第1章 ① ―美乃のモノローグ―
「告げなかった想いは、あなたを光へ導いた」
◇◇◇
失う前に、想いを伝えられたらよかったのかもしれない。
でも――私は言わなかった。
言えなかったのではなく、言わなかった。
柊くんは、いつもまっすぐで、
不器用なほど誠実で、
自分の心よりも周りの誰かを優先してしまう人だった。
そんな彼が、誰かを「大切だ」と言ったとき、
その瞳の奥に宿る光は、
かつて私が見たどんな光よりも美しかった。
あのとき気づいてしまったの。
――あぁ、この人は、もう私の知らない“未来”を手にしているんだ、と。
だから私は、言わなかった。
後悔がなかったと言えば嘘になる。
けれど、言わなかったからこそ、
彼は“その子”の手を離さずにいられたのだと思う。
もしあの時、私が想いを告げていたら……
柊くんはきっと応えようとしただろう。
優しい人だから。
でもその優しさは、ときに誰かの“光”を曇らせてしまう。
だから私は彼の未来に触れなかった。
触れずに終えることを選んだ。
その選択をして初めて、
私は自分の後悔を受け止められたのかもしれない。
今こうして、彼の隣にいる女性を見て思う。
――よかった。
この人に、柊くんは救われている。
この人こそ、彼の光だったんだ、と。
私が言わなかった想いは、
消えるどころか、静かに形を変えて
“祝福”になっていた。
だからこそ、あの子に伝えなくてはならない。
あのまっすぐな瞳を持つ、やわらかい女性に。
「あなたの手、離しちゃダメよ。
彼は、あなたがいないと壊れてしまう。
そんな気がしたの。」
これは私の後悔の言葉じゃない。
未来への、そっと灯す光だから。




