第一華
初投稿。。。というわけではないですが、作品としては初投稿です。
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低評価は甘んじて受けます。
※端末の不具合かわかりませんが、保存時たまに文字が勝手に入れ替わったりします。
修正はしますが、もし見つけましたら報告お願いいたします。
海のように青い空にぽつぽつと綿の雲が並んでいる。
市内で一番大きな朝倉病院の一室に私と彼女がいた。
「男らしい手だね」
彼女が、リンゴをナイフで剥いている私の手を見てそう言った。
「そうか?まあ最近力仕事が増えてきて若干筋肉はついたかもな」
剥き終わったリンゴを持ってきた紙皿に置きながらそう返した。
彼女 じっと私の手を見ている。
その顔が愛おしく、私はその顔を見つめてしまう。
「何じっと見てんのさ。なんか顔についてる?・・・って花はついてるけどさ」
そういって彼女は正面に向き直ってしまった。
は彼女の左頬には彼女が言った通り、花がついている。
この花は体に害なすものだ。
彼女は不運にも『造花病』という病に罹ってしまった。
見た目は体の一部に花ができてしまうという、あまり恐ろしく感じない病に思える。
だがしかし、この病に侵されてしまうと、人体の神経に花のような病原体がつながり、体のいろいろな養分や成分が奪われてしまう。
そのため、無理に麻酔を打って手術しようとしても、薬が花に吸われ麻酔が効かない。
そのまま切断しようとすると謎の激痛が走り、実際死んでしまうことがほとんど。
仮に生きていても後遺症による精神崩壊が待っていて、自分が自分でなくなってしまうという奇病である。
手術もできない、そのまま放置しても生命が吸われ続け、長くは生きられないのだ。
少しの沈黙の後、彼女が口を開いた。
「ねえ康太」
「ん?」
「超能力って、信じる?」
彼女はわくわくした声色でニコニコしながらこっちを向く。
「どうした急に」
嘲笑気味に返す。
「この前のニュース見た?ビル一件丸々爆破テロ」
彼女が話しているのはつい一、二週間前の事件のことだ。
「ああ、一応見たぞ。詳細は確認してないけど」
「あれ犯人一人だけだったらしいよ。警察めっちゃ出動してたのに全く手が付けられなくて、ずっとビルに立てこもってたんだって。
なんで爆破してるのに立てこもってるんだろうって思わない?」
「まあそうだな。ビルが崩れたら自分もつぶれるのにな」
「でしょ?一部ネットで犯人は超能力者なんじゃないかって噂も流れてるよ」
「本当か?どうにも信じられないけど」
今まで生きていて怪事件は聞いたことあるが、超能力の事件っていうのは聞いたことないと思った。
「ほんとだよ!それで警察は安全確保も含め周りを包囲するしかできなくて、特殊部隊が来たら犯人は逮捕されたんだって」
彼女は楽しげに話し続ける。
「特殊部隊も警察じゃないのか?」
「特殊部隊って言っても、変な組織で警察じゃないらしいよ」
「ふーん。まあ知紗はその類の話好きだもんな」
「何よその信じてない感じ!」
彼女は両手に力を入れ、わざとらしく頬を膨らませる。
何時ものような他愛のない会話を交わしながら時間が過ぎていく。
この時間もいつまでできるかわからない。
楽しそうで悲しそうな彼女の顔を見ていると心臓が圧迫される感覚に陥る。
私はぼーっと目に躍起付けるように彼女を見る。
「もし」
何も考えずに言葉が出た。
「もし超能力が使える世界なら俺が手に入れて知沙の造花病を治してやるよ」
私がそういった途端、彼女は今までの無邪気な顔をなくし、優しく微笑む。
「ありがとう。じゃあ、約束ね」
彼女は右手の小指を差し出した。
「ああ、約束だ」
彼女と見つめあう。
彼女の瞳に私が映っているのが見える。
瞳の中にはやはり、悲しい色が混じっている。
「お話し中失礼いたします。
面会の時間は以上となります。
大変恐縮ですが、ご帰宅の準備をお願いいたします」
前髪がやけに長い青髪の女性が後ろから話しかけてきた。
時間を見ると18時42分。前より時間が短くなっている。
患者との薬のやり取りとか体調管理とかいろいろあるのだろうか。
疑問には思いながら病院の事情なんだろうと思い、病室を後にする。
「じゃあ、また来るね」
「うん、また」
短い会話をしたのち、病室を出た。
病室の扉がいつもより冷たく感じた。