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神よ俺がテイムしてやろう〜その者VRMMO配信の果てに覚醒す〜  作者: ジッロ
一章 【配信事故】初心者配信者、ドラゴンを強奪してしまう
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十二節

ワーウルフへと近づいて行く。

すると、狼男は鼻をひくつかせながら、こちらを視界に捉えた。


「おい、デカ狼。

 新戦術の実験台にしてやるから、感謝しろ」


「グルルルゥ……」


低く唸りながら、こちらを睨みつける。怒っている。何となくそう感じた。

ーー言葉が通じてる?

まあゴブリンですら言葉を理解している。エリアボスなら十分あり得るか。


俺と狼は、横へ横へと円を描きながら歩き続ける。

剣の達人同士が向かい合うように、静寂が俺たちを包み込む。

先に動いたのは俺だった。


「くらえ新技、ゴブリンカタパルト!」


叫ぶのと同時に、狼男の側面が発光する。次の瞬間。


「ウギャギャギャギャ!!」


ーー光の穴から、鋼の弾丸が射出された。

否、それは弾丸では無くゴブリンナイト。

射出されたその刃がワーウルフの頬を掠める。

そして激突音を響かせ、大地に突き刺さった。


「ありゃ、狙いがズレたな」


……外れてしまったようだ。

ただ大きなクレーターが出来ている。

威力は申し分無いな。よし。

一応補足すると、コレは館内の生物を高速移動させ、そのまま射出。ゴブリンを弾丸として打ち出す新技である。

いい発想だと思ったんだが……狙いが難しいな。まあ、切り替えは大事だ。


「次だ! ゴブリンナイト、ヘイトタンカー!」


ゴブリンナイトがゆっくりと立ち上がる。ひょろひょろとした動きだ。


【ゴブリンナイトがヘイトタンカーを発動しました】


目を丸くしていたワーウルフ。

しかし、ヘイトタンカーによって視線を奪われる。

鋭い爪がゴブリンナイトの首を跳ね飛ばさんと、加速する。


「グルワァァアアア!!」


「ウギィィヤヤヤヤ!!」


盾が爪を受け止める。

衝撃波が空間を駆け抜けた。

これまでのモブでは感じられなかった圧倒的な威圧感。サイシスによって現実レベルにまで引き上げられた光景が巡る。


怖い。めっちゃ怖い。

ほんと、前線を任せられる奴がいて良かったよ。

俺は心の中でゴブリンに感謝しつつ、ワーウルフの脇腹目掛けてダガーを振り抜く。


【不意の一撃】【特殊攻撃・毒】


二つのスキルを同時に叩き込んだ。ワーウルフが苦悶の表情を浮かべて後退する。


「不意の一撃は1.2倍の威力上昇に加え、

 特殊攻撃の成功率を1.4倍にする。毒も入ったでしょ」


俺の読み通り、ワーウルフの個体名の横に毒の表示が追加された。

しかしワーウルフもやられるだけでは無い。

攻撃を受けたことでヘイトが切り替わる。

殺意の混じった双眸が、今度は俺を捉えた。

こっわ! モンスターの前に立つの怖い!


俺は迷う事無く反転。気配遮断を発動させながら走り出す。

しかしヘイトはすぐには切れない。ワーウルフが口を開くが。


「ウギャ!!!」


誉高き騎士は、主人へ牙を向ける事を許さない。

たとえそれが、自分を弾丸として打ち出した人でなしであっても。


ガキン!


固いもの同士がぶつかり合う甲高い音が響いた。

またしても盾がワーウルフの牙を防ぐ。


「優秀! 絶対解雇しない! ずっと使ってやる!」


それがゴブリンにとって良い事かは知らない。

が、とりあえず永久雇用の名誉をやろう。

俺はアイテムポーチからファーストウィップを呼び出す。


「アイヤッ!」


【鞭操術】


10秒間鞭を自在に操るスキル。鞭は生き物の様に動き始め、ワーウルフの左腕へと巻き付いた。もがく隙を逃さず追撃を加える。


【特殊攻撃・麻痺】


麻痺は毒と比べて発生率が圧倒的に低い。

しかし幸運は俺を選び続ける。

ワーウルフが体を痙攣させ始めた。


【ワーウルフLV16】(麻痺・毒)


思わず笑みが溢れる。麻痺の発生率は2割程度だが、まあ確定みたいなもんでしょ。

俺は痙攣し続けるワーウルフを切り刻む。

刻んで。

刻んで。

刻んで。

10回に届く前に、ワーウルフはポリゴンの塊となって弾けた。


【ワーウルフLV16を倒しました】

【経験値560を獲得】

【ドロップアイテム:狼男の爪、狼男の牙×2】


程よい緊張感があって楽しかったな。

ふとゴブリンへ視線を移す。


「ウ、ウギャ……」


息も絶え絶え、辛うじて立っている感じだ。


「あ、なんかごめんね」


流石に可哀想になってきた。ゴブリンを館にしまう。

館内にいる間は消費型ステータスが回復する。

休ませれば問題ないだろう。


俺の足はハアイへと向かった。街の入り口には門があり、装備を着て槍を携えたNPCが門番をしている。

ただ、その門番に不可解な点があった。


「おい、お前!

 通行許可証か身分証を提示しないと中には入れないぞ!」


「…………」


「なんだ、まさか無くしたのか?」


「…………」


「聞いてるか?」


「あ、すみません。今出しますので」


そう答えつつ、ステータス画面を操作。

このゲームでは、ギルドカードが身分証の役割を果たす。


「あぁ、冒険者か。

 お前、大きな街は初めてか?」


「えぇ……」


「ハアイ位の街になると身分証が無いと入れんからな。

 無くすんじゃないぞ」


門番は俺を見送る。

俺は驚きを隠しきれないままに、その場を後にした。

改めて、門番の方へと向き直す。

その頭上には、NPCを含めたモブに発生するアイコン。それと……。

俺はしばらく驚愕の眼差しを外せなかった。


【視聴者:11】



*****



ハアイの街、ニョルズの石碑にて。

一人のプレイヤーが、その場にへたり込んでいた。


「えーん、またやっちゃったよぉ」


わざとらしく、されど愛嬌のある声で、女は感情を吐露する。

ツバの大きな帽子に意味深な大杖、くるぶしまで届くローブ。魔法を武器とするキャラメイクと主張していた。

しかしローブの中は、リボンやフリルで彩られた服。


見方によっては、お姫様とも形容できる出立ち。

スカートの丈は必要以上に短かった。

それは彼女の趣味というより、リスナーのための装飾だ。

頭上のプレイヤーネームの横にはカメラのアイコン。

ーー彼女はゲーム配信者であった。


「難しいよぉ。私センス無いのかなぁ……」


リスナーからコメントが届く。


『きりんちゃん頑張れ!』『諦めないで』『応援してるよぉ』


信仰にも似た妄信の域にある声援。

その中で、演出の異なる一つが流れた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【ズンズンさんからスーパーチャットが届きました】

10,000JPY

『きりんちゃん、コレ装備代にして』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


目の色を変えた女が、カメラへ満面の笑みを向ける。


「きりんりんりん♩ スーパーチャットありがとう! ズンズンさんのお陰で元気出たよぉ」


立ち上がり、服を払う。


「今日はコレで終わりますぅ。

 次も【海辺の洞窟】攻略に向けて頑張るので応援よろしくぅ!

 次も観てねぇ〜ん!」


カメラの表示が消える。同時に、笑顔の仮面も外れ落ちた。

真横へ視線を向ける。そこにはもう一人の少女がいた。


ーー表情は無い。

顔の作りは女配信者と瓜二つ。

しかしその無表情さから、二人が全くの別人と推し量れた。


軽装の防具と刃の短い獲物。

レンジャー系統のジョブだ。

ただ、肌の露出面積が圧倒的に広い服装だった。


きりんは無言のまま連れの手を引く。真っ直ぐに街の裏路地へ向かった。

人目の無い場所。そこで黒髪を揺らし、周囲を確認してから口を開く。


「ねえ、此処に来てから何日目?」


声には、明らかな怒りが滲んでいた。

自分のアバターとは“双子の姉妹”という設定で作った顔に向けて、続ける。


「マジで使えないんだけど。

 あんた立ち回り下手過ぎない?」


軽装の少女は問いを認識。

自身の機能を元に、答えを演算、出力した。


「オーナー、きりん。まずは謝罪を行います。

 申し訳ありません。私の立ち回りについては………」


「アンタの長ったらしい説明はもう要らないっての!

 私は後衛、アンタは前衛!

 その仕事をしろって言ってんの!」


「端的に述べられず申し訳ありません。

 ただ私のジョブはシーフであり、役割は中衛に……」


バチン。


乾いた音が響き、きりんの平手打ちがその頬を叩いた。


「クソうぜえ! 黙って盾になってりゃいいだろ!」


「しかし【シャドウドラゴン】のアビリティを持つ私の最適解は……」


バチン!


今度は体勢を崩すほどの衝撃だった。

パーティーを組む二人の間ではダメージが発生しない。非戦闘地域での暴力行為にもならない。誰も止めないし、そもそも見ていない。


きりんは感情の爆発を抑えられなかった。

倒れ込んだ少女の腹を蹴る。

二度、三度、四度。

それは止まる事無く続く。


「お前が! 何のアビリティとか! ジョブだとか! 言い訳するから! 木偶の坊は黙って言う事を聞け!」


それとは対照的に、少女は何も言わない。抵抗もしない。

今オーナーが求めているのは、問いへの解では無いと理解したからだ。


蹴られようと罵倒されようと、自分は主人が求める回答を返し続ける存在で無くてはならない。


そうで無ければ、自分が存在する意味はない。

AIの少女は、地に臥しながらも、主人の欲求を満たし続けた。

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