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策士テイマー&電脳少女〜AIが覚醒した結果、神に狙われるようになったVRMMO配信〜  作者: ジッロ
一章 【配信事故】初心者配信者、ドラゴンを強奪してしまう
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三節

最初のスライムを倒してから、数分。

森の中を歩き続けていると、影が揺れていた。水色の、ぷるぷると震える物体。


「お、二体目か」


剣を抜きながら、ふと思い出す。そうだ、テイムを試さないとな。

接近しながら剣を振るう。一撃、二撃、三撃。反撃はひらりと躱す。

ここまではいい。問題はここからでーー倒しきってはいけない。


HP十パーセント以下まで削り、テイムの発動条件を満たす必要がある。やり過ぎてはダメ。やらなさ過ぎはもっとダメ。……などと、それっぽいことを考えてはみたが。

俺が思いついた解決策はシンプルの極みだった。

しゃがみ込み、剣先を構える。


「ほい」


カンチョウ。

ぷるん、とスライムが揺れる。ダメージの反応。まだ倒し切ってはないないようだ。我ながら天才かもしれない。


「もう一発。ほい!」


その瞬間、視界の端に文字が灯った。

【テイム可】

来た。俺は即座に右手を突き出す。


「テイム、発動ッ!」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【対象を確認】

【存在を測定中】


── 支配可能域に到達 ──


《契約》を許可しますか?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


えらく物々しい画面だ。とりあえず許可、と頭の中で唱える。

光がスライムを飲み込んで——消えた。


【スライムLV1がテイムされました】

【経験値3を獲得】

【ドロップアイテムなし】


「テイムできてんのか……?」


急いでステータスを開く。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【アビリティ名:テイム】


観測者:■■■■■

支配可能階層:A


記録された存在数:1

スライムLV:1


警告:

失われた魂

戻る事あたわず

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


〝記録された存在数〟が、確かに一になっている。

試しにスライムを召喚するイメージを思い浮かべると、すぐウィンドウが浮いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【戦場への再配置】


この魂を呼び戻しますか?


注意:

配置された魂が失われた場合

館から消失します

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


許可。

光が弾けて、さっきのスライムがぽんっと地面に落ちた。


「おぉ」


思わず声が漏れる。スライムは俺の声に反応するように、その場でぴょこんと跳ねた。さっきまでの敵意は、どこにもない。

ただ、小さな液体が、懸命に存在を主張している。


「俺の言葉、分かる?」


震える。肯定しているのか、それとも本能的なものなのか。どちらにせよ、思いのほか賢い。


「帰っていいよ」


声をかけると、スライムは光の粒になって霧散した。さて先へ、と踏み出したとき、視界の端に見慣れない通知が現れた。


『初見です』


「!?」


『モンスターをテイムするアビとか初めて見ました』


配信のコメントだ。いつの間にか視聴者がついていたらしい。慌ててカメラへ向き直る。


「初見さん、いらっしゃい!

 自分も初めて見たアビリティなんで、実験しながら進んでいこうと思います!

 これからもよろしく!」


誰かが見ている、それだけで背筋がしゃんとする感覚がある。不思議なものだ。


『ゴブリンとかテイムしようよ』


「それ、いいっすね」


『スライムのHPは20、ゴブリンは25。

 強いから気をつけてね』


数字まで調べている視聴者に、素直に助かった、と思う。博識的で良識的な視聴者だ。配信主に似たんだろうな。


「マジすか。助かります!」



*****



街の輪郭が木々の向こうに見え始めた頃、草を踏む音とは違う足音が混じった。


「ウギャギャ!」


『ゴブリンでた』


始まりの街トマリを前にした最後の関門——ゴブリン。

一メートルに届かない体躯に緑色の肌、手には粗末な棍棒。見た目は矮小だが、その目つきがじっとりと粘ついていて、嫌悪感が背中をなぞる。


「よーし、スライム軍団、出てこい」


ウィンドウへ許可を出す。光とともに、スライムが三体飛び出した。


「いけ、スライム軍団!

  倒しきらない程度に痛めつけろ!」


三体がゴブリンへ向かって転がり出す。ゴブリンが一瞬、きょとんとした表情を見せる。その隙に、スライムによるタコ殴りが始まった。


「ウギャウギャ!」


悲鳴が聞こえる。ははは、いい気味だ。

これは楽勝では、と思ったのも束の間。

ーーゴブリンが動いた。

そう感じた次の瞬間には、巧みなステップで攻撃をいなし、棍棒を振り回し始めた。スライムが一体、二体、三体と弾け飛ぶのに、三秒もかからなかった。


【スライム×3の魂が消失しました】


スライム弱。


『今度は主やられるで』


振り向いたゴブリンと、目が合った。

ーー怒っている。

当然の反応だ。アレは怒っていい。俺なら怒る。


「まって、ちょっとタンマ!」


ゲームの敵が聞くはずもない。棍棒が唸る音がして、腹に鈍い衝撃が走った。ゲームなのに、という思考が飛ぶ。HPが目に見えて削れていく。


近くで嗅ぐゴブリンの息は、湿った土と腐った草の中間みたいな臭いがした。端的に言うと臭い。ブレスケアを口に放り込んでやりたい。


「タンマタンマ!」


駄目だ、このままでは死ぬ。チュートリアルで死亡なんて、洒落にもならない。

腹を括って、体ごとゴブリンへぶつかる。

突然起き上がった俺の勢いを受け、ゴブリンは体勢を崩して尻餅をついた。

隙が出来た。

剣を抜いて、胸元へ深く突き立てる。


「アギャ!」


細かいポリゴンが散り、ゴブリンが藻掻く。

その瞬間、テイムのアイコンが灯った。


「テーイムッ!」


光がゴブリンを包み、引き込んでーー消えた。


【ゴブリンをテイムしました】

【経験値15を獲得】

【チリアクタのLVが2になりました】

【ドロップアイテム棍棒を獲得】


そのまま地面に座り込んだ。腰が抜けた、とも言う。

ゴブリン、普通に怖かった。スライムとは格が違うな、

コメント欄へ視線が向く。


『ドラゴンのステ補助なかったらゴブリンも強敵w』


笑っとる。


「サイシスPro Maximumリアル過ぎて怖いっすわ……」


『主フルダイブ初??』

『アレはリアル過ぎて現実とごっちゃになるから玄人向けやぞ』


「……まあ、楽しいんでいいんですよ」


息を整えながら立ち上がる。

木々の間から、街の石畳が見えた。


【視聴者:1】

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