2話 チュートリアル
放課後、友人との付き合いも大切にしながら、余った時間でダンジョンについて考え、有利になる情報はないか調べた。
そうして1週間悩みに悩んだ末、拠点を決めた。
東京の町田駅から徒歩15分くらい歩いたところにある小さな公園だ。
拠点を決める際、病院や学校、駅などの施設は避けた。
危険視されて攻略を急がれても困るからだ。
かと言って山奥とかだと人が来づらい。ダンジョンポイントを貰うのにもレベルを上げるのにも人類の来場が必要だからな。
ということで、そこそこの人口で交通の利便性がいい町田を選んだ。他にも似たようなところはあったけど、町田は俺の家から電車で一本なので。
ちなみに徒歩15分の場所を選んだのはポイントとの兼ね合いだ。駅から歩いて5分圏内だと必要なポイントが2万ポイントに対して、15分の場所だと1万3000ポイント。この差は大きい。
さらにいうと、この公園、町田つくし公園はストリートビューを見る限り、草がぼうぼうに生えていて誰も使ってなさそうな感じがよかった。
本当なら現地に行って状況を確認してから決めたかったが、近隣の住民に怪しまれても困るので行かなかった。だから実際のところはわからない。
ただレビューには“草が生い茂っていて遊べる状態じゃない”“ベンチがあるだけで公園とは言えない”みたいな内容があったので、この公園ならヘイトはそんなに集まらないんじゃないかなと思う。
公園の住所を検索欄に入れて地図に表示させ、ピンを刺す。そしてマップの右下にある決定ボタンを押した。
ちなみにこの時、どこも選ばないで決定ボタンを押すとランダムで拠点が決まるとAIが言ってた。ポイントが一切消費されないかわりに、海の中や山頂が選ばれることもあるらしい。
怖すぎる。
そんなこんなでチュートリアルはようやく次の工程に進んだ。
『拠点が決定いたしました。続いて、最初の部屋の設定を行います。四角マークを押して部屋の大きさをお選びください』
言われた通り左下に新しく現れた四角︎を押すと視界に◻︎が浮かび上がった。2本の指で縮めようとすると四角も小さくなるし、逆に大きくすることもできた。◻︎の周りにはmが書かれており、大きさを教えてくれている。
当然ポイントが必要で、床面積×10が必要ポイントになる。例えば1辺が3mと5mの部屋だと150ポイント。10mと15mの部屋だと1500ポイントみたいな感じだ。
ここで騙されてはいけないのが、今決めているのが最初の部屋だということ。
AIに質問しまくった時に聞いたのだが、ここはダンジョンの玄関部分にすぎず、モンスターの設置も罠の設置もできない。
つまり、人類にとってはダンジョン内で尚且つ安置になる場所となるわけだ。広くしてもなんの得にもならない。
それとは別に俺には部屋を大きくできない理由があった。この最初の部屋は地上に現れる部分なのだ。
俺が拠点としたこの町田つくし公園はぼろぼろのベンチしか置いていない狭い公園だから、大きく作りすぎると道路や周辺の建物を巻き込む可能性がある。
些細なことかも知れないが、近隣住民から無駄に敵意をもらいたく無い。
俺は◻︎を調整して1辺が2mと3mの部屋を作り、決定ボタンを押した。現地に行ったわけではないのでなんとも言えないが、たぶんこの大きさなら敷地内に収まっていると思う。
『最初の部屋の大きさが決定いたしました。入り口の位置をお決めください』
作った◻︎の辺のどこかをタップすることで決められるようだ。視界にいつの間にかコンパスマークが増えている。どこを選んでも必要ポイントは0。
人が入りやすいように公園入り口側にダンジョンの入り口がくるようにタップして決定を押す。
『ダンジョンの入り口が決定いたしました。1階層に行く方法をお選びください』
魔法陣か階段の2択である。
魔法陣は2000ポイントが必要で、階段は100ポイントが必要。
ここで魔法陣にする必要性を感じないので迷わず階段を選択した。すると今度は設置場所を選ぶように言われたので、入り口と正反対の位置にある壁に階段を設置する。
『出入り口の設定が完了いたしました。続いて買い物かごマークから部屋に置くモノを購入してください』
今度は◻︎マークの隣にかごのマークが現れた。押してみると視界がショップ画面のようなものに切り替わる。
机や看板のアイテム系からただの壁とか回復の噴水みたいファンタジー要素の強いオブジェ系まで、ジャンル別にかなりの商品数がリストに並んでいた。
購入には当然ダンジョンポイントを使う。
俺は100ポイントで木の看板を購入した。文字を入れての設置が可能なので、ある文言を記入して階段横に設置した。
【ここはチュートリアルダンジョンです。無理せずお進みください。】
誰でもチュートリアルと最初に言われたらそうだと思うだろう。そして実際に俺はこのダンジョンをチュートリアルとして使えるダンジョンにするつもりだ。
俺はこの1週間で決めてたのだ。
人類の味方をするダンジョンにしよう、と。
チュートリアルにもなる優しいダンジョンにすれば攻略の優先度は下がる。
その上で他のダンジョンの攻略に使えるアイテムが入手可能なダンジョンにすれば、積極的に人類から排除されなくなるはず。
さらにチュートリアルダンジョンならダンジョンを攻略したい人がまず最初に訪れるダンジョンとなる。
人類を誘致しつつ、攻略されないダンジョンにするにはこれしか無いと思った。
次に、ショップからただの壁と木のドアを購入する。合計800ポイント。
それらを隅っこに設置して何もない部屋を作った。横幅が1mほどしか無いが元々が狭いので仕方がない。
荷物置き場にでも更衣室にでも使って欲しい。俺からの優しさだ。
最後に2人が並んでギリギリ座れるかなってくらいの大きさのベンチを300ポイントで適当な位置に設置して、決定ボタンを押した。
『最初の部屋の設定が全て完了いたしました。続いて、1階層の設定に移ります』
最初の部屋と同じく、まずは階層の広さを決めるところからだ。
続けて設定しようとしたところ、今日も晩御飯に呼ばれてしまった。仕方がない。一時中断だ。
親からの話を話半分に聞き、手元のスマホで日課になっているダンジョンに役に立ちそうな情報集めをしつつ、晩御飯を食べる。
ふと気になるまとめ記事を見つけた。陰謀論をメインに扱っているサイトの最新記事だ。
《もうすぐダンジョンが現れる!?迫る人類滅亡のカウントダウン》
思わずタイトルをタップした。
内容を読んでいくと、掲示板に現れたダンジョンマスターに選ばれたと言う男についてまとめた記事だった。元の掲示板のリンクが貼ってあったのでそっちに飛んでみることにした。




