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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season10 ― 言わなかった後悔、言わなくてよかった光 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season10 ― 言わなかった後悔、言わなくてよかった光 ―
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第4章(後編) 揺れる職場 ― 消された声と浮かび上がる影 ―

アストリア内で“美乃(よしの)への疑い”が

想像以上の早さで広まっていったのは、

その日の午後のことだった。



◇◇◇



美乃(よしの)、一時的に“自宅待機”



「課長には……しばらく自宅待機をお願いしたい」


統括部長・長岡(ながおか)の硬い声が

会議室に重く落ちる。


(しゅう)は眉を寄せて言葉を選んだ。


長岡(ながおか)部長。美乃(よしの)さんは──」


「わかっている。

 彼女がそんなことをするはずがない。

 だが、表沙汰になればもっと大ごとになる。

 いまは……この対応を取るしかない」


長岡(ながおか)も苦しんでいた。


(たまき)は、その声を聞いて胸がきゅっと締めつけられた。


(なぎ)は静かにうなずく。


「……僕らが証明します。

 美乃(よしの)さんがやっていないことを」



◇◇◇



■ 調査拠点の準備



アークシステムズの3人は

アストリアの会議室ひとつを

“臨時調査室”として借り受けた。


持ち込んだノートPC、サーバログ解析ツール、

(なぎ)の“特殊なソフトウェア”が机の上に並ぶ。


(たまき)、悪いけどカフェテリアでコーヒー買ってきてくれ。

 長丁場になりそうだ」


「はい!」


(たまき)(かんざし)を整え、トコトコと廊下へ出た。



◇◇◇



■ カフェテリア ― 噂と本音



エレベーターを降りてカフェテリアに入ると、

ざわ…ざわ…と落ち着かない空気が漂っていた。


「課長、マジでやったのかな……」

「いや〜あれは黒だろ……」

「管理職としてありえなくない?」


胸の奥がズキッと痛む。


(たまき)は、その声から距離を置こうと

カウンターに向かいかけたとき──


美乃(よしの)さんがそんなことするわけないでしょ!」


ピシッという鋭い声が聞こえ、振り向いた。


深見(ふかみ)菜摘(なつみ)

若月(わかつき)(みなと)

片倉(かたくら)陸人(りくと)──

新システムプロジェクトメンバーの3人が立っていた。


菜摘(なつみ)が険しい顔のまま言う。


美乃(よしの)課長の仕事、見たことないの?

 細かいミスも絶対しない人なのよ?」


(みなと)も眉を吊り上げる。


「まじで納得できない。

 課長ほど真っすぐな人いないって」


陸人(りくと)は腕を組み、低く言う。


「必ず裏がある。

 美乃(よしの)さんじゃない……絶対に」


(たまき)は思わず、3人に近づいた。


「す、すみません……!

 少しお話、聞かせてもらってもいいですか?」


3人は驚いたように(たまき)を見る。


「あなた……アークシステムズの?」


「はい。如月(きさらぎ)(たまき)といいます。

 美乃(よしの)さんが……大切な人なんです」


その言葉に、菜摘(なつみ)の表情がゆるむ。


「そっか……。

 あの人、ほんとに誰からも慕われてるんだな……」


(たまき)は小さく頷いた。


すると(みなと)が声を潜めた。


「……ひとつ、気になることがあるんです」


(たまき)の探偵モードがオンになる。


「気になること……ですか?」


(みなと)が続ける。


末松(すえまつ)(がく)……あいつ、最近やたら夜遅くまで残っていて……

 徳山(とくやま)部長に呼び出されて、サーバー室に行ってるの、何度か見たんです」


菜摘(なつみ)が言う。


「たぶん、なにか“消した”か、なにか“書き換えた”か……

 そんな空気でした」


陸人(りくと)も頷く。


「課長のIDを使える立場……末松(すえまつ)しか考えられない」


(たまき)はすぐに手帳を取り出し、

落ち着いた声で言った。


「もっと詳しく教えていただけますか?」



◇◇◇



(たまき)、情報を(たずさ)えて戻る



コーヒーの紙袋とメモがいっぱいの手帳を持って

(たまき)は会議室に戻った。


ドアを開けると、(なぎ)がすぐに顔を上げる。


(たまき)さん、おかえり……ってその顔……

 なにか掴みましたね?」


(しゅう)(たまき)の手帳に目を向ける。


(たまき)は大きく頷いた。


「はい。美乃(よしの)さんのことを信じている社員がたくさんいて……

 その中に深見(ふかみ)さんたちがいて、話を聞きました」


(しゅう)が少し微笑む。


(たまき)、ありがとう。話してくれ」


(たまき)は深呼吸してから言った。


「……末松(すえまつ)さんです。

 末松(すえまつ)さんだけ、徳山(とくやま)さんに呼ばれて

 サーバー室に何度も行っていたみたいです。

 夜遅くまで残っていたのも、何度も」


(なぎ)が眉を上げる。


「……やっぱりか」


(しゅう)の声が低くなる。


(たまき)、よく聞いてきてくれた。

 それ、重要な情報だ」


(たまき)は胸に手を当てて言う。


美乃(よしの)さんのこと……守りたいんです。

 だから……」


(なぎ)が笑い、(しゅう)が頷く。


(たまき)さん、僕らだけじゃ届かないところを

 ちゃんと拾ってきてくれましたね」


「ほんとにな。

 これで……道が開けるかもしれない」


そして──


3人の調査は

“犯人の影”をじわじわと浮かび上がらせ始めた。

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