第三華
「貴様の大事な彼女についてだ」
やはりというべきか、予想はしていた。
目の前の人物ーーエルギスが昨日看護師として出てきて接触してきて、今この場にいるということはそのことについて話しがあってきたのだろうと考えていた。
「まず初めに、今日私が不法侵入をしてまでここにいることは不問にしてほしい。
必要があれば後で答える」
「・・・わかった」
私は歯切れ悪く返答した。
「感謝する。では最初から説明しよう。
私はとある機関に所属している。
その機関はMAS(Mutant And Supernatural)機関という名だ。
簡単に説明すると、超能力集団だ」
私は固唾をのむ。
「貴様が昨日娘と話していた超能力の話だが、結論から言うと存在する。
それも数人という単位ではなく、数百人という単位でだ。
貴様もさっき体感しただろう。私もそのうちの一人だ。
そして私たちMAS機関は造花病について研究している。
造花病は知っての通り、不治の病だ。
普通の科学や医療技術では絶対に治らない。これは断言できる。
超能力が絡んでいるからだ。これは後ほど話そう。
超能力は物理法則、慣性の法則、エネルギー保存の法則等
あらゆる法則を無視した能力が使える。
現代科学においてとても手の付けられないことをできるのが超能力だ。
超能力に縛りはない。無限の力を秘めている。
MASはあの朝倉病院と提携があるため、造花病患者を各地から集めてもらい、
最大限治療できるように配慮してある。
だが、残念ながら今のところは造花病を治せる能力はない。
治療系の能力者ならいるが、試してみても効力は発揮しなかった。
そのため、今でも募集している。
言い忘れていたが、貴様にはそれに参加してもらいたいと思っている。
その手に数字があるだろう」
私は数字の書かれている左手を見た。
「それは私たちが勝手ながらつけさせてもらった。
その数字が募集の参加条件だ。
その数字には意味がある。毎日その数字は減る。
ではその数字は何を意味するのか。
その数字を持っている者は全員家族や恋人等の大切な人が造花病に罹っている。
そのカウントだううんは大切な人の造花が真骨頂に達するまでのカウントダウンだ」
口の中が乾く。
「貴様も知っているように、造花病患者は大体の患者が花に命を吸われて命が尽きる。
命が尽きずとも精神が崩壊し、廃人状態になるものも少なくはない。
だが中には突然病院から姿を消すものもいる。
その行方不明になった者の死体は誰一人として見つかっていないことから、
肉体はまだ生きていると考えていいだろう。
我々はおそらく花に肉体を操られていると考えている。
どこかに消えているため、見つけたときは別人の可能性が高い。
人間の姿をしているかも危うい。
その手の数字は我々が患者の様子を見て付けたため、その数字より長く正常でいる可能性もあるが、大体は当たると考えていい。
そしてその数字の日数は最低限の日数の為、日数内は確実に安全だということは保証する。
話は戻るが、貴様が募集に参加すれば、超能力を手に入れることができる。
つまり、造花病を治せる可能性がミリ程度ではあるが、あるということだ。
それだけでも参加する価値があると思うが、貴様はどうする?」
エルギスが変わらずの鋭い目つきでこちらを睨む。
「ちなみになんだが、参加すると外部との接触を禁ずる。
つまり、貴様の彼女の知沙とは治す手段を持つまで会えなくなる。
それでも参加するかは貴様の判断だ。
今断るのであれば昨日からの貴様の記憶を消させてもらうだけだ」
・・・・・。
「・・・・・・。」
「・・・パンはおいしいか?」
「もぐもぐ(ああ)」
「何を付けている」
「もぐもぐ(オレンジジャム。いる?)」
「いや、私は食べた。ルイボスティーとドーナツのようなパンは合うもんだな」
ばっちゃん!
小林:康太と同じアパートに住んでいる母方のおばあちゃんの妹。