オレンジ王国到着でやらかす
春休み直前に商業ギルドに出向く。
「契約書はレシピ登録者という者に騙されたとイチバーン商会から申し出がございました」
「なので自分達は悪くないと?」
「はい。ですのでイチバーンがシャルロッテ様とお話をしたいと言っております」
「いえ、こちらは話し合いとかするつもりがありませんので正式に訴えます。騙されたとか知った事ではありません」
「わかりました。では手続きを行います」
裁判ではないけど、こっちが全面対決姿勢を打ち出した事で衛兵も絡んでの言い分を聞く会みたいなのが開かれるらしい。その手続きは改めて期間を定めるということなので春休み明けにしかいないことを伝えた。
そして春休みに突入してオレンジに行くことになった。
クインシーも同行するので宿舎にやって来る。
「シャルロッテよ、あの飲むカイロは騎士達に好評だったぞ。来年の冬には大量に必要になるからな」
「国から支給するんですか?」
「いや、自費だ。今回は配ってやったがな」
ポーションじゃなかったらレシピあげてもいいんだけどな。
「今回はリーリャとお父さんは来てないの?」
「期間が長いから留守番だ」
クインシーがいるから護衛も無しだそう。そうかリーリャ来ないのか。とっても残念だ。
「クインシー様、長期間国を離れられても問題ございませんか?」
バレンシアもクインシーにはちゃんと接するな。
「こいつの作った回復ポーションを舐めまくって仕事を全部終わらしてきたから問題ない」
そんな使い方をしてはいけません。
オレンジに行くにはメロンに行く道のりより遠くて山越えもあるので飲むカイロも回復ポーションもラーメンも持ってきた。野営があるらしいからな。
オレンジの馬車に続いてメロンの馬車も出る。何故か俺はゼルとバレンシアの馬車に乗せられていた。メロンの馬車には乗り切れなかったからだけど。それならアームスがこっちに乗れよと思った。
何度か休憩を挟んで野営ポイントへ。山頂付近だからだろうかめっちゃ寒いし雪も残ってる。
お湯を沸かしてラーメンに飲むカイロも入れて食べる。これはこれで旨いしめっちゃ温まる。
「これはいいな。この飲むカイロはもう販売しているのだな?」
「本格的には今年の冬からだね」
オレンジの護衛たちにもラーメンと飲むカイロを配布したらめっちゃ喜ばれている。
「ではオレンジからも発注しよう。冬になる前に納品を希望する」
「まだどれだけ作れるかわかんないからね。先にメロンから発注されてるし」
「アームス、メロンはどれぐらいの数を発注するのだ?」
「母上に聞いてくれ」
「クインシー様、オレンジでも発注したいのですが」
「メロンは3千程を予定している」
それだけで金貨3枚になるな。
「ではオレンジは2千くらいか」
計5千か。作れるかな?
「これは毎日飲むカイロ作りになりそうだね」
「回復ポーションもだぞ。あれは通年使うから毎月一定数を発注するからな」
「入札は?」
「あんなもん他のやつは作れんだろ?治癒ポーションはどうなってる?」
「手を付けてない」
「上級も作っとけ。あれはストックとして必要だ」
「入札は?」
「面倒だ」
「レイン、上級治癒ポーション作れるんだよね?」
「作れる」
「クインシー様、私は手が回らないかもしれないからレインに任せていい?」
「品質が同じなら構わんぞ」
「だって。レイン宜しくね」
「いいの?あれは利益率が高い」
「だって飲むカイロとか数必要なやつは他の人に任せようとしても大量生産出来ないかもしんないじゃん」
「それはそうだけど」
「だから宜しくね」
「感謝する」
レインも稼いでくれないとね。
「お前が作ってるのは美味い回復ポーションだったな?」
「中級の回復量で銀貨10枚。そこまで回復する必要なんてほとんどないから10回に分けて使えるよ」
「今持ってるか?」
「あるよ」
「国に着いたら払うから一つ分けてくれ。明日の朝護衛に飲ませてみる」
お金は不要とし護衛は寝ずの番をしてくれるらしいので俺からのプレゼントとしておいた。これで心置きなく眠れるのだ。
朝、眠くて疲れてそうな護衛達。飲むカイロのお陰で寒くなかった分、少し眠くなってしまったようだった。
回復シロップをパンに塗って配布。それを食べた護衛達は甘さもあるし身体がしゃっきりするしとても喜んでくれた。こんなのを支給してくれるなんてとまた人気者になってしまった。
試しに馬にも舐めさせてみるとめっちゃ喜ぶ。馬って甘い物好きなんだな。腕までヨダレでベタベタだ。それを見ていたバレンシアの服で拭いておいたけど。
下りということもあるけど元気になった馬は張り切って馬車を引き、予定より早くオレンジに着いたのであった。
オレンジ王宮に着くと騎士達の出迎えがある。メロンより規模は小さいけど流石王宮だ。
「おかえりなさいませ」
まずバレンシアを迎えてから、次にクインシー、そしてアームス俺達と続く。ここまで護衛してくれた騎士にバイバイと手を振るととてもにこやかに手を振ってくれた。
王宮のメイドが部屋に案内してくれる。バレンシアは日焼けしているのだと思っていたけど、皆同じような肌色をしているのでこの地域の人達はこういう肌色なのだろう。俺を案内してくれるメイドさんもやや褐色の肌にお目々ぱっちりで可愛らしい。
「メイドさんは名前なんて言うの?」
「私ですか?」
「そう」
「ポンデと申します」
「いくつ?」
「18歳です」
小柄だからもっと若いのかと思ってた。
「ここにいる間はずっと付いてくれるの?」
「お、お嫌でしょうか?」
「ううん。可愛い子で良かったと思って。私はシャルロッテ、宜しくね」
「は、はい。宜しくお願いいたします」
こんな年下の俺に可愛い子とか言われてなんだこいつ?と思ったかな?
部屋はそれぞれ個室。ゼルも別室を用意されていたが二人で寝るからと一緒にしてもらった。一応男と女で階を分けてくれている。クインシーは最上階の特別室だ。バレンシアが俺にも特別室をも言ったのを断った。特別室担当のメイドが怖そうだったのだ。
どことなくメロンと比べてオレンジのメイドや執事はバレンシア達と距離がある。というかメロンに初めて行った時もこんな感じだったかもしれない。リーリャも初めは堅かったからな。
部屋に入るとポンデがお茶の用意をしてくれる。
「ねぇ、ポンデ」
「ハイ」
「ガータベルトしてる?」
「えっ、あっ、ハイ」
ムホホホホッ。これは見せてもらわねば。
「姫様、いきなり他国のメイドに見せろとか言わないで下さいね。慣れてるリーリャとは違います」
と、ゼルに釘を刺されてしまった。
「えーっ」
「ど、どういった事でこざますか?」
「どんなのかなぁって思って。メロンのメイドさんはのはすっごくエッチなの」
「お見せすれば宜しいのでしょうか」
「うん」
「姫様っ」
ポンデは真っ赤になりながらモジモジと自分でスカートをたくし上げた。
きゃー、エッチ!ムホホホホッ
あ、ポンデが涙目になってる。
「ご、ごめん。そんなに嫌なら嫌って言ってくれればいいのに」
「ご、ご命令には従わなくてはなりませんので」
うわ、なんかめっちゃ罪悪感だ。
「姫様、だから言ったではないですか。立場の弱い人の立場にも立って下さい」
「ごめんなさい」
「と、とんでもありません」
「ポンデは甘い物好き?」
「はい」
「じゃ、お詫びにこれあげる。疲れた時に少しだけ舐めるかパンに付けて食べて」
お詫びに回復ポーションを一瓶あげた。
「お客様様から頂くわけには」
「私はポーションを作ってるの。それはオリジナル回復ポーション。試しに使ってみて。バレンシアにもメイドさんたちに配布するように言っておくから」
ポンデはとても驚いていたけどなんとか受け取ってくれた。
そして晩飯の用意が出来たと食堂に案内される。
「クインシー王妃。わざわざオレンジまで起こし頂けるとは光栄でございます」
オレンジの王様、サンキストがクインシーに挨拶をする。続いて王妃のネーブルも。
「子離れ出来ない親で申し訳ございません。子供達が他国に行くと聞いて心配で付いてきてしまいましたわ」
嘘付け。護衛も連れて来なかったくせに。
「我が愚息バレンシアがメロンで大変お世話になったと手紙を寄越しましてな。何かお礼を思っておりましたがこうしてお招き出来たことを嬉しく思いますぞ」
バレンシアは王様の隣、王妃の隣に座ってるのは誰だろうと思っているとバレンシアの妹でユズ姫と言うらしい。バレンシアに似て勝ち気な感じがする。
一通り皆も挨拶をして食事が始まる。
・・・なぁ、オレンジのスープはどうかと思うぞ。でポテサラにオレンジジュースを混ぜるな。素直にマヨだけでいい。皆普通に食べてるけど俺は残した。不味いんだもん・・・
その後に出てきたのはカルパッチョだ。
「バレンシア、これは生の魚か?」
「気持ち悪かったら食べなくていいぞ」
皆は躊躇しているが俺は喜んで食べる。が・・・
なぜオレンジを絞ってあるのだ?不味くはない。不味くはないけどレモンでいいではないか。
「おや、シャルロッテ殿は平気ですかな?」
「はい」
「父上、シャルロッテはタコもイカも平気で食べました」
「ほう。一番無理そうである姫が、タコもイカも平気であるか」
姫ではないのだけどね。
そう言った後にポンポンと手を叩くサンキスト。
運ばれて来たのは刺身だ。ワサビも醤油もあるじゃん。
多分タイ、イカ、マグロまである。素晴らしいっ!
何も説明される前から食べ始める。
まずはマグロから。ワサビをマグロに乗せて醤油を付けて食べる。うまーい。
生魚を躊躇せずに食べるどころか醤油とワサビでいったシャルロッテに皆は驚いていた。
あれ?




