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神よ俺がテイムしてやろう〜その者VRMMO配信の果てに覚醒す〜  作者: ジッロ
一章 【配信事故】初心者配信者、ドラゴンを強奪してしまう
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九節

ためしの中に入ってからのサイトウは、配信画面で見せた華麗な体捌きを披露してくれた。的確に罠を避けていく。

俺はその後ろをトコトコ歩いて行くだけ。今までの3時間は何だったのだろう……。


まあいいか。

俺がやりたいゲームは、即死トラップと鬼畜謎解きの脱出ゲームではないのだ。サイトウさんに全部お任せだ。

あっという間に甲冑部屋にたどり着いた。


「一番楽なところだな」


そう呟きつつ、彼は宝石を的確に投げ入れて行く。時間にして10秒ほど。俺があんなに苦戦していた謎解きをあっという間に解いてしまった。


「アクタ、君はここで何時間くらい躓いていたんだ?」


「2時間くらいですかね」


それまで前しか向いていなかった彼が、振り向いてきた。


「それは凄いな。

 俺はトラップ群を掻い潜るのに丸1日かかった。

 甲冑の謎解きは3回目で解いたがな」


「そっちの方が凄いですって。

 俺は弾幕ゲーとか音ゲーとか得意なので」


「ゲームはいいよな。

 心が踊るし、洗われる……。早くここから抜け出したいよ」


その言葉は、心からゲームを思う人間のものだった。あまり人と関わらない俺だったが、そう感じられるほどに彼の表情は物語っていた。

しかし、そうなると疑問が浮かぶ。


「そもそも、どうしてここでレベル上げを?」


「……賭けに負けて、ここに幽閉された。

 ちなみに賭けの相手はクランメンバーだ」


「めちゃくちゃペナルティ重くないですか」


「配信者なんてそんな物だ……。

 おかげで登録者が5万人減ったがな」


サイトウが遠い目をしている。このダンジョンが相当キツかったのだろう。


「ところでアクタ。このゲームは楽しいか?」


「めちゃくちゃ面白いです。神ゲーですよ」


「そうか。ありがとう。お陰でもう少し走れそうだ。

 具体的には、あと105周……」


「うわぁ……」


俺たちが会話をしながら歩みを進めると、廊下の最奥に巨大な門が現れた。この奥にはダンジョンボスがいる。


「ここのボスってギミック系でしたよね」


「あぁ、15分経過で特殊な槍が出現する」


俺の言葉を遮るようにサイトウは門を開き、部屋へと侵入する。


「え、ちょっと!」


ボス部屋にいたのは、大きな鯨のようなモンスター。


【-濃霧の幻-ハーヴグーヴァLV36】


霧を利用して襲ってくる無法な攻撃方法と、物理攻撃を寄せ付けない霧の身体を持つ難敵だ。時間経過で出現する特殊な槍を使い、倒すのが定石とされる。

だが、ギミックさえ解ければ低レベルでも攻略可能だ。だから俺もやって来た。

空中を漂う鯨に、サイトウは相対する。


「俺も最初は銛で戦っていたが、今はこの方が早い……」


サイトウは右手を突き出した。


「テュール」


その言葉を唱えると、サイトウの腕が炎に包まれる。炎は燃え上がり、熱風が部屋中を駆け抜けた。俺は吹き飛ばされないよう、踏ん張るだけで精一杯だ。


炎に包まれた右腕が消失。

炎そのものへと変化していく。

それはサイトウの左手の中に収まり

ーー右腕が無くなった。

同時に、一振りの剣が現れた。

太陽の様な輝きを纏った灼熱の剣。


炎の剣を携えた彼は、それを大きく振りかぶる。

そして、ハーヴグーヴァ目掛けて投擲した。

猛々しい炎と異質な速度を纏った剣が、空を漂う鯨に激突する。直後、天地がひっくり返ったかと錯覚するような衝撃と爆音が鳴り響いた。


「うわぁぁぁあああ!!!!」


半狂乱。

視界を埋め尽くす光、肌に違和感を覚えるほどの熱。それら不意に叩きつけられた俺は、無様に声を上げる事しかできなかった。

数秒とも数十秒とも思える時を得て、ようやく光は収まった。


【ハーヴグーヴァを倒しました】

【レベルが7になりました】

【レベルが8になりました】

【レベルが9になりました】

【レベルが10になりました】

【レベルが11になりました】

【レベルが12になりました】

【レベルが13になりました】

【レベルが14になりました】

【レベルが15になりました】

【レベルが16になりました】

【ドロップアイテム:霧掴の銛、霧鯨の皮×3、霧鯨の頭蓋】


リザルトを確認した後。俺はサイトウに詰め寄った。


「あんなに派手なエフェクトがあるなら先に言ってください!

 ゲームで死ぬかと思いました!」


「悪い。加減がわからなかった」


まあ、ずっとソロプレイですものね。俺はそれ以上は口にしなかった。


「サイトウさんもエクストラアビリティなんですね」


「ああ。テュールだ。北欧神話の軍神の名を冠している。

 特異性が無いから、そこまで自慢できる物でもないさ」


「いやいや。

 シンプルに強そうで羨ましいですよ」


テイムできる類の力だったら、今ここでサイトウを刺していたところだ。サイトウにテイムアイコンが出ないものか。そう考えて、何度か視線を動かしてみる。

先にサイトウが口を開いた。


「ところで鯨野郎にはテイムマーカーは出ていたか?」


テイムの事を完全に失念していた。何しろ目の前で唐突に爆発が起こったのだ。

記憶を辿る。


「マーカー、出てましたね」


「次はHPを調節しながら倒すとしよう」


俺たちは部屋の最奥へ歩みを進めた。

大きな青いクリスタルに触れると視界が暗転し、ダンジョンの前へと戻っていた。


「あの……。サイトウさんが良ければ今日1日、付き合っても良いですか?」


俺の言葉にサイトウは目を丸くする。


「良いのか?今日がRFOの初日なんだろう」


「なんか……。

 サイトウさんがずっと一人で遊んでるのが可哀想というか……」


サイトウは少し無言になる。目を瞑り、天を仰ぐ。


「そうか。君はいい奴だな。是非ともお願いしたい」


まあ正直なところ、ここをマラソンする以上に効率の良いレベル上げは無い。

ーーそれに、あのアビリティだ。

もしかしたら何かの拍子にテイムマーカーが出現するかもしれない。奪える機会があるなら奪ってみたい。


「チリアクタ。これからもよろしくお願いしたい」


サイトウが手を差し出してくる。


「コチラこそです! あ、アクタで大丈夫ですよ」


俺は彼の手をとった。


【視聴者:13】

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