【超短編】雨
雨が降っている。
冷たいコンクリートを濡らしている。
雨は私のために降っている?
失恋した私のために。
今日も、誰かのために降り続ける雨。
私は、雨が降る理由を知っている。
いつか晴れた時、種が芽吹くように。
そして、花を咲かせるために。
だから、雨は私を癒やしてくれる。
いつか別の種が咲くその日まで、
優しく包んでくれる。
私は祈る。
あなたに雨が降らないように。
あなたの種が芽吹かないように。
私は、祈る。
今日も、祈る。
明日も、祈る。
ずっと、ずっと、祈っている。
雨はやがて、あなたを包むでしょう。
新しい種は、あたなに咲くでしょう。
その花は、毒があるかもしれない。
ないのかもしれない。
あなたに咲く花を、私は摘んでしまうかもしれない。
私には、雨が降っている。
冷たい雨が、降っている。
その雨は、誰のもの?
私には、雨が降っている。