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宣誓!人類の味方となるダンジョンにする事を誓います! 〜チュートリアルを装った攻略させないダンジョン作り〜  作者: 天沢与一


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28話 講習場教官、紫之宮悠希の場合②(三人称)

 ダンジョンマスターと人類は見た目が一緒だ。というか元人類だ。ステータスを見れば種族がダンジョンマスターと記載してあるが、地上で他人のステータスを見る術は獲得されてない。つまり、探しようがなかった。


 とはいえ、ダンジョンマスターが見つかった前例がある。群馬ダンジョンのマスターの馬淵だ。


 彼みたいにダンジョンマスターと名乗らなくても、声を聞いただとか、ダンジョンが現れる事を予見した文をネットで発信している人がいるかも知れない。


 ということで、ダンジョン攻略の訓練をしていた日々は一転。ダンジョン攻略特務部はネット上でひたすらそれらしい情報を探す日々となった。もちろん身体が鈍らないよう訓練も挟まっているが、ずいぶんと量は少なくなった。


 それらしいワードで検索して、引っかかったものは全て確認する。しかしそんなに簡単に情報が見つかるわけがなく、ただただ時間は過ぎていき、梅田ダンジョンの攻略失敗の対応に追われ、気づいたら紫之宮は講習場の教官になるべく経験を積まされ、東京でしばらく教官をした後、神奈川の講習場開設と共にそこに移った。


 紫之宮は時々なぜ自分が教官をしているんだろうと思う時がある。


 自分は無愛想だと自覚しているし、人にモノを教えるのは向いていない。探索者に紛れてダンジョン攻略を行いつつ、マスターを探す方がやっぽど有意義では無いのかと思っていた。


 実際にダンジョン攻略特務部から3人ほど探索者に紛れながら任務をしている人たちがいる。


 そっちの任務の方が向いているという自信があった。


 それでも教官を続けていくうちに仕事には慣れ、教え子達が立派に探索者をやっている姿を見ると、この任務も悪く無いと思えた。


 それは教官としての立場に慣れてきた頃。


 GWとだけあって、今回は受講者の人数が多かった。



「初めまして。私は今回このグループの講師を務める紫之宮悠希だ。座学から戦闘まで全て私が教えることになる。短い間だが、どうぞよろしく」



「よろしくお願いしまーす!」



 いつも通り自己紹介をすると、元気な返事が返ってきた。


 ここに来る者は全員大人なので、こんな風に言われる事は珍しい。


 受講者のためにという理由で、全員に自己紹介をさせる。紫之宮はそこで事前に調べた受講者の情報と相違がないかを確認した。


 それが終わったらあとは普通に授業を行う。


 つつがなく最初の授業が終わり、10分間の休憩となった。


 別に教室を退室しなくても良かったのだが、自分がいては気まずいだろうということで、一度控え室に戻ることにしている。


 少し休んだのち、次の授業で必要なプリント持ってまた教室に戻った。


 この授業はステータスについて教える。



「ここでは実際にステータス画面を見ながら説明していく。全員ステータスと唱えてくれ」



 受講者にステータスと唱えるよう指示して、自分もステータス画面を開く。



「ステータス」




-----


個体名:紫之宮悠希

種 族:人類

称 号:邂逅

    ナイフ使い

    ダンジョン踏破者

    英雄

レベル:19

魔力値:330

体力値:610

防 御:450

素早さ:640

器用さ:490

スキル:ナイフ術

    パリィ

    跳躍

    回避


所持スキルポイント

残り:18


-----



 最初からスキルポイントが10貰えていたが、この初期の所持ポイントは人によって異なり、隊長の倉渕は15ポイント持っていたそうだ。


 紫之宮は渋谷ダンジョン攻略前に4つのスキルを取って一度ポイントを使い切っている。それからレベル1上がるごとに1ポイントずつ貰って、新たなスキルは取得していない。


 渋谷ダンジョン攻略後からは何一つ変わっていないステータスだ。


 ステータスの授業のたびに開いているのでもう何回も見ている。


 授業では画面の見方について事細かく教えた。どこがどんな意味を持っていて、どれくらいが平均なのか。


 レベル20の時、500前後が平均的な数字になる。紫之宮は素早さが圧倒的に高く、魔力値が圧倒的に低い。


 なお、レベル1の時は10前後が平均的だ。確証はないが、もともと鍛えていた人は体力値が高い傾向にあるらしい。


 ステータスの詳細を教えたら次は称号の詳細だ。


 邂逅は初めてダンジョンに入った時、〇〇使いはモンスターを初めて倒した時に持っていた武器で得られる称号で、一般的にこの2つは誰でも持っている。


 一度〇〇使いの称号を獲得すると、違う武器に持ち替えても新しく似たような称号を得ることが難しくなる。最初の1匹で決まるから武器選びは重要だ。


 最後にスキルについて教え、その日の授業が終わった。


 次の日。いよいよ戦闘講習が始まる。


 入念な準備体操と柔軟運動をやらせて、それが終わったらただひたすら走らせた。


 次の授業では剣の素振りをさせる。


 紫之宮は終始厳しく教えた。


 過去に受講者から軍隊に入りに来たんじゃないと詰め寄られたことがある。


 数十分走らされて、その次はただひたすら素振りをさせられて、少しでも振り方がなってなかったら怒号が飛ぶ環境だ。文句が出てくるのも無理はない。


 それでも紫之宮がやり方を変えなかったのは、半端な教え方をしてダンジョン内で怪我はしてほしくないし、死なれたくもないからだ。


 とはいえ紫之宮の思いを受講者が汲み取るのも無理な話である。


 だから紫之宮は受講者からよく嫌われていた。嫌われる事に慣れてなんとも思わなくなったくらいだ。


 今回のグループを受け持ってから4日目の夕方。


 会議室から控え室に戻る途中で、とある受講者から話しかけられた。



「紫之宮さーん!今時間ある?」


「ああ。授業でわからない事でもあったか?」


「ううん。紫之宮さんとお喋りしたくて。ダメですか?」


「……少しなら構わない」


「えっと、じゃあ、紫之宮さんすっごく強いけど、前は何してた、んですか?」


「自衛隊員だ。別に無理に敬語を使わなくてもいいぞ」


「ありがとう!じゃあダンジョンにも入ったことある?」


「ああ」


「いいな、俺も早く行きたい!紫之宮さんはどこのダンジョンに入ったの?」


「私が行ったことあるのは渋谷だけだ」


「嘘!じゃあもしかしてダンジョンを完全攻略した特殊部隊にいた?」


「まあな」


「エリートさんだ!……これって俺聞いてよかった?」



 本当はあまり言ってはいけないのだが、うっかり認めてしまった。


 最悪任務のことさえバレなければ良いかと自分を納得させる。



「隠してるわけじゃないが、あまり周りには言いふらさないでくれよ」


「わかった!」



 元気な返事である。



「俺、紫之宮さんともっと仲良くなりたいからさ……悠希さんって呼んでもいい?」


「ああ……いや」


「ありがとう!」



 受講者からの名前呼びはなんかマズい気がすると思って否定しようとしたものの、時すでに遅し。



「じゃあ悠希さん、また明日よろしくね!」



 品谷は下の名前を呼んで、元気に去っていった。


 それからというものの、授業が終わった後、紫之宮は品谷に話しかけられるようになった。


 テスト内容を聞かれるといった事はなく、純粋に雑談だ。好きな動物とか趣味の話とかをした。


 ここまで受講者と個人的な話をしたのは初めてだった。


 6日目夜には、紫之宮は明日のテストが終わったらもう話す機会が無くなることに若干の寂しさを感じてしまって、気づけば普段は断る連絡先の交換に応じていた。


 そして講習の最終日。


 座学テストの様子を監視して、戦闘テストで動きを見る。今回の受講者には問題児はおらず、問題なく終わった。


 テストの後片付けをして、弓道場から出ると、そこには受講者4人がいた。品谷とその友人達だ。



「悠希さん!1週間お世話になりましたー!」



 ものすごく大きな声で言われた。



(他の受講者の前では名字で呼べと言ったのに……)



 品谷が紫之宮を名前で呼んだ事に友人達が驚いている。


 その様子に少し頭を抱えたくなったが、呼ばれてしまったものはもうどうしようもできない。


 何事もなかったかのように挨拶を続けた品谷の友人達に紫之宮は心の中でものすごく感謝をした。


 何はともあれ、最後に挨拶して帰られるのは悪い気分じゃない。


 その日は少しほっこりした気持ちで帰れた。


 さて。テストの結果は数日で出る。


 特に座学テストの採点は他の係員が複数人で行っているため、結果が出るのが早い。


 紫之宮は採点を行わないが、任務のために毎回受講者の回答を確認している。


 座学テストの内容はちょっとした仕掛けがあるのだ。


 例えば、【特殊建造物が出現した場所は特殊建造物の製作者が決めている】という問題。答えは×だ。ダンジョンマスターの存在は認めておらず、授業ではわかっていないと教えているからだ。


 他にも、【特殊建造物内のモンスターが再出現するまでの時間は特殊建造物に満ちている魔力量によって左右されている】という問題。こちらは〇だ。そんな事実は無いがそういうことになっている。


 あとは【ステータスの種族は人と書かれている】は×。ステータスを見れば誰でもわかる。正解は人類だ。普通は間違えようが無い。


 他にも、ダンジョンマスターにしかわからない嘘が正解になっている問題や絶対に人類なら間違えようが無い問題がいくつか紛れている。


 もちろん、これらの問題を純粋に間違える人もいるだろう。でも、用意したひっかけ問題を全問間違える人はなかなかいない。いてもそういう人は他の問題も壊滅的に間違えている。


 けれど、他の問題の正答率は普通なのに、ひっかけ問題の正答率が著しく低い人がいるのなら、その人はもしかしたら、ダンジョンマスターかもしれない。


 いつも通り採点員から受け取った解答用紙を1枚1枚確認していく。


 ふと気になる解答をしている人を見つけた。


 こちらが用意したひっかけ問題ほぼ全て間違えているのだ。



「そんな……まさか」



 解答用紙を持っていた手が震える。


 もちろん、解答の内容がダンジョンマスターっぽくても、それは証拠にならない。


 それでも紫之宮が教官になって初めて現れた候補者だ。動揺を隠せなかった。



「いや、あり得ない。あんな感情の隠し方を知らないようなやつが、あんな素直なやつがダンジョンを運営できると思えない。偶然だろう」



 こういう者が現れたら上に報告するように言われている。そのために紫之宮はここにいる。


 上に報告をしたらその人の事が徹底的に調べられるのは確実だ。そんな事をされて良い思いをする人は居ないだろう。


 調べるだけで終わるならまだマシだ。この回答者は数ヶ月も渡って調査して初めて現れたダンジョンマスター候補者である。捕まえた後、ありとあらゆる方法を使って無理矢理認めさせる、なんてこともあり得ない話では無い。上は成果を急いでいる。


 紫之宮の脳内に別れ際の言葉が思い浮かぶ。



「悠希さん!1週間お世話になりましたー!」

「合格してたら連絡するね」

「またね!」



 この回答者が品谷瑛士じゃなかったら、なんにも思う事なく報告したのに。


 今回も気になる人は居なかったと報告するのは簡単だ。そうすればこの回答は無かった事になる。紫之宮の他に確認する人もいない。


 点数からしてギリギリ合格してるから、これからただの探索者と過ごせるだろう。


 紫之宮が報告をしなければ、品谷瑛士は平穏に生きられる。


 それでも、それでも結局、紫之宮悠希は自衛隊員だから。



(……任務に私情を挟んではならない)



 自衛隊員としての責務を放棄することなんてできなかった。

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