第一章『彼女の真実』
ここは1000億年後の地球。
地球は何度も滅び、そして再生を繰り返した。
星の殆どは水没してしまい、私はこの水に殆ど沈んだ街で暮らしている。
ここは地球の何処かにある街。
でも誰もいないし、私も他の生き物がいないから、何処なのか分からない。
この街には色々な機械があるけど、どれもこれも壊れて動かない。
私はこの機械をどうにか動かしたいから、今日も街の散策をして様々なパーツを探している。
ここの水は不思議な色をしている。
とても綺麗な青色だ。
この水はとても透明度が高いらしく、遠くまでよく見えるらしい。
私も気になって見に行ってみたけど、凄く青くて吸い込まれそうだった。
私は水の中にいる魚を見たりして遊んでいる。
私の体はアンドロイドだから呼吸をする必要がない。
ずっと水中にいることが出来るのだ! 水の中に入ると、何故か少しだけ寂しい気持ちになる。
でもすぐに楽しくなって遊び始める。
「ララ~!」
私が遊んでいると誰かの声が聞こえてきた。
声の方を見るとそこには小さな男の子がいた。
「メリヴァン!遊びに来たの?」
彼は少年型アンドロイドだ。彼はいつも私に会いに来てくれる。
私にとって大切な友達の一人だ。
「うんっ!一緒に遊ぼう!」
「いいよー!何する?」
「えっとね……う~ん!冒険したいっ!」
「…じゃあ、久々にバーチャル世界にログインしてみる?」
「やったぁ!行く行く!!」
「それじゃ行こうか」
こうして私は彼に手を引かれながら、仮想世界へと旅立った。
その光景は、超現実主義、シュールレアリズムの様な奇妙な世界。
薄紫色の空に、洗練されたベッドと床。
周囲には透明な水晶玉が転がっている。
この空間の中心には、大きな鏡があり、それに映るのは、二人の姿。
しかし、それは、ただの映像ではない。
二人の魂が映し出されているのだ。
片方は、幼い少女。
彼女は長い金髪をしており、瞳の色は薄いブルー。
肌は白く、体形は細身でスレンダーだ。
そして、彼女の背丈は130cmぐらいしかない。
まるで、等身大の人形の様に見えてしまうだろう。
そんな彼女が着ているのは、白を基調としたワンピース型のドレスだ。
スカート部分にはフリルが付いているが、かなり簡素に見える。
一方、もう一人の男性は中年の男性である。
黒髪短髪をしており、顎髭を生やしている。
年齢は50歳くらいだろうか? 身長180cm程あり、体格も良く筋肉質だ。
服装はスーツ姿であり、いかにも仕事が出来るサラリーマンといった感じである。
ただし、彼の顔色は悪く、目の下には大きなクマが出来ていた。
そのせいか、全体的に疲れ切った印象を受ける。
「さて、どうしようかな。」
この魂は、自在に編集が可能だ。
この姿のままでも良いけど、これはデフォルト。
せっかくだしたまには変わった姿になりたいけど。
「メリヴァン、今日はどんな姿になりたい?」
「うーん、そうだなぁ・・・。」
メリヴァンが考えている間に、私は自分の姿を編集していく。
素体は130㎝しかない小柄な子供、じゃなくて、165㎝くらいの大人の女性に変える。
それから、化粧も少し変えよう。
アイシャドウとリップの色味を変えるだけで随分変わる。あとは、服のデザインを変えれば完成だ。
「よし、出来た!」
「わあ!ララ、可愛いね!じゃあ僕はね…。」
そう言ってメリヴァンも自分の姿を編集して行く。
その姿を見た私は思わず吹き出してしまった。
だって、彼が選んだ姿があまりにも面白かったから。
彼はなんと、2m近い巨漢になっていた。
しかも、その見た目はプロレスラーのような風貌になっている。
黒いタンクトップを着ており、腹筋も割れており、とてもワイルドな顔立ちだ。
メリヴァンは大柄な男性に憧れがあるのか、いつも身長が高くて男らしい姿にする。
「ふぅ……、やっと完成したよ。ララはもう出来てるんだよね?」
「うん!ほら!」
そう言うと私はその場でクルリと回って見せた。
すると、スカート部分がフワッと舞い上がり、綺麗な脚線美が見える。
「おおっ!綺麗だ!」
「有難う。じゃあ、そろそろ行こうか。」
「うんっ!」
そうして、私たちは歩き出す。この仮想の空間を。
まずは美しい青紫のグラデーションの美しい水の上を歩行して奥へ奥へ進んで行く。
しばらく歩くと、深い森に辿り着いた。
森の奥にはキングサイズのダブルベッドがあり、その上には水晶玉が置いてある。
そして、その水晶玉の中には一人の男性が眠っていた。
私は彼に話しかける。
「こんにちは。あなたの名前は?」
「俺は、俺だよ。」
「ふーん、俺さんはこんな所で何をしてるの?」
「寝ているんだよ。ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと」
ああ、そうか。
彼は水晶玉の中に閉じ込められて狂ってしまったんだ。
それとも、狂ってしまったから水晶玉に閉じ込められたのだろうか。
メリヴァンが私の腕をぎゅっと掴む。
「ララっ、怖いよお…。」
「大丈夫、私がいるよ。私が守ってあげる。」
私はメリヴァンの手を握ってあげた。
「ありがとう。僕がララを守るよ!」
「嬉しい。じゃあ、行こっか。」
「うん!」
こうして、私たち二人はまた歩き出した。
その先には高層ビルが立ち並ぶ街並みがあった。空を見上げると、大きな飛行船が浮いている。
私はビルの屋上に立って、街の景色を眺めていた。
このビルは地上40階程で高さ100mはあるだろうか? 周囲は超高層ビルに囲まれていて、まるで空中都市にいるみたいだ。
でも、人の気配はあまり感じない。
私達は自由気ままにビルの中を散策したり、空も飛べる。
「ねえ、メリヴァン。この世界は面白いね。」
「そうだね。それにしても、本当にここは仮想の世界なのかな?」
「さぁね。まぁ、今は気にしなくても良いんじゃない?」
「それもそうだね。」
そして私達はあるビルの中へと足を踏み入れる。
ここはホテルだ。豪華な内装が目に入る。
受付カウンターには誰も居らず、ただ無人のロビーが広がっているだけだった。
私はその光景を見て呟く。
「何だか寂しい場所だな……。」
私は辺りを探索する為に、ホテル内を歩いて行く。
そしてとあるホテルの一室に辿り着き、扉を開けるとそこには晴れ渡った空と草原が広がっていた。
「わぁ、凄い!綺麗!」
「本当だ!気持ちいいね!」
私とメリヴァンは手を繋いで走り出す。
しばらく走っていると、今度は小さな丘が見えてきた。
丘の上には一本の木が生えており、その下には誰かがいた。
それは…、一人の男性だった。
その男性はこちらに背を向けたまま、木の下で何かをしているようだ。
私は彼に話しかける。
「こんにちは。」
「やあ、こんにちは。君は誰だい?」
「私はララ。あなたの名前は?」
「僕はレインだよ。」
彼はそう答える。
「そうですか。ところであなたは何をしてたんですか?」
「花を育ててたんだ。」
「へぇ、どんな花を咲かせてたんですか?」
「薔薇の花だ。」
「そうなんですね。綺麗な色してますもんね!」
「うん、綺麗だよね。君にも見せてあげようか。」
すると、彼は手を伸ばして一輪の薔薇を摘み取ると私の方に差し出してきた。
私とメリヴァンはその美しい青い薔薇を受け取ると、それをじっと見つめる。
すると、急にその薔薇が光輝き始めた。
私は驚いて思わず落としてしまう。
「うわっ!?」
「あっ!ごめんなさい!驚かせたかな?」
「はい、大丈夫です…。この薔薇は一体?」
「それは『奇跡の薔薇』と言って、この仮想空間の中でしか咲かない特別な品種なんだ。この仮想空間では時間が止まっているから、永遠に枯れる事はないんだよ。」
「へえ、そんなものがあるんだ……。」
「うん、この仮想空間の中では時間という概念が存在しないからね。」
「ふーん。」
「じゃあ、また会おうね。」
「はい、また会いましょう。」
そうして、彼と別れた後、私たちは歩き続ける。
この仮想の世界を楽しみながら。
私は歩き続け、とある場所に辿り着いた。
そこは巨大なドーム型の建物がある広場のような場所だ。
周りを見ると、沢山の人々が集まっているのが見える。
私は人々に声をかけてみる事にした。
「こんにちは!」
「おお、嬢ちゃん。元気かい?」
「はい、元気ですよ。おじさんは?」
「俺も元気だぜ。今日は皆で集まって野球大会をやってるところだ。」
「へぇ、面白そうですね!」
「だろう?ほら、お前らも混ざれよ。」
「ええっ!私は…ど、どうする?メリヴァ…」
困った様にメリヴァンへ視線を向けたその瞬間、メリヴァンの姿が消えてしまった。
「あれっ?メリヴァン?どこに行ったの?メリヴァァアアンッ!!」
私が叫ぶと同時に、人々がざわめき始める。
「おい、あいつ消えたぞ!」「バグじゃないのか!」「早く運営に連絡しろ!」
「クソッ!ふざけんじゃねぇよ!」「もう二度とログインできなくしちまえば良いだろ!」「ああ、そうだな。よし、全員で殺せ。」
そして人々は私に向かって襲いかかってくる。
私は慌てて逃げ出した。
しかし、人々の数が多すぎて私は逃げられず、ついにはログアウトしてしまった。
少なくとも、これで私の『魂』は破壊されずに済んだ。
気が付くと私は先程の水辺いたけど…隣にいるはずのメリヴァンは…
「メリヴァ…ン……?」
「やあ、お目覚めかい?」
「メ、メリヴァン!良かった、無事だったのね!」
「うん、僕達は死なないさ。でも、あの人たちは死んでしまったみたいだね……。」
「え!?嘘、でしょ…。仮想世界で何が起こってるの!?やっぱり運営に連絡を…って、連絡出来ない!?」
私の通信機能が、使えない…?どうして?
うろたえる私を前にメリヴァンは立ち上がり、
「ごめんね。ララ。キミの通信機能…と言うかアンドロイドの連絡機能の全てを一時的に遮断させて貰っている。」
「ちょ、ちょっと!?どういう事!?貴方なんでそんな事、出来るの…!?」
私はその場に座り込んでしまう。
彼は一体どうしちゃったの?よくよく考えると口調も微妙に可笑しい。
ただ、何処かで聞いた事がある様な…。
「あ、そうだ。」
「……?」
「君に見せたいものがあったんだ。」
彼そう言うと歩き出し、私も急いで追いかけた。
進んだ先の廃墟には……小さな薔薇が咲いた庭があった。その薔薇はとても美しく輝いていた。
まるで、太陽の光を浴びて輝く月の様に。
「綺麗でしょう?」
「え、えぇ。とても綺麗だわ。」
でも、どうしてこんな所へ私を……。
いや…と言うか、彼は、メリヴァンじゃない!!
私は思わず後ずさり、
「ねえ、…貴方は…レインなの?」
仮想世界の庭で出会った、光輝く薔薇を育てていた男性だ。
彼が何らかの方法でメリヴァンのボディを乗っ取っていたとしたら…。
彼は嬉しそうに微笑むと、
「うん、正解だよ。」
と言ってきた。
私は驚きながらも質問を続ける。
「じゃあ、この薔薇は……。」
「いいや…、この薔薇は奇跡の薔薇じゃない。ただの、現実世界にある薔薇さ。」
確かにそうだ。だって、今いるここは仮想世界からログアウトした現実世界。
あの美しい薔薇は、仮想世界にしか有り得ないものなんだろう。
「え?」
「僕はね、現実では医者をしているんだ。専門は精神医学。」
「そ、そうなんだ……。」
「あの仮想空間はね、ある科学者が作ったものなんだ。その科学者の名前はメリヴァン。彼は人類を幸せにする為に作ったんだ。」
「メリ…ヴァン…?じゃあ、私が今まで友達だと思ってたあのメリヴァンは…?
「あの『魂』はメリヴァン博士がリセットした、幼児だった頃の人格だ。このままずっと永遠に、子供のままでいたかった。僕も。
……でも、彼は出会ってしまった。もう一人の自分、レインにね。僕の事だよ。」
「……えっ!?ど、どういうこと?意味が分からないよ!」
「君はメリヴァンと出会った事で、仮想世界の世界へ度々誘い一緒に遊んでいたね?」
「え、あ……う、うん……。」
「でも、それはメリヴァン博士が仮想世界に散りばめた記憶の欠片と出会う切欠を与えてしまった。その欠片の一つが僕さ。」
「つ…つまり、もう私が知ってるメリヴァンには会えないって事…?」
「そういう事になるかな?あの幼児体は僕の中に吸収されてしまった。すまないね。悲しい思いをさせてしまって…。」
「そんな…酷いよ……。」
「ごめんね。しかし、キミには一つ言わなければいけない事がある。共鳴振動装置ララ・プラント。」
私はハッとして顔を上げる。何故なら、その名前は……
「どうして……その名前を貴方が!?
「僕の集めた記憶の中のメリヴァン博士が教えてくれたんだよ。」
「えっ!?それってどういう事?」
「ふぅ……。まずは落ち着いて話をしよう。」
「う、うん……。」
私は深呼吸をして心を落ち着かせると、彼の話を聞く事にした。
「あの日、仮想世界を作った科学者メリヴァンはこう言った。『仮想世界に行けば、現実の嫌な事も忘れられる』ってね。」
「え?でも……仮想世界で楽しい事をすれば、現実でも良い事が有るんじゃないの?」
「いや、違うんだ。メリヴァンは言っていた。あの仮想世界には良い事しかないと。そして、それが人間の脳の仕組みだと言っていた。」
「脳の……?どういう事?全然話が見えないんだけど……。」
「例えば、キミは何か悩み事があるとするね?すると、キミの頭の中で思考回路にバグが発生する。キミはそのバグを解決する為に様々な行動を取る。」
「う、うん……。」「だが、どんな行動を取ろうとも、解決策なんて見つからない。そこでキミは諦めてしまう。」
「まぁ……そうだよね……。」
「そう。だから、メリヴァンは考えた。この問題を解決するにはどうしたら良いのか?そうだ、悩みの無い世界を創れば良いのだと。」
「なるほど……。それで仮想世界を創り出したと?」
「その通り。そして人類は肉体を捨て、切り離した魂をアンドロイドの中に移植して生き始めた。人は永遠の命を手に入れたんだ。
あの世界の住民は皆、幸せなんだ。悩んでいないからね。…でも、ある時から綻びが生じ始めた。」
「え?何で?だって、あんなに楽しそうにしてたのに……。」
「原因は分からない。ある日突然、住人達が狂いだした。」
「狂いだす?」
「ああ。まるで……、プログラムされた機械のバグの様にね。」
「じゃあ、貴方はどうして大丈夫なの?」
「僕は精神科医だ。患者のカウンセリングをする為に精神状態を把握している。つまり、この身体は正常に機能しているという訳さ。」
「そっか……。」
「メリヴァンは理想の世界を造ったはずだった。なのに、何故こんな事になったんだろうね?」
「それは……私にも分かんないよ……。」
「そうか……。じゃあ最後に、キミが何者か教えてくれるかい?共鳴振動装置ララ・プラント。」
「え?わ、私はただの子供だったよ!ちょっと病弱だったけど…それ以外は普通の人間だった!!」
「確かに人間の頃はそうだったかも知れない。でも今のキミは…この星で特別な存在だ。キミは何の為に造られたんだい?」
「そ、そんな事……知らないよ……。」
「ふむ……。じゃあ質問を変えよう。君は誰に造られたんだ?」
「……?だ、誰かにって言われても……覚えてないし……。それに造られたとかじゃないと思う……。」
「では、キミはどうやって生まれたんだい?」
「うーん……、よく分からないけど……多分、神様みたいな人が居たんだと思うよ。」
「神のような人……ね。ちなみにその人の性別は?」
「えっ?女の人だったよ。凄く綺麗な人だった。」
「…………。」
「あ、あれ……?ど、どうかしたの?」
「いや、何でも無いんだ。気にしないでくれ。」
「う、うん……。」
「ふぅ……。もういいかな?」
「えっ?」
「答え合わせをしよう。ララ・プラント。キミは当時の惑星精神医学の権威、サリィ・シルヴァーン博士に造られた地球の生命全てと共鳴するためのアンドロイドだ。」
「私が……地球そのものと共鳴する為の……アンドロイド!?」
「その通り。そして、キミを制御するためにメリヴァン・ロムド博士のコピーである僕、補助装置レインが生まれた。」
「う、嘘……。な、なんで……?」
「キミを造る時にミスがあったんだ。本当は地球に共鳴させるつもりだったのだろう。しかし、地球上の全ての生物とリンクしてしまった。」
「ちょ、ちょっと待って……。頭が追いつかないんだけど……。」
「そうなればキミだけでは幾多もの生物の記憶容量には耐え切れない。それを見かねたメリヴァン博士が作ったのが、僕だ。」
「わ、私はどうすればいいの…!?」
「何もするな。」
「えっ……?」
「そのままでいろ。キミは地球上の全ての生物とリンクした。そしてそれを僕が補助しているが、キミが破壊されればこの世界にもどんな影響が出るか解らない。
キミは、この星が死ぬまでここで日々を生き続けねばならない。…この星が死に絶える、その日までね。」
「そ、そんな……。」
「しかし、それが定めだ。解るね?」
「……うん。」
「良い子だ。」
そう微笑むと、メリヴァンだったレインは踵を返し、何処かへ消えて行った。
私はそれを見送りながら、途方に暮れていた。
それから暫くして、私の住む街は水没した。
水の底では沢山の機械の残骸と、壊れたアンドロイド達がいた。
そして、その奥に光輝く薔薇を見つけた。