表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AI棒(あいぼう)と行くVRMMO配信 ~外道プレイヤーの邪道攻略~  作者: ジッロ
一章 【配信事故】初心者配信者、ドラゴンを強奪してしまう
19/21

十八節

「二人とも順調ですぅ~。

 もうすぐボス部屋ですよぉ~」


珍しくきりんが話しかけてきた。


まあ確かに順調だ。

苦戦することは無く、あいりんのお陰で道に迷っている気配もない。


初めての、まともなダンジョン攻略。

しかし、いまいちその実感が湧かない。


それもそうか。

下準備ができ過ぎている。


これも初ダンジョンにはノーカンだ。


「あいりんさんのお陰で道に迷うこともなかったですね」


俺は率直な言葉を返した。

すると、先ほどまでニコニコとしていたきりんの表情が変わる。


「……リスナーのみんな、ちょっとだけ配信を止めるね」


そう告げたきりんのプレイヤーネームから、カメラのアイコンが消失する。


「ねえ、チリアクタさん」


「な、なんでしょう」


「これって私と貴方のコラボ配信だよね」


「そう……思ってます」


「それなら、このAIの事を話題に出さないでくれる?」


「え?」


きりんの凄味のある瞳が、真っ直ぐに俺を捉える。

蛇に睨まれた蛙の気持ちが、よくわかった気がした。


「……わかりました」


「それなら今回は許すけど、私とこれからもコラボしていく気があるなら、気を付けてね?

 そこのAIが目立っても意味は無いの。

 そいつはどこまで行っても量産されたデータの塊でしか無いの。

 この配信の主役は私。

 そこだけは履き違えないで」


そう告げたきりんは、撫で声での配信を再開した。


この人、オンとオフのギャップが激しいな。

今に気付いた訳ではないが……。

少し怖かった。


あと、さり気無く「これからもコラボをしよう」と言ってなかったか?


まあ俺のように扱いやすい金の卵を手放す訳もないか。


それはむしろ、俺も望むところだ。

何しろ、このダンジョンでは最大の切り札である、ハーヴグーヴァが出せないのだ。


今日のところはダンジョンをクリア。

後日仕切り直しとしよう。


きりんが配信を始めてら、1分もしないうち。

俺たちの前に大きな扉が現れた。


「さあチリアクタさん! ここがボスがいる部屋ですよぉ!」


舞台役者のように、大げさな身振りできりんが言う。


「そうみたいですね。

 前回、おふた……きりんさんはここで負けたんでしたっけ?」


「そうなんですよぉ。

 水系の攻撃をしてくる敵だから、私の魔法が効かなくってぇ……」


「なるほど。

 他にギミックはありませんでしたか?」


「えーっと……」


ボス部屋の前で、きりんからボスについての情報を聞く。

残りHPによって特殊なギミックがあるようだ。

この情報があれば、十分だろう。

きりんからの伝達が終わり、準備はできた。


扉を開けようと手をかけたところで、きりんの様子が気になった。


彼女はハアイの街を出てから、ずっと手ぶらであった。

本気で戦う意思が無かったのだ。


ーーそんな彼女が、大杖を握っていた。


「戦うんですか?」


「なーに言ってるんですかぁ!

 最後のボス戦なんですから、気合を入れなくっちゃ!」


「あ、そうですか」


彼女の思考がイマイチ測れない。


戦ってくれるに越したことは無い。

それに、いちいち掘り下げるのも面倒だ。


俺は重厚な扉に手をかけた。



*****



扉の先には大きな空間が広がっていた。


左右の壁から滝のように水が流れ落ち、それが空間の端を流れている。

壁際を流水に囲まれたこの部屋は、まるで小さな小島のようであった。


ーーその小島の対岸。


一行と向かい合うようにして、ボスは待ち構えていた。


肌は水苔のような深緑色。

背中には亀のような甲羅を持ち、

それ以外の部位は両生類のようにヌメリけのある質感。

鳥のようなクチバシを持ち、

頭のてっぺんには大きな皿を被っていた。


【-海辺の主-ネックLV23】


「カッパじゃねえか!!」


思わず口に出してしまった。

いや、仮に俺じゃなくてもそう言わざるを得ないだろう。


実物を見た事は無い。

しかし、どこをどう見ても日本古来より伝わるカッパそのものである。


「キョキョキョキョキョ……」


カッパは不気味な笑い声を響かせながら、片手をこちらへ向けてくる。


「魔法攻撃くるよ!」


きりんが声を張る。

直後。

ネックから水の玉が生み出され、俺めがけて発射された。


ーー躱しきれない


そう悟った俺は、即座に館への入り口を形成。

ゴブリンナイトを前方へ展開した。


「ウギャウギャウギャー!」


ばちゃり、と大質量の水が、ゴブリンの大楯に阻まれる。

さすが俺のナイト。

いつ呼び出しても頼りになる。


不意の一撃で面食らったが、敵も唐突に飛び出たゴブリンナイトに驚いている様子だ。

こちらも事前の打ち合わせ通りに動くとしよう。


「散開!!」


俺の声を皮切りに、あいりんと俺が左右に分かれて動く。

それと同時にきりんが詠唱を始めた。


「水の竜がここに在り。

 命を運ぶ水。

 集めて成すは竜の吐息。

 アクアサイ!」


きりんの前方に、大きな水玉が出来上がる。


それは大きな津波となってカッパを飲み込んだ。


魔法系のクラス2ジョブ。

ウィザードが使える魔法の中でも、最大の攻撃範囲を持つ魔法だ。


水の量、勢い、共に強力。

しかしながら、水棲系のネックにとっては、そよ風も同然。

波が消失しても、全く傷ついている様子は無かった。


ただ、この魔法の意図は攻撃には無い。

波が引いたのと同時にゴブリンナイトはヘイトタンカーを発動。


ネックの意識から、俺とあいりんは完全に消しさられた。


ーーやるなら今。


機は熟した。

俺は印を発動。

巻物ウィンドウを展開した。


あのカッパ野郎にとっておきをくらわせてやる。


俺の準備ができたのを見計らい、あいりんの瞳が揺れ動き始める。

人には成せぬ御業が、ここに顕現する。


【あいりんからメッセージが届きました】

【件名:ーー・・---・--】


そう、これこそ、AIだけが可能とする高速ネット閲覧&高速メッセージ飛ばし。


俺が調べられないなら、あいりんにやってもらえば良いのだ。


あいりんから送られたルーン文字をそのまま巻物へと記す。

すると、ウィンドウがポリゴンとなって消失。

俺の体に吸収された。


【忍術:一撃一閃が発動しました】


レンジャーで使っていた不意の一撃の強化版。

威力補正は1.3倍である。


俺はこの作戦を、ボス部屋に入る前にあいりんと打ち合わせていたのだ。


ぶっつけ本番になったがーー


賭けには勝った。


そもそも、あいりんはきりんの所有物だ。

俺の頼みを聞いてくれるか不安ではあった。


しかし、AIのロジックには未だに穴が多い。

オーナーの不利益にならなければ、ある程度は部外者の言うことも聞いてくれるようだ。


彼女達に所有物としての自覚があるか分からないが。


さあ、まだまだいくぜ。

俺は再度、巻物ウィンドウを開く。

すると、また通知が届く。


【あいりんからメッセージが届きました】

【件名:・・・・ー・・ーーー】


【忍術:麻痺付与が発動しました】


【あいりんからメッセージが届きました】

【件名:・---・--・・・】


【忍術:毒付与が発動しました】


【あいりんからメッセージが届きました】

【件名:ーー・--・・・・】


【忍術:身体強化・烈が発動しました】


合計4つの強化忍術。

忍者ジョブつえーじゃねえか!!!!


俺の脳内を、興奮ホルモンが駆け抜ける。

ダガーを握る手に、力が籠る。


滾る力を携えて、あいりんとともにネックの背後をとった。


「くらえ、カッパぁぁぁああああああ!」


閃。


俺とあいりんの渾身の攻撃が、ネックの首元を捉えた。


「キョー……!」


ネックは大きく金切り声をあげた後、その場に倒れこんだ。


【-海辺の主-ネックLV23】(麻痺・毒)


麻痺によって動きを制限できているが、ポリゴンになっていないところを見ると、まだネックのHPは残っている。

俺は声を張り上げる。


「やりきるぞ!!」


その声にはっとしたのか、きりんもこちらへ駆け寄ってくる。

そして、俺たち4人は、地に伏したネックをタコ殴りにする。


麻痺による行動制限は5秒間。

それまでにこいつのHPを削り切る。

5、4、3、2……。


残り1秒を残し、ネックの体は光の粒となって消失した。


【ネックを倒しました】

【経験値1020を獲得しました】

【ドロップアイテム:水精の殻、水精の頭髪×3、水精の皮膚】

【ダンジョンボス討伐によりジョブポイント15を獲得】


「や、やったーー!!」


リザルト画面を見たきりんが、真っ先に声を上げた。


【視聴者:56】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ