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一人旅の始まり

初投稿です。

目が覚め、朦朧とした意識のまま見た鏡に映っていたのは、全く別人の女性だった。


「はぁ、」


はぁ、しか出ない声もしっかりと女性のものである。…俺は男だったはずでは…?


記憶が曖昧だ。自分の名前すら思い出せない。


部屋には手術台?のようなものもあるが、俺は先程まで、部屋の端にあるそれとは別の硬いベッドに横になっていた。


︎︎ ここはどこだ?︎︎ この体は?︎︎


︎︎ 体が動くようになってから部屋の外を散策してみると、ここが小さな廃病院の地下であることが分かった。地下への入口は薬品棚の裏に隠されていた。


︎︎ 地下には実験部屋の他に、いくつかのプライベートな個室があり、最近まで生活していた形跡がある。


ガウン一枚という心もとない格好をしていた俺は仕方なく、女性がいたであろう部屋のクローゼットを漁り、無断で衣服等を頂戴するという卑劣な犯罪行為に手を染め、同じく地下に沢山あった水や食料を確認し、気持ちが落ち着くまで一旦ここで生活することにした。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



気づいたら一ヶ月もここで生活していた。


病院にあった電話で誰かに助けを呼ぼうとも考えたが、もし俺が違法な人体実験の産物だった場合、果たして人権は適応されるのかという疑問が浮かび、怖くて出来なかったのだ。


とりあえず、助けを呼ばなくて正解だった。ここで一ヶ月生活した結果、この体について分かったことがある。


水や食料をほとんど必要としないのだ。2日間程なら何も摂取せずとも何ともなく、3日目でようやく喉の渇きや空腹感を覚えるくらいだ。完全に違法な人体実験の産物である。


︎︎ しかし摂取できないというわけでもなく、やろうと思えばそれなりに飲み食いは出来た。


コスパの良い人間の製造実験だろうか。記憶も移植された?

“奴隷” “人間兵器”といった物騒な単語が頭に浮かび、身の毛がよだつ。


絶対に誰にもバレるわけにはいかない。水や食料が底を尽きるまで、誰にも見つからないようにここに潜伏していよう。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



そしてさらに一ヶ月が経過した。




ガチ暇。



本当に退屈だ。この建物には娯楽がない。もうペン回しを練習し続ける生活には飽きてしまったし、水も食料も全て非常用で、味のバリエーションも全くない。楽しみが無さすぎてどうにかなってしまいそうだ。


…不本意だが…、

…この女体にも慣れてきたことだし…。



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



建物の周りはほぼ森だが、地下に周辺のことが記してある地図があり、西へ少し歩けばそれなりの町があるらしいので、とりあえず娯楽を求めてそこへ行ってみることにする。違法な人体実験の産物であることがバレたら非常にマズイが、一見すると普通の女性にしか見えないので、まぁ大丈夫だろう。


…よくよく見たら、なかなかに悪くない顔立ちをしている。


色々と謎は残るが、俺は身だしなみをバッチリ整え、必要そうなものを持ち、渋々と廃病院を後にした。

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