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第八章『ゼクター・ジック』

ここは山脈の街ドォーガ。

俺の名はゼクター・ジック。

この街のアパートで暮らしている。

俺はいつも通り朝の6時に起きた。

朝飯を食いに行く為に部屋を出た時だった。

『ゼクター・ジック。』

「あ?何だよ。』

俺に声をかけたのはララ・シュヴラ。

俺が持つ断罪の鎌ノニルカードに宿っている。

『あなたはこれからどうするつもり?』

『決まってる。まずは金を集める。そして、世界中を旅したい。この世界の全てを見てみたいんだ。』

『…………そしてまた、沢山の人の命と人生をもて遊ぶのですか?』

ピクッと俺は反応し顔を顰める。『どういう意味だ。それは。』

『言葉通りの意味ですよ。』

ララは少し悲しげな表情をした。

…まあ良い。コイツは俺がノニルカードの所持者である限りは言いなりだ。

それにコイツはもう死んでる。

つまり魂だけの存在。

だから何を言っても問題はない。

『さぁ、行こうぜ。』

俺とララはアパートを出て、街にある食堂へと向かった。

この店ではパンやスープなどの簡単な食事を提供している。

少ない客の中で浮かない顔をしてる爺さんが居た。名前はイーデォン。

この店の店主だ。

ちなみにイーデォンは俺と同じで独り暮らしをしている。

イーデォンは寂しいのか、たまにこうして店を開けているらしい。

そして、イーデォンは俺達に話しかけてきた。

「おぉ、お前さんか。」

「よお、爺さん。」

「今日は何の用じゃ?」

「パンとスープをくれ。」

「あいよ。」

イーデォンはカウンターの奥へと行った。数分後、イーデォンは料理を持ってやって来た。

「ほれ、出来たぞ。」

「サンキュー。」

俺はそれを食べながら

「なあ、爺さん。最近何かあっただろ?」

と言った。

すると、イーデォンの顔色が変わり

「何の話じゃ。わしは何も知らんぞ。」と答えた。

しかし、俺は続けて言った。

「いや、嘘をつく必要はない。

俺には解るよ。アンタが正気じゃないって事…。話してみろよ?力になれるかもしれない。」

すると、老人は俺の言葉を聞いて、安心した様に語り始めた。

「……実はワシは、ここ数日、夢を見るんじゃ。」

「どんな内容なんだ?」

「悪夢の様なものばかりじゃ。

恐ろしい怪物に追いかけられる夢。

巨大なドラゴンが襲ってくる夢。

そして、その度にワシは目が覚める。」

「そうなのか。でも、それは普通じゃないか。

誰だって悪夢の一つや二つ見るだろう。」

「違う。いつもなら、そういう夢は見ない。

なのに、今回は違っている。

それだけではない。

その夢の続きを見たいと思ってしまう自分がいるのだよ。」

「おいおい。勘弁してくれよ。」

俺達はそんな会話をしていた。

だが、突然、老人は頭を抱えて苦しみ出した。

「うぅ……ああぁっ!」

「どうした!?」

「あっ…ああっ…!メアリー!メアリィィィーーーーッ!!」

私は絶叫しながら飛び起きた。

私の目の前にあるのは薄暗い部屋だった。

そこは廃墟の街の外れにある私の部屋で間違いなかった。

私はベッドから降りて窓の外を見ると朝日が出ていた。

どうやら夜通し眠っていた様だ。

私は顔を洗い孫娘のメアリーの元へと向かう。

メアリーの部屋の前に着きノックをするが返事はない。ドアノブを回すと鍵は掛かっておらず簡単に開いた。

中に入ると部屋の隅で震えているメアリーがいた。

私は声をかける。

「大丈夫かい?メアリー……」

私の声に反応する。

「おじいちゃん……ど う し て 私 を 閉 じ 込 め た の ?」

彼女は虚ろな目でこちらを見て言う。

「……仕方がなかったんだよ。こうしないと君を守る事が出来なかったんだ。許しておくれ。」

私が答えると、彼女は首を傾げながら

「守る?どうして?」と言う。

「君は狙われているからね。」

「狙わてる?誰に…?」

「……あのふしだらな女に。」

「どうしてお母さんを馬鹿にするの!?お母さんは…」

「黙れェェッッッ!!!!」

私は可愛い孫娘の頬を引っ叩いた。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。

「あの女のせいで!!あの女せいで!!!」

「やめてぇええっ!痛いぃいっ!」

私はメアリーの服を破り捨て全裸にした。

「何故、ワシはこんな目に遭わなければならない?お前を愛してるだけなのにッッッ!!!ワシはただ愛してるだけだァアアアッッ!!!」

私は叫びながら彼女の身体を殴り続ける。

「ぐぎゃぁあああっ!」

彼女が悲鳴を上げるが構わず殴った。

やがて、彼女は動かなくなったので首に手をかけて締め上げる。

……その瞬間。


「ふーん、そう言う事かよ。爺さん。」

振り返った先に居たのはゼクターと名乗る店の常連客。

気付いたら孫娘はミイラの姿になっていた。


俺は爺さんの心の狂気を目覚めさせ、この監禁部屋まで案内させた。

爺さんは自分の孫娘を愛し、閉じ込めたらしい。

既に孫娘メアリーは死んでミイラみたいになっている。

「爺さん、それでどうするよ?罪を認めるかい?それともまだ続けるのかな?」

俺が問いかけると爺さんは泣き出した。

「違うんじゃ!ワシは悪くない!全部あいつが悪いんじゃ!!ワシは何も悪くない!!!」

そう言って爺さんはまた暴れだす。

「はい、落ち着いてェ。」

俺は爺さんの狂気を取り払い正気を戻した。すると爺さんは涙ぐみながら謝罪の言葉を口にした。

「ごめんなさい。本当に申し訳ありません……。貴方の大切なお孫さんを傷つけてしまいました……。どうか許して欲しいです。もう二度とこのような事は致しませんから……。」

「あーダメかぁ。」

たまにあるんだよな。

罪を犯した自分と善良な自分を分離させちまう状態が。

まあそれはそれで良いや。

俺はノニルカードの力でメアリーを蘇らせた。

それから、爺さんはメアリーを贖罪として世話する様になった。

既にイーデォンとしての正しい自我は崩壊している。

完全に崩壊した精神は俺でもどうする事も出来ない。しかし、爺さんには罪の意識がある。

だから、こうして世話を焼いているのだ。

だが、爺さんは心の中でずっと後悔していた。

(ワシは何て事をしてしまったんだ……)

爺さんはメアリーを殺した事で深い罪悪感を感じていた。

それで良い。これこそが正しく平和的な断罪だ。

『本当にそれで良いのでしょうか?私は納得出来ません。』

ララ・シュヴラの声が聞こえ、俺は顔を顰めた。

「何が気に入らないんだよ?俺はお前が望む断罪って奴をしてるんだぜ?」

『これの何処が断罪ですか!?これは強制的な贖罪…しかも、命を弄んでいるとしか思えません!』

ララ・シュヴラは怒りを露わにした。

「うるせぇな。この世界じゃこれが一番穏便な方法なんだよ。

人間は学ばない。そして狂気に満ちてる。だったら一度殺して、狂気に堕とし、そして生き返らせて正気に戻す。これが最も効率的かつ、人道的且つ、安全なやり方なんだ。

それにあの爺さんは償えるなら何でもしたいと思っている。そういう意味では最も相応しい罰だ。」

ララ・シュヴラは何も言わなくなった。

「さて、行くか。」

俺はそう言ってこの店を出た。

その後爺さんは彼女が自分の孫娘とは知らず自分はただの犯罪者だと思い込みながら甲斐甲斐しくメアリーを世話しているらしい。

これで自殺さえしなけりゃ俺の出る幕は無い。

……そもそも、何で俺がこんな人助けを始めたかと言うと、まず俺の半生を語らねばならない。

俺はとある小さな村で生を受けたが、その村は疫病によって滅んでしまった。

生き残ったのは当時13歳の俺だけだった。両親は死に、兄弟も友人も恋人さえも失った。

俺だけが一人生き残り、途方に暮れていた時、一人の老婆が現れた。

彼女は俺にパンや干し肉を分け与えてくれた。

それが何と、ドルイス共和国の大将である白銀の女王イセス・ミュズレとは思わなかったが。

俺は彼女に修行をつけて貰い、紹介で軍人となった。それから数年後、彼女は老衰で亡くなった。

俺は彼女が話していた生命の守護者になる事を夢見ていた。

生命の守護者とは

生命を慈しみ守り育てようとする者が辿り着く極致にして究極の境地であり、それはあらゆる困難を乗り越えた先にのみ到達できると言われている。

そして、その守護者は生命の敵である生命を喰らう者と戦う使命がある。

俺は疫病で愛する人々を失ったからこそその存在がとても尊い物の様に感じていた。

だから、俺は生命の守護者の道を歩む事にした。

だが俺が与えられる任務は戦争で人々を殺す事ばかり。

最初は抵抗があったが、徐々に慣れていき、気が付けば戦争を楽しんでいた。

俺は自分が殺戮者だと自覚していたが、それを悪いとも思ってはいない。それは今もだ。

生命の守護者とは時に生命を奪う矛盾も孕んでいる。

だから時には人を殺める事も躊躇いなく行わなくてはならない。

しかし、そんな日々は長くは続かなかった。

ある日、俺は戦場で瀕死の重傷を負った。

その時、俺の前にイセス・ミュズレが現れてこう言ったんだ。

「お前さんはまだ若い。まだまだこれからじゃないかね?」

そう言って彼女は消えていった。

これが最期の言葉だった。

それから数日後、俺は意識を取り戻した。そして自分の体を触ってみると、傷は全て塞がっていたのだ! 信じられなかった。

一体誰が…と思った時、俺の手には大きく薄い鎌が握られていた。

それこそが、断罪の鎌ノニルカードだった。

そしてその中に眠るララ・シュヴラとの腐れ縁の始まりでもあった。

ララ・シュヴラは俺に言った。俺はノニルカードの所持者に選ばれたのだと。

『貴方はこれから断罪と言う使命を通して生命の守護者としての使命を果たして頂きます。

貴方が生きるべき生命と死ぬべき生命を決めるのです。』

俺はその言葉に歓喜した。

あれだけ焦がれていた生命の守護者になれたのだから。

そして、俺はララ・シュヴラと共に戦う事を誓った。

しかし結局俺はノニルカードを上手く使いこなす事も生命の守護者としての役割も果たす事が出来ないでいた。

その理由は俺が殺人と死に慣れ過ぎてしまっており、生命を慈しむ心を忘れてしまっていたからだった。

それに気づいたのは、ある出来事があったからだ。

俺には当時親友と呼べる存在ギザ・デジフがいた。

俺達は二人で一緒に任務をこなしていたが、ある時、ギザは誤って仲間を殺してしまった。

そいつの名はエリン・デニングス。

彼女は元傭兵だったが、今は平和な暮らしをしていたらしい。

エリンとギザは恋仲になったばかりだというのに…。

日に日に弱って行くギザを見ていられなくなり、

俺はララの制止も聞かずノニルカードの力でエリンを復活させた。

だが…ギザは生き返った彼女と対面した瞬間発狂した。

「ああぁあ!もう死んでくれよぉおお!」

そう叫びながら、彼はエリンを何度も殴り続けた。

俺が止めに入らなければ、間違いなく殺されていただろう。

その後、ギザは精神病院に入院する事になったが、エリンは毎日見舞いに行き続けていた。

……俺には生まれつき不思議な力があった。

それは他人の心が解る事だ。

心が解ると言っても人の苦悩と言うか狂気と言うのがオーラみたいな物で理解出来る。

正常で清らかな人のオーラは美しい光を放ち輝いているが、 異常で穢れた者のオーラは不気味さを感じさせる濁りきった色をしているのだ。

ただ単にその人の心を覗けるだけではなく、相手の思考や感情を読み取る事が出来る。

つまり、嘘も見抜く事が出来てしまう。

そんな俺の目から見ても今のギザは明らかにおかしい。

エリンを殺し、彼の心に歪みが生じてしまっている。

このままではまずいな……。

ギザの精神状態が悪化して、いずれ取り返しのつかない事になるかもしれない。

焦っていた俺は言った「だったら罪滅ぼしとしてエリンに永遠に尽くせよエリンが死ぬまで!!」

俺がそう言った瞬間ギザは

笑みを浮かべた。

「そうだね。そうしよう」

彼はそれだけ言うと病室から出て行った。

それから暫くして、ギザが入院している病院から連絡があり、彼が自殺した事が伝えられた。

俺が駆けつけた時には既に遅く、屋上のフェンスを乗り越え飛び降り自殺をしたのだろう。

俺は怒りでノニルカードの力ですぐにこいつを復活させた。

ギザはエリンを殺したと言う罪から逃れようとして自殺した。それが許せなかった。

俺は無理矢理にギザをエリンに奉仕させた。

ギザは苦しみ続け何度も自殺したがその度に復活させた。だが、ある日を境に彼は自ら命を絶とうとしなくなった。

どうやら死ぬのにも飽きてきたようだ。

エリンに全ての罪悪感を打ち明けエリンはそれを許し、ギザは退役して何処かへ消えた。

エリンが赦しギザも死ぬ事をやめたので奴への断罪は終了した。

現在ギザはララに寄ると「今は幸せ」らしいので安心した。

俺は罪人も巻き込まれた被害者も不幸にしたい訳じゃない。寧ろ救いたい。

俺はこの成功体験から自分が特別な人間だと思い始めた。

そして俺は考えた。

この力で世界を平和にしてみせる!

俺は俺のやり方で生命の守護者になる。

生命の守護者の始祖ララ・プラントに近付くんだ。

そして俺は19歳で軍を退役してこの7年間生命を慈しみ守る活動をして来た。

俺の役割は罪人を一人でも減らしなるべく誰も殺さない。

それに寄って一度人の人生や心が滅茶苦茶になっても、それは試練でしか無い。

それが俺なりの断罪の答え。生命を慈しみ守る活動の中で、俺は様々な人に出会って来た。

その中には当然悪人もいたが殆どが善人だった。

そんな善良な人達と触れ合う中で俺は気付いた事がある。

人は皆違う。

同じ人間なんて一人もいない。

だからと言ってその違いが悪い訳ではない。

悪いのはその違いを受け入れず自分の価値観で相手を判断してしまう事だ。

人は他人を理解出来ない。

他人の考えや行動は解らないからこそ人間は争いを止められない。

そしてそれ故に相手を理解しようと努力する。

しかしそれでも分かり合えない事もあるだろう。

だからこそ俺はこれからも生命の守護者として断罪し続ける。

この断罪の鎌ノニルカードで。

……だが、俺には今どうにかしないと行けない事がある。

そもそも何故こんな山脈の街ドォーガに居るかと言うと…それもこれもあの忌々しいダクドゥ・ア・ルージのせいだ。

アイツに俺の罪人を奪われた挙句、負けてしまいこんな辺境の地に有金も何もかも奪われて捨てられてしまった。

俺に残ったのはこのノニルカードだけだが、これを金儲けの道具には出来ない。

……だが、働かないと旅は出来ない。

そんな訳で俺は今この山脈の中にある街の中を彷徨っている。

この街は廃墟の街でも比較的綺麗だった場所。

機械の残骸が散らばっていて瓦礫が沢山ある。

まるで昔テレビで見た大昔の地球の光景みたいだ。

用心棒でもやって金を貯めたい所だけどそんな仕事は無いらしい。

なので廃墟で兵器を倒したり使えそうなパーツを集めて生計を立てている。

まあ、たまに街の中に侵入して来るモンスターを倒しても良いんだが……。

「さあてどうしようかな?」

そう呟いた時だった。

ドゴオオオン! 爆音が聞こえた。

何かと思って見に行くとそこには巨大なロボットがいた。それは巨大な機械仕掛けの神の様でもあった。

そしてそのロボは俺に向かって拳を振り下ろして来た。

「うわっ!?」

慌てて避ける。

何なんだコイツは? 一体何処から現れたんだ。

すると巨大ロボはまた拳を振るって来た。

俺は避けながらも懐から出した銃で奴の眼を撃ち抜いた。バキュン!! 命中したが効いてないようだ。

ならこれならどうだと剣を出して斬り付ける。

ザクッ 金属音と共に弾かれた。

クソッタレ。

硬過ぎるぞ。

ならばと思いノニルカードを取り出し振るった。

ザシュ!!今度は切れた。

しかも切断面から血みたいなオイルが出てる。

やはり普通の武器では倒せないのか。

しかしあのロボは何の為にここに居るんだろうか? 俺を殺す為か。

それにしてもあの巨体でよく動けるもんだ。

いや、それよりもこのロボは誰が作ったんだ。

「とりあえず倒すしかないな……」

俺はノニルカードの力を使い、ロボットの生命を奪った。ドスンと倒れ込む。

一応装甲を剥ぎ取り使える部品だけ頂く事にする。

「これは売れるかもしれない。後で売りに行こう。」

そう思いながらロボから出る。

その時だった。

ズシンと大きな足音が聞こえる。振り向くとそこには先程の巨大なロボより更に大きい巨人が立っていた。

「デカ過ぎないか?」

思わずそう言う。

多分50mはあるだろう。

しかもそいつは何故か俺を見つめている。……襲ってくる気配はない。

少し安心しかけた時だった。巨人の頭に付いている目が光ると俺の体は動かなくなった。

体が動かない。声すら出せない。ヤバイと思った時には既に遅かった。

ドカアアン!!!! 俺は吹き飛ばされて地面に叩き付けられた。

身体中が痛む。骨が何本か折れている。

何とか立ち上がると俺を吹き飛ばした巨人はもういなかった。

それから数日は痛みのせいでまともに動けなかった。だがようやく動けるようになったので例のスクラップ置き場に行ってみた。

スクラップ置きにはロボット以外にも様々なものが置いてあった。例えば壊れた車とか。他にはボロボロになった服もある。

「こりゃ良い金になりそうだ。」

案の定売ってみたらしばらく金に困らない額になった。

俺は早速山を降りて都会を目指す事にした。その途中でロボや盗賊に出会ったが難なく倒し進む。

すると街が見えてきた。この街は機械の街と呼ばれているらしい。

何でもここは機械産業が盛んだと言う事なので行ってみる事にした。

街の入口に着くと門番らしき人物がいた。

「ここから先は立ち入り禁止です。」

そう言われたので俺は素直に言った。

「すまない。俺は旅をしている者なのだがここに来たばかりでね。色々と教えてくれるとありがたいのだが……。」

すると彼は驚いた様子で言う。

「旅人の方ですか。珍しいですね。分かりました。私で良ければお話しましょう。」

どうやら話は通じるようだ。

俺は礼を言いながら街に入る。

まず最初に宿を取りたかったので場所を聞く。すると案内された。

部屋に入ると荷物を置いてベッドに座る。そして一息ついたところで彼が話しかけてくる。

「さて、それじゃあ話を始めようか。何から聞きたいかな。」

俺は彼に質問をする。

「この辺りの地図を見せて欲しい。それとこの街の事について詳しく知りたい。」

彼は快く応じてくれた。

「分かった。ちょっと待ってくれ。」

そう言って彼は紙とペンを持ってくる。「これがこの街の大まかな全体図だ。」

渡された地図を見るとやはり大きいな。ここに来るまでに色々な国を回ったがここまで大きな街は見たことがない。

「ありがとう。」

そう言いながら地図を返す。

「この街は機械の国と呼ばれていて、その名の通り機械製品の生産が主になっている。他にも色々あるけど大体こんな感じだよ。」

「成程。それでここの主な特産品は?」

「主に金属類だね。あとは工業用のロボットも作っているよ。」

ふむ。悪くないな。

「この街には冒険家はいるのか?それとも傭兵がいるのか?」

「残念だけどいないんだよね。だから魔物と戦う時は兵士さん達と一緒に戦うんだよ。」

なるほど。確かにそれはありがたい。

その後も幾つか質問をして答えてもらった。

それから更に数日が経ち、俺は活動を開始する事にする。

俺は一つの街で3人の罪人を裁く事をルールにしている。

何故なら3人と言う数は俺にとって都合が良いからだ。

多すぎもせず少なすぎず、丁度良く管理が出来る。

1人目は殺人鬼だった。奴は子供ばかりを狙っていた。理由は子供の肉の方が美味いからと言っていた。

2人目は放火魔だった。奴は自分の家が火事になって全焼した時、自分は無事だったが家族全員が焼け死んだらしい。

3人目は窃盗犯だった。奴の犯行は金品が盗まれた状態で家ごと燃やされていた。

コイツらに近づきゆっくり裁くとしよう。

とりあえず俺は安アパートを借りてそこに住む事にした。

「ララ、新しい生活が始まるな?」

俺がそう言ってもララは無視。

何故かララはトオ・ル・クレストの一件以来機嫌が悪かった。

そりゃ、俺もダクドゥ・ア・ルージに邪魔された事は未だに腹が立ってるがもう過ぎた事だ。

俺は今までの長髪にスーツ姿の目立つ姿からショートカットにして今時の若者風にしてみた。

まぁ、見た目なんてどうでも良かったが目立ちたくは無いし罪人達に変な印象も与えたくない。

俺もたまには休息が必要だ。

今日は休みにするかな。

さて、何をするか。

……ララはまだ不機嫌なままだしな。

散歩でもしに行くか。

俺は外に出た。

俺はゼクター・ジック。

断罪の鎌の所持者にして生命の守護者となるべき男。今は1人で暮らしている。

ララは相変わらず不機嫌だ。

俺がララの方を向くとララは目線を反らす。

一体何なんだ? 仕方ない。少し外を歩くとするか。

俺は街に出ると様々な人間がいる。

例えば、あの女は通りすがりの男を誘惑しては身体を売っている。

あっちの女は子供を連れているが、その心は子育てと仕事に追い詰められ狂気が見え隠れしている。

全く、愚かにも程があるな。

だが心配するな。

俺の正気と狂気を操る力があればこいつらに罪を犯させる事が出来る。

そしてノニルカードの力があれば生死は思いのままだ。

そもそも俺のこの正気と狂気を操る力だが、元々持っていた訳では無くあるきっかけを得て手に入れた物なのだ。

そもそも俺はただ人の感情の波を見る事が出来るだけだった。

特にマイナスの波動に関しては敏感だった。

しかし軍人となり、生命の守護者としての活動をして様々な人間を見ていく内に

俺は催眠術を学び、人間観察を繰り返し人間を洗脳する方法を見つけ出した。それは本当に簡単な事だった。

まず相手の視界に入らないように後ろから近づき声をかける。

すると相手は勝手に恐怖心を増幅させて、俺の声に反応してしまう。

そして次に相手を安心させる言葉を言ってやると、人間は簡単に暗示にかかり、簡単に正気を崩したり逆に元に戻したり出来る。

人間の心等その程度の不安定な物なのだ。

だが、俺のルールは一つの街に3人のターゲット。

あの娼婦も母親も今回は見逃してやろう。

さて、そろそろ仕事に取り掛かろう。

片手間に傭兵としてこの街に自分を売り込んでやろう。面白くなりそうだ。

俺はいつものように、罪人の背後に立つ。

「お兄さん。」

ほら掛かった。

さぁ、始めよう。断罪を。

さぁ、君達はどこまで耐えられるかな?

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