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海の挽歌  作者: 門戸
精霊使い
12/256

12 精霊使い1: イニシュアとエンマ

・ ・ ・ ・ ・



「イニシュア」



 苦し気に、重たげに絞り出す細い息の合間をついで、若い娘は――若い母親は、その名を呼ぶ。



「何だ」



 石組み小屋の外には真夏の陽光がきらめいていたが、粗末な病床は暗く、そして小さな妻は青白く冷え切っていた。


 もともと細かった身体はさらに痩せさらばえ、顔も指も喉元も、痛々しく骨のかたちが見て取れるまでになっている。優しい瞳だけが大きく潤んで、彼を見つめていた。



「わたし、あなたに……ひとつだけ、お願いがある」



 彼女はもう、以前のような声は出せない。かすれ声の囁きを聞き洩らさないよう、彼は枕元へ顔を寄せた。



「あの子を、あなたの娘にしてほしい」



・ ・ ・ ・ ・


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