ナースカフェ
短めです。
「優弥ってさー、好きなタイプとかないの?」
休日、俺がセナの部屋で漫画を読んでいると突然彼女がそんなことを聞いてきた。
そんな彼女は俺の肩に顎を乗せて、俺と一緒に同じ漫画を読んでいる。
「急にどうした」
「べつにー? ただ今まで聞いたことなかったなって思ってさ」
「言われてみればそうだな」
確かに俺とセナは仲が良いが、あまりそういった話をしてこなかった。
……まぁ俺に関しては単にモテなすぎて話すことがないだけだが。
「それで? なんかないの?」
セナがこちらを見つめてくる。
肩に顎を乗せられているため顔が近い。
「急にそんなこと言われてもなぁ」
「別に今思いついたのでもいいよ」
んー、と俺は顎に手を当てて考える。
「強いて言うなら"巨乳"かな」
「さいってー」
「お前が思いついたの言えって言ったんだろ」
「……そんなに大きい胸がいいの?」
「まぁ、無いよりかはある方がいいだろ。胸に限らず何でも」
「……ふ、ふぅん。そうなんだ」
なにやら自分の胸のほうを見て複雑そうな顔をしているセナ。
俺は漫画のページをめくりながら言う。
「逆にお前の好きなタイプは?」
「え? ボク?」
「俺だけ言わされるのはフェアじゃないだろ」
「え、えーと……ぼ、ボクはそうだなぁ」
こいつも女の子だし、やっぱりイケメンとかがタイプなんだろうか?
「……ゆ」
「ゆ?」
「ゆ、ゆ、ゆう、ゆ、ゆ、ゆゆゆ、ゆ」
「???」
壊れたロボットのようにセナが同じ言葉を繰り返し始める。大丈夫かこいつ。
「ゆうや…………けが似合う人。そう、ボクは夕焼けが似合う人が好きなんだ」
「……」
一瞬、自分の名前が呼ばれたと思ってビックリした。
(……ホントこういうところだよなぁ、こいつは)
気を抜くと勘違いしてしまいそうになる。
「それにしても変わったタイプだな。なんだよ夕焼けの似合うやつって、聞いた事ねーよそんなの」
「だ、だよねー? 皆にもよく言われるよ。あは、あははは!…………うぅ、ボクのバカ……」
そんな休日の午後は、こうしてゆっくり過ぎていった。