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宣誓!人類の味方となるダンジョンにする事を誓います! 〜チュートリアルを装った攻略させないダンジョン作り〜  作者: 天沢与一


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17話 ダンジョンマスター、品谷瑛士の場合(三人称)

 それは授業中、うとうとしている時に聞こえた。



『抽選により、ダンジョンマスターに選ばれました。1ヶ月後、人類の侵攻が始まります。攻略されないよう備えてください』



 瑛士はその声を聞いて、面白そうじゃんと思った。


 けれども今は暖かい日差しに当たって、気持ちよくうとうとしているところである。

 声が続けて何か言ったような気がしたが、そんなことよりも寝ることの方が大切だ。


 そうして寝て、授業の終わりのチャイムで起きた。

 瑛士の目の前には<はい>と<いいえ>の選択肢が浮かび上がっている。


 思わず目を擦ってみたが、選択肢は当然消えない。



(夢だけどー、夢じゃなかったー!)



 寝落ちする寸前に聞いた声を思い出して、どこかで聞いたことがあるようなセリフを心の中で呟きつつ、<はい>を選ぶ。


 すると今度ははっきりと声が聞こえた。



『個体名:品谷瑛士(しなたにえいし)の承認を得られました。これより肉体の仕様変更を行います。』



 なんかゲームみたいだと思いつつ、瑛士は何が行われるのかわくわくしながら待った。


 けれどもピカっと一瞬光っただけ。



(なんか、もっとキャーって言われると思ったのに)



 こんなに不思議な事が起こっているのに、瑛士以外の人達は何も気にする事なく普通に休み時間を送っている。



『完了いたしました。続いて、ダンジョン運営をサポートするAIをお選びください』



【モデル:アルファタイプ】

 最もスタンダードなAI。攻守ともにバランスよくサポートしてくれる。女性型。


【モデル:ベータタイプ】

 ちょっと攻撃的な思考を持ったAI。攻撃は最大の防御と思うあなたにおすすめ。男性型。


【モデル:ガンマタイプ】

 守りを優先させる思考を持ったAI。慌てず、焦らず、堅実にいきたいあなたにおすすめ。男性型。


【モデル:デルタタイプ】

 必要最低限のみの機能に絞ったAI。ダンジョン運営の自信があるあなたにおすすめ。特典として初期ポイントが大幅にUPします。中性型。


【モデル:イプシロンタイプ】

 あなたの代わりにダンジョン運営をしてくれるAI。全てを任せたいあなたにおすすめ。欠点として初期ポイントが減少します。女性型。



 また声が聞こえて、目の前にずらりと選択肢が並ぶ。

 瑛士はこういう説明みたいなのを読むのが苦手だ。文字の羅列を見てるだけで頭が痛くなってくる。


 それでもなんとか最初の1文だけ呼んで、迷わず最後のイプシロンタイプを選んだ。


 ダンジョンなんて面白そうなもの確かにやってみたいが、今みたいなずらっとある説明文を読んでいくのは嫌だったからだ。

 サポートAIとやらを使って、楽できるならそれでいい。



『モデル:イプシロンタイプが選択されました。最後にダンジョンポイントの配布を行います。初期ポイントの9万が追加されます。以降ダンジョンポイントの配布は行われませんので、お気をつけてご利用ください』



 よくわからないポイントをもらって、声が切り替わる。

 可愛い女の子の声だ。



『初めましてマスター!私はダンジョン運営サポートAIのイプシロンです。気軽にお呼びください!チュートリアルを今すぐ始めますか?』


「じゃあシロンちゃんね!ご飯食べたいからまた後でやる!」


『かしこまりました!チュートリアルを始めたくなったら、私に直接言うか、右上の三角を押してくださいね』


「はーい」



 そうして瑛士は昼ごはんを買いに購買に向かった。こんなに堂々と会話してたのに、普段のキャラの所為かやっぱり変に思う人はいなかった。


 瑛士がチュートリアルの存在を思い出したのはこの3日後の事だった。


 三角マークが視界に馴染んでいて気づかなかったというのもあるが、シンプルにご飯を食べて寝たら忘れてしまったのだ。



「シロンちゃんごめん忘れてた!チュートリアルやる!」


『まだまだ時間はあるので大丈夫ですよ!それではチュートリアルを始めます。まずは拠点をお選びください。おすすめはマップ上の⭐︎がある場所となっています』


「俺地理弱いんだよね。シロンちゃんの最推しは?」



 なお、瑛士は地理だけではなく他の教科も平等にできない。



『私のおすすめはランダムで拠点を決めることです。どこも選ばず決定ボタンを押せばポイントを消費せず始められます』


「じゃあそれで」



 本来ならランダムで選んだ時のデメリットや、サポートAIをイプシロンタイプにした時のみ最低限人が来る場所からランダムに選ばれ、場所が事前にわかるなどの説明が続く筈だったのだが、瑛士は食い気味に決定ボタンを押したため説明がカットされた。



『拠点がランダムに選ばれます。……梅田に拠点が決定しました!人がたくさん集まるから0ポイントでここにできたのラッキーですね!

 次は、最初の部屋の設定を行います。四角マークを押してください。デフォルトでおすすめの大きさが設定されています。大きさを変更されたい場合は』


「説明長いよ。おすすめので」



 そうやって、瑛士は詳しく内容を聞く事なく全てAIのおすすめに従ってチュートリアルを終わらせた。


 イプシロンタイプのAIの説明文に“全てを任せたいあなたにおすすめ”と書いてあったが、本当に全てを任せたのは瑛士くらいだろう。



『チュートリアルが全て終わりました!以降階層を増やしたい場合はプラスマークから増やすか、私に声をかけていただければお手伝いします。

 他にも質問がある場合は気軽に聞いてください!』


「はーい!」



 ここで功を奏したのは、瑛士がチュートリアルが終わったら新しく階層を作らなかった事だ。

 何か必要な事があったら向こうから声をかけてくると思ってそうした。そして実際にイプシロンタイプのAIはそういうAIだった。


 1月1日を迎え、ダンジョンが人類に知れ渡っても人は来ず、政府がダンジョンの存在を認めても人は来ず、半年以上過ぎた9月18日。ようやく梅田ダンジョンに人が訪れた。



『人類からの侵攻を確認しました!


 初めての経験値を獲得。ダンジョンのレベルが1になりました。


 個体名:品谷瑛士が正式にダンジョンマスターとなりました。それによりダンジョンマスターとしてのステータスが』


「長い長い長い!その説明カットで!もっと簡単に言ってくれない?」


『アナウンスを中断。人類の侵入を確認しましたので、新たな階層の作成を推奨いたします!』


「なるほど。前と同じ感じでおすすめの階層作って」



 これだけ放置されていたにも関わらず、1階層までしか作ってなかったおかげでポイントは潤沢だ。



『かしこまりました!現在、53名の侵入を確認。多人数向けの階層を作成します』


「よろしく!」



 ものの数分でAI作の2階層目が出来上がった。


 1階層と同じ洞窟の環境変化があり、複雑な道のりで、ブラッドバットという吸血攻撃を行うコウモリが複数体配置されている。


 怪我人を増やして足手纏いを作り、戦力を削る構成なのだが、やっぱり瑛士は深く聞く事なくただただ決定ボタンを押した。


 それからも、2階層までが人類が侵入して来たら3階層目を、3階層までが人類が侵入して来たら4階層目をAIの言う通りに作った。


 最初に持っていたポイントは尽きたが、53人もの侵入者のおかげでポイントも経験値も一気に入ってくる。本来それを認識できるのはリザルト後ではあるが、実際にはリアルタイムで獲得し続けている仕様だ。AIを通じてなら随時使用できる。


 今回、人類は大人数で来てしまった。それによりポイントを多く与えてしまった。だから瑛士のダンジョンを攻略できなかった。


 結果として3階層の途中で人類は瑛士のダンジョンから撤退した。



「なんかもう面倒だから、今後は最後の階層に侵入者が来たら勝手に階層増やしていいよ」


『かしこまりました!今後は最終階層に侵入者が来た場合、自動的に階層の更新を行います』


「よろー」



 この命令は今でも続いている。


 それからどうなったかというと、瑛士は完全にダンジョンを放置した。


 もともとクラフト系のゲームは苦手だったのだ。どちらかというと無双ゲーが好きで、ダンジョンより先に探索者の存在を知っていたらマスターになることを選ばなかった自信がある。


 瑛士の性格は致命的にダンジョンマスターには向いていなかった。


 命令のおかげでダンジョンが完全攻略されることはない。

 けれども瑛士は完全にダンジョンへの興味を失っていた。


 翌年1月。


 卒業旅行の話が出た時に瑛士が大阪を提案したのは、シンプルに大阪に行きたかったというのもあるが、もしかしたらダンジョンを自分の目で見たらなにか思い入れができるかもしれないと思ったからだ。


 その時は旅行中たまたま見れたらラッキー、という程度に考えていた。


 けど、流れで梅田ダンジョンに寄ることになって、たまたま探索者と遭遇できて、ダンジョンの話を聞いて。

 それでもやっぱり瑛士は梅田ダンジョンについて何か感情を抱くことができなかった。


 例えるなら、チュートリアルがつまらなくてすぐ辞めたゲームのように。最初は楽しそうと感じた筈なのに今は本当にどうでもよくなっている。


 深夜。友人が部屋を出て行ったのを見て、それが梅田ダンジョンに行くためだと思ったのは勘だ。何食わぬ顔して誰よりもダンジョンに興味を持っていそうだったから、行き先はそこだろうと予想した。


 着いていこうと準備が終わった頃にはそいつの姿は完全に見えなくなっていたが、行き先さえわかっていれば問題ない。


 早歩きで向かい、ダンジョン間近でようやく人影を捉える。



「蒼斗?」



 フードを被ってなんだか不審者感あるが間違いなく瑛士の友人だった。


 そこから一緒にダンジョンへ入ろうとしたのはノリだ。ここまで来て帰る選択肢もない。


 2人で一緒にダンジョンに入る。



「朝早いしちょっと中見たら帰るから」


「わかってるよ。モンスター危ないし……」



 ふと声が聞こえて思わず瑛士は話すのを辞め、立ち止まった。



『ダンジョンマスターからの侵攻を確認しました!』



 放置しっぱなしで、ここしばらく聞いていなかった、AIのかわいい声だった。

 おすすめと言われてダンジョンマスターが侵入した時の通知も入れていた。



(このタイミングで?誰だろう)



 周りには自分と友達の蒼斗しかいない。


 となれば通知の原因はこの2人のどっちか。


 確かに瑛士はダンジョンマスターだが、だからと言って自分のダンジョンに来たのに侵攻とは言われないだろう。


 瑛士の頭は珍しく冴えていた。


 周囲に人はおらず、自分じゃないなら……



(まさか蒼斗が?)



 どう考えてもそれしか思い当たらない。



「蒼斗ってもしかしてダンジョンマスター?」



 質問の返答は瑛士の予想を肯定しているようなものだった。



「瑛士は梅田のダンジョンマスター?」



 つまり友達の蒼斗はダンジョンマスターである。



(まさかこんなつまらないクソゲーみたいなものをやっている同士がこんな近くに居るなんて。蒼斗がいるならコレも面白くなるかなぁ)



 なんて思いながら、その時蒼斗が何を考えているか知らず、瑛士はただ仲間を見つけられたことを喜んでいた。

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