十節
最初の攻略から約15周目。
そこに来て俺の眠気が限界を迎えた。
ダンジョンの入り口に戻って来たところで、サイトウが口を開く。
「アクタ、よくやった方だ。目標には届いているだろう。レベルとポイントは幾らになった?」
サイトウに促されてステータスを開く。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
キャラクターネーム:チリアクタ
LV:39
HP:210/210
MP:200/200
攻撃能力:43+15
防御能力:43+15
魔法能力:43
信仰能力:43
抵抗能力:43
速度能力:50+1
アビリティ:テイムLV1
ジョブ:レンジャー
ジョブポイント 2190
スキル:気配遮断LV3
罠作成
不意の一撃LV1
パッシブ:なし
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「レベルは39。ジョブポイントが2190です……」
「クラス1のジョブツリーは1650でカンストする筈だ。
おめでとう、目標クリアだな」
サイトウに相槌を打ちつつ、ステータス画面のアビリティ項目をタップする。
――――――――――――――――――
【アビリティ名:テイム】
観測者:■■■■■
支配可能階層:A
館に記録された存在数:5
ゴブリンLV31【レベル上限】【存在進化可】
ハーヴグーヴァLV34
ハーヴグーヴァLV33
ハーヴグーヴァLV32
ハーヴグーヴァLV31
警告:
失われた魂
戻る事あたわず
――――――――――――――――――
はわわわ。
ダンジョンボスが4体もテイム枠にいますぅ。
コレってこの辺りじゃ無双できるんじゃあないですかぁ。
どうしましょう〜。
初心者狩尽くす?
はわわ〜。
ダメだ。眠気で思考が終わっている。
まだサイトウが目の前にいる。
もう少しロールプレイに徹しなければ。
「本当にありがとうございました……」
「ハアイの一つ次にあるクラヨシと言う街に、仁義必果会の拠点がある。
そこまで行ったらクランメンバーに挨拶すると良い。
気の良い奴らばかりだが……ただアイツら頭のネジが飛んでるからな。賭けだけはするなよ」
「賭けに乗ったらどうなるんですか?」
「俺の様になる」
「き、気を付けます」
そうしたやり取りを得て、俺はためしの遺跡を後にした。
*****
私の名前はpsy10。
配信者業界ではそこそこ名の知れた人間だ。
今は配信者仲間との禊により、お勤めを全うしているところである。
チリアクタと言う珍妙な名前をしたプレイヤーが遠ざかっていく。彼は特殊なアビリティを有していた。
【テイム】
今まで聞いた事のないアビリティだった。
これまでもエクストラアビリティは幾つか観測されてきたが、彼ほど特殊な能力を持つプレイヤーはいなかった。
俺のテュールを例に挙げると分かりやすい。
強さに直結したものではあったが、あくまでゲーム性とのバランスを加味されていた。
しかし彼のアビリティは違う。
他人のドラゴン、強いてはアバターの能力そのものを脅かす存在になり得る。
ーー何故そんなモノを実装したのか。
RFOの運営に疑念が芽生える。
このゲームは確かに売れてはいるものの、ゲームを売るという目的よりも他の目的で運営されているような……。邪推か。
「テュール」
思考を切り捨て、私は相棒の名を口にした。
私の右手は炎に包まれた後、龍の姿へと形を変える。
中型犬ほどの大きさに真紅の身体。所々に鎧を纏った小さなドラゴンが現れ、私の肩に留まった。
角の付け根を撫でてやると、ご機嫌そうに目を細める。
もし騙りのバングルを装備していなければ、チリアクタの視界には俺の左腕からテイムマーカーが出ていたのだろう。
彼は好青年ではあるが、念には念だ。
私はゲーム内の音声通話でクランマスターへ連絡を入れた。
「うーすっ! サイトウさん出所されたんですか?」
「いや、あと6日ほど掛かりそうだ」
「へえ、じゃあまた今度!」
「まてまてまて。大事な話だ。例の新人の話がある」
「あー、あの登録者二人の」
「彼のアビリティが特殊でな。
他人のドラゴンを奪えるアビリティを持っている。
騙りのバングルで防げるようだから、一定の信頼を置ける様になるまでクランで装備を義務付けてくれ」
「まーったく。サイトウさんはいつも面倒事を拾ってくる」
「その面倒事でいつも数字伸ばしてるのは誰だ?」
「いつも感謝してます。シェイシェイです」
好青年ではあるが隙を見せないように、とだけ念を押して通話を切った。
チリアクタは情報取得にムラが多い。
どう転んでも面白い展開しか思い浮かばない。
「俺も配信者だな」
そう呟いて、私はテュールと共にダンジョンの中へ歩いて行った。
*****
サイトウと別れた翌日。俺は宿屋で目を覚ました。
ゴブリンのステータスに存在進化可の文字が出ている。
調べても情報は見つからない。
テイムのオリジナル機能なら、試してみるしかない。
進化先は四つ。ゴブリンナイト、ゴブリンソルジャー、ゴブリンシーフ、ゴブリンソーサラー。
ハーヴグーヴァが四体いる時点で火力は足りている。
俺のジョブを活かすなら、目の前に盾を張ってくれるタンクがいた方がいい。
迷わずゴブリンナイトを選んだ。
装備品一式を入手し、進化が完了する。
光に包まれて、ゴブリンは姿を現した。
フルメタルアーマーを着込んだ、凛とした佇まい。
「鎧着ただけ?」
「ウギャ」
「まあお前が一体だけ残ってるゴブリンだ。期待してるぞ」
「ウーギャ、ウ、ウギャ!」
イエス、マイロード。そう言いたげな口調でゴブリンは返してくる。
進化とはモンスターを強化できる機能だと分かった。
今はそれで良しとしよう。
俺は期待に胸を膨らませながら宿屋を後にした。
【視聴者:0】




