイヤーは序盤、状態異常対策アイテムを持っていない。

モンスターにも、そして人間に刺さるスキル。


だが――


「習得するのは、ツリーの最後か……」


解放には大量のジョブポイントが必要だ。


「コメントさん、クラス1を全開放って何レベルくらい?」


『31』


「は!?!?」


遠すぎる。

このままじゃレベル上げの途中で雑魚にも勝てなくなる。


「……トマリ周辺じゃ経験値が足りない……。

 でも先に進めば死ぬ……」


考えが止まりかけたその時。


(……いや、待てよ)


脳内にひとつの場所がよぎる。


「……あるじゃん。最強の場所が」


俺は走り出していた。



*****



トマリを飛び出し、はじまりの森へ全力疾走した。

スライムを置き去りにするように、足を動かす。


そして森の奥。

そこに、目的の場所はあった。


「はぁっ……はぁっ……着いた……。【ためしの遺跡】……!」


はじまりの森の外れにある隠しダンジョン。

推奨レベルは――36。


序盤で来る場所ではない。

ただ最初から行けるダンジョンとして、配信者がこぞって挑んだらしい。

ただし。そのほとんどは、心を折られ攻略を諦めた。

地獄のダンジョンである。


コメント欄が騒ぎ始める。


『お、おいここは……』

『お、お前まさか』

『やめとけガチで』


そんな声を無視して、俺は入り口の石碑に触れる。


【リスポーン位置が更新されました】


もう逃げ道は無い。俺は腹を括った。


薄暗い洞窟へと足を踏み入れる。


「……俺には、もうコレしか無いんだッ!」


そう呟いた瞬間。


ドガンッッ!!!!


地面が震える。

直後、後ろから巨大な岩が転がって来たのだ。


「うわああああああああ!!!」


死の圧迫が迫る。

一歩遅れれば即死。


ここはそう言う場所。

ためしの遺跡は――“即死トラップの詰め合わせパック”なのだ。


・巨岩

・落とし穴

・飛び出す槍

・針山

・魔法陣の罠

・ムリゲー謎解き


一つのダンジョンでコレほどのトラップ攻略を迫られるのだ。

常人が考えたとは思えぬ構造だ。


だが、クリアすれば大量の経験値。

そしてジョブツリーに使えるポイントが入る。


(もうここしかないんだ!!)


「ためしマラソンやったらぁぁぁあああ!!」


俺は喉が裂けそうな声で叫びながら、死のトラップを駆け抜けた。



*****



――ダンジョン攻略開始から3時間。


挑戦回数、47回。

進んだ距離、8割。


もう大体のトラップの癖がわかってきた。


巨岩ゾーンは左の窪みでやり過ごす。

スイッチ式トラップは最初の床板を踏んでから前へ。

矢トラップはしゃがめば回避。

魔法陣ワープは「左→右→左→左→左→左→右」。

ここまでは問題無い。対応できた。


だが――最後の難関だけは別だった。


広い円形の部屋。

壁に並ぶ十体の甲冑。

中央の机に、十個の箱。

その中には、ルーン文字が刻まれた宝石。


いわゆる“謎解き”だ。


間違えれば目の前の甲冑から即死攻撃。

五分経過で、甲冑が全員動き出して即死攻撃。


「こういうのは苦手なんだよ……!」


宝石の箱にはルーン文字。

正しい組み合わせを選ばなければならない。

時間はどんどん減っていく。


4分、3分、2分――。


「ああもうッ! ええい、ままよ!!」


勢いで宝石を甲冑に押し込んだ瞬間。


ガシャン……。


甲冑の隙間から、黒い触手のようなものが伸びた。

次の瞬間、全身を締めつけられる。


「なんでだよぉぉぉぉぉぉ!!!!」


叫んだところで、大剣が振り下ろされた。

視界が暗転する。



*****



視界が晴れる。

俺はためしの遺跡の入り口で仰向けに倒れていた。


魂の叫びが漏れる。


「ああああああああああああああ

 あああああああああああああああ」


唯一残った視聴者が、淡々とコメントする。


『チリアクタ壊れた』


さらに追い討ち。

『色じゃなくてルーン文字読む。クイズや』


「あの謎解きなんなんだよ!

 わっかんねえよ!

 コメント欄の言ってることはひとつもわかんないよ!

 ルーンってなに!

 AIで自動翻訳される時代に、母国語以外の言語体系なんてゲーム内で見せんなよ!」


叫び散らかし、息を荒げ、ようやく落ち着く。


「……すみません、取り乱しました。

 一旦休憩してきます」


『良い判断』


俺はログアウトを選択した。



【視聴者:3】

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