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アリア

風邪で弱ってる女の子ってエロいっすよね。

 

「……あっ優弥……来てくれたんだ? コホッコホッ」

「おい大丈夫か?」


 そう言って俺はベッドで咳き込んでいる友人を見た。

 ほんのり赤くなった顔はとても辛そうだ。


(……それにしても新入早々風邪とはなぁ)


 カラオケに行ったあの後、セナは風邪を引いた。

 まぁ、季節の変わり目という事もあり仕方ないのかもしれない。


「ほら、色々買ってきたから置いとくぞ」

「……ごめんね優弥」


 飲み物や熱冷ましシート等が入った袋をテーブルの上に置いてから、セナの寝ているベッドの横に座る。


「なんでお前が謝るんだよ」

「……だって、ボクが風邪引いたからわざわざお見舞いなんかに来させちゃって……ごめんね」


 そう言う彼女は涙目だ。


「風邪なんて誰でも引くだろ、それに俺は好きでお見舞いに来てんの。だから謝るなよ」

「……うぅ」


 昔からセナは風邪を引くとこんなふうに弱気になる。

 ……まぁ、それが可愛いから俺はお見舞いに来ているというのもあるのだが。


「ほら早く寝ろよ。治るもんも治らないぞ」

「……だって、せっかく優弥が来てくれたのに……あっ」


 なにやらブツブツ言っているセナの頭を優しく撫でる。

 セナの赤い顔がさらに赤くなったような気がした。


「お前が早く元気になってくれないと俺がつまんねぇの」

「……うん///」


 布団に顔を半分隠すようにしてセナが頷く。

 なんだこの可愛い生き物は。


「分かったなら早く休め、俺はここにいるから」

「うん……ねぇ、優弥」

「ん?」

「……ボクが眠るまでの間でいいからさ、頭撫でといてくれない?」

「それで本当に寝れるのか?」

「うん」

「分かった」


 静かにベッドの端に腰掛け、目をつぶっているセナの頭を優しく撫でる。

 よく手入れされたサラサラの髪はいくら撫でていても飽きそうにない。


「えへへ♡ 優弥の手、冷たくて気持ちいい」

「末端冷え性で悪かったな」

「手が冷たい人は心が暖かいんだよ?」

「それ迷信だろ」

「そんなことないもーん、えへへ♡」


 そんなセナの幸せそうな顔に俺まで笑顔になり、このままずっと風邪引いといてくれないかな?と割と酷い事を考えてしまう。

 可愛すぎるんだから仕方ないね。


「……優弥ぁ」

「ん?」

「……えへ、呼んだだけ♡」

「バカップルかよ」


 でも悪い気はしない。

 何度でも名前は呼んでほしい。


 ___


「すぅー、すぅー」


 頭を撫でているうちにだんだんセナの反応が薄くなっていき、気づけば寝息を立て始めた。


「……ふぁ」


 ふいに欠伸が出る。

 時計の音とかすかな寝息だけがする静かな部屋。

 なんだか俺も眠くなってきてしまったようだ。


「少しだけ寝るか。少し、だけ……」


 セナの眠るベッドに寄りかかるようにして俺は目を閉じた。



 ◆◇◆◇◆◇


「……ん」


 ボクが目を覚ました時、ベッドの横で優弥が眠っていた。


「……優弥?」


 名前を呼んでも起きない。

 結構ぐっすり眠っているみたいだ。

 起こさないようベッドから起き上がり、顔を覗き込む。


「ふふ、可愛い寝顔」


 小さい頃からあまり変わらない彼の顔。

 ボクをいじめっ子から守った時についた眉の上の傷痕はいまだに消えていない。


(……ボクのためについた傷)


 そう考えると顔が熱くなり、胸がドキドキと高鳴る。

 風邪による熱との相乗効果で脳みそまで沸騰しそうだ。

 ……もう無理、我慢出来ない。


「好き。好きだよ、優弥♡」


 呟いて彼の唇に自分の唇を合わせた。

 正真正銘のファーストキス。

 これを彼が起きている時に出来たなら、どんなに良かっただろう。

 でもそんな勇気はないから、自己満足でも彼に何かを捧げたかった。


「んぅ、愛してる♡」


 対面座位の格好のまま何度も何度も口付けをしながら優弥の着ているシャツのボタンを外す。

 そしてさらけ出された首筋にボクは勢いよく吸い付いた。


(優弥はボクのだもん。絶対に誰にも渡さない)


 ちゅうちゅうと音を立てながら吸った後、口を離す。

 慣れていないわりに綺麗についたキスマーク。

 それを見て彼を独占できたような、そんな快感にも似た感覚に全身が震えた。


「ずっと一緒だよ」


 そう。ボク達はずっと一緒だ。

 いつまでも永遠に。

 邪魔するやつは絶対許さない。

 ギュッと抱きつき、再び首筋に吸い付く。

 まだまだ彼は起きそうにない。

 ……彼が目覚めるまでにあと何個痕をつけれるかな?








 そして次の日、優弥は風邪を引いた。

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