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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season10 ― 言わなかった後悔、言わなくてよかった光 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season10 ― 言わなかった後悔、言わなくてよかった光 ―
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第9章 最初の矛盾

■ 翌朝、アストリア



アークシステムズの3人は、朝一番でアストリア本社に入った。

受付フロアの空気は昨日より重い。

社員たちがひそひそと話す声が耳に入ってくる。


_「美乃よしの課長、やっぱりやったのかな……」

_「いや、あの人がそんな……でも記録が……」


たまきは胸がきゅっとして、

自然としゅうの袖をつまんでいた。


「大丈夫だ。環」

柊は小声で言い、そっと手を握り返した。


「僕がぜんぶ見ますから」

なぎも柔らかい笑顔で続ける。


3人は会議室へ向かい、鍵を閉めて機材を立ち上げた。


「さて……動き出しますか」

凪がメガネを押し上げ、凪の領域テリトリーに入り始める。



◇◇◇



■ 凪の違和感



なぎはサーバーログを並べながら、

ひとつ、気になる点に眉を寄せた。


しゅう先輩。これ、見てください」


「……なんだ?」


美乃よしのさんが“改ざんした”とされる日時のログ、

 やっぱり“手を加えた痕跡”があります


 でもね、これ……“雑”すぎるんです」


たまきが首をかしげる。


「雑って……どういう意味ですか?」


「本当にやる人なら、こんな初歩的なミスしません。

 タイムスタンプのズレ、IPの不自然な飛び方。

 ……おまけに書式が古い。

 “偽装ログ”の可能性が高いです」


しゅうがゆっくりうなずいた。


「つまり……誰かが美乃さんに罪を着せるために

 “ログを捏造した”ってことか」


「その線、濃厚ですね」


凪の表情は普段の可愛らしさを完全に消し、

鋭い分析官の目になっていた。



◇◇◇



■ 環の観察力が一歩進める



その時、たまきがぽつりとつぶやく。


「……あれ?

 昨日、深見ふかみさんたちが言っていました……

 末松すえまつさん、サーバー室から出てくるのを

 何度も見たって……」


なぎがはっと顔を上げた。


「環さん、それメモあります?」


「あ、はい……とりました」


環が手帳を開くと、

凪は食い入るように見て頷く。


「この話、ログの不自然さと合うかもしれない……

 末松さん、“権限は低いのにサーバー室に出入りしてる”。

 変ですよね?」


「……確かに」

しゅうが腕を組む。


「末松本人が直接手を加えたか、

 あるいは上からの指示を受けて……」


環が息を飲んだ。


「徳山部長……ですか?」


「……可能性は高いな。

末松ひとりでやる動機がない」


柊の声は低く、怒りを抑えているようでもあった。



◇◇◇



■ 最初の突破口



なぎがキーボードを打ち続ける。


「よし……

 “サーバー室の入退室ログ”と

 “改ざんされたとされるデータのタイミング”を

 重ねてみます」


画面に、いくつもの線が重なり、1つの点で一致した。


――末松学すえまつがく


「……決まりましたね」

凪が静かに言った。


美乃よしのさんが“改ざんした”とされる時間、

 サーバー室にいたのは末松さんだけです」


たまきが息を呑む。


「……じゃあ、美乃さんは……」


「無実がほぼ確定です」

凪がやさしく微笑んだ。


しゅうは深くうなずく。


「これで動ける。

 美乃さんに濡れ衣を着せていた“最初の矛盾”が見えた」



◇◇◇



■ 誰かが見ている



その時――

会議室の前で、足音が止まった。


3人が一瞬黙り、

しゅうがそっと鍵を確認する。


足音はしばらくそこに留まり、

やがて静かに遠ざかっていった。


「……見られているな」

柊が低く言う。


なぎも険しい顔になってつぶやく。


「末松さんだけじゃない。

 “黒幕”が動き出してますね……」


たまきは背筋がひやりとしたが、

隣にいる柊と凪の存在が

そっとその不安を包み込んでくれた。

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