いつ死ぬかわかないから
翌日研究室でリッカとレインとラーメンを食べている時にレインが自分の正体をバラした話をする。
「そうか、話せるやつが出てきて良かったな」
「はい。耳を弄ばれました」
「ふふふ、それは良かったな」
「はい」
あ、嫌がってはないんだ。これはハムハムチャーンスっ。
「姫様、ゲスい顔をされてます」
いかん、まだ我慢だ。もっとこう親密になってからそういう雰囲気に持っていかないと。
「先生、薬草工房の本を買うか迷ってるんですけど」
「どのレベルのだ?初級のはいらないだろ?」
「いえ、スペシャルのを買うか迷ってるのです」
そういうとブーッとラーメンを吹きかけられた。
「先生、流石にこれは嫌です」
美人のリッカでも口に含んで咀嚼したものを顔にかけらるのは嫌だ。
「すまん」
ゼルがフキフキしてくれる。
「あの婆さんスペシャルのをお前に見せたのか?」
「はい」
「そうか、あの婆さんは相当お前を気に入ったのだな。しかし、金貨100枚は流石に払えんだろう?」
「私の作った新しいポーションの生産方法を教えたら金貨10枚までまけてくれるそうです」
ブーっ
フキフキフキフキ
「買えるなら買えっ。あれはこの世に一冊しかないのだ。婆さんが死んだら二度と手にはいらんかもしれん。私でも中身を知らないのだ。というか本の存在を知っているものもほとんどおらん代物だぞ」
リッカから絶対買えと言われたので帰りに買って帰ることに。
しかし、元の世界の金額だと一千万円の買い物を続けてするとは思わなかったな。給与水準からいえばもっと高いかもしれない。
「こんにちはー」
「決心がついたかね?」
「リッカ先生が婆さんがいつ死ぬかわからんからすぐに買えって」
「相変わらず口の悪いやつじゃ」
「本当に金貨10枚でいいんですか?」
「まぁ、リッカの言葉の通り、このままこいつが陽の目を見ぬまま埋もれるより良かろう。その代わり作った物はすぐに見せに来ておくれ。明日にもワシが冷たくなってるかもしれんからの」
そう言ってヒッヒッヒと笑う婆さん。こいうことを言う人はなかなか死なないものなのだ。
本の契約の為に身分証を渡すと少し驚いたような顔をしたけど何も言わなかった。
まず婆さんが血を垂らして次に俺の血垂らす。今度は慎重にやった。婆さんが治癒ポーションを付けてくれたので何事もなかったように指が綺麗に治る。
「この本をここでちょっと見ていっていい?」
「構わんとも」
と、本をめくると様々な薬草が図解入りで説明されている。効能以外に希少価値や概ねの相場、採取場所や時期なども書いてある。そしてポーションに使う分量や生産方法も。
「ポーションの作り方はレシピ登録とかしてないの?」
「ポーションのレシピを出すといくら契約があるといっても無断で作られてもわからんじゃろ?だから基本は秘匿して自分で作って売るのじゃ。ある程度有名になったポーションは登録しても良いがな。作り方は秘匿していてもそのうちバレたりするでの」
「なるほど。この本詳しいけど味は書いてないんだね」
「基本ポーションはまずいからの」
「うん。これを元に美味しくなるよに作ってみるよ」
「楽しみにしておるのじゃ」
そして飲むヨーグルト風の回復ポーションを中の工房で実演する。
「葉と根を煮出す温度を変えるのか。それは盲点じゃ。じいさんも色々な温度や煮出す時間は変えておったが別々にはしておらなんだ」
「で、牛乳を混ぜると残ってた渋みも消えるんだ。けど牛乳が入ることで腐るんじゃないかなって」
「なるほどのぅ」
「でね、これが改良版」
「なんじゃ?これは」
と鑑定してもらうとやはり中級ポーションとでた。
「砂糖を足して煮詰めたやつ。飲み物じゃないけど舐めてもいいし、薄めて飲んでもいいと思うんだよ」
「ほーっ」
「元々はイチゴに付ける為のソースなんだけどね」
「舐めるポーションとはな。これならパンに付けてよいじゃろ」
「うん。そのうちジャムみたいにして売ってみる。で、もう一つ考えているのが粉末化」
「ポーションを粉にするのか?」
「うん。お湯で戻せして飲んでもいいし、粉のまま飲んでも食べても効くなら携帯用にいいでしょ」
「それが出来たら画期的じゃな」
「これからその方法を考えてみる」
他に何か無いかなと本をじっくりみていくと薬草以外にも生姜、ネギ、ニンニクとか野菜もポーションに使えるような事が書いてある。
「へぇ、野菜も使えるんだね」
「それは中級ポーションを作るのに必要な知識じゃ。元の薬草の効能を高める補助みたいなものじゃな」
なるほど。生姜やニンニクは身体を温める効能があるのか。唐辛子もそうだな。あと油の種類にもそういうのがあるな。これ飲むカイロが作れないだろうか?
「ありがとう。この本大切にするね」
「あぁ。託せる者に出会えたことを神に?感謝するぞい」
神に感謝か。もしかしたらシフォンの力がなんか働いているのかもしれん。今日はこの本と血流をよくするという薬草を買った。風邪とかに効くポーションの原料だ。
サバーンに寄ってオリーブオイル、唐辛子、生姜、ニンニク、塩を買う。
「もう晩御飯の買い物ですか?」
「いやポーションを作るの」
研究室に戻ってリッカに本を買った事を報告。
「うむ、これはちょっとお前を特別扱いしたほうがいいな。お前に別室をやるからそこを使え。他の奴らがお前の作るものに気をとられそうだ」
と、部屋を一つくれた。レインも別室を持っている。
そこで飲むカイロを作ってみる。血流をよくするポーションを作る。飲んでみると何となく土臭いというか漢方薬の味がする。これで完成してるのかどうかわからないのでレインに見せる。
「出来てると思う」
「鑑定の魔道具があればわかりやすいのにね」
「あれはとても高いみたいでここにはない」
オドバルに聞きに行ってみよう。
魔道具の研究室を訪ねると遠心分離機やミキサーが出来ていた。そして鑑定の魔道具を作れるか聞いてみる。
「可能ではあるが高いのである」
まけてくれても金貨20程度はするとのこと。サイズ的には持ち運び出来そうだ。今までにないポーションでも鑑定出来るか聞いたら魔法の類なので可能とのこと。
えい、買っちゃえ。これから先もずっと使うのだ。
時間がかかると言われたけど発注しておいた。レインから言われたポーションの価格はボッタクリじゃないと言われたのがよくわかる。湯水の如く金が無くなっていくのだ。
研究室に戻って飲むカイロの作成再開。効能はわからないので味で決めていく。
血流を良くする薬草、生姜ニンニク塩唐辛子オリーブオイルだ。
できたのを一口飲むと辛いスープみたいで美味しい。漢方薬臭さもなくなっている。だが油が分離してしまうからポーションとしてはどうかな?
乳化させたらいいかな?パスタの茹で汁の代わりにラーメンの茹で汁でポーションをつくる。仕上げにオリーブオイルを垂らして行くと少しトロミの付いたスープみたいになった。何となくペペロンチーノみたいな味だ。
これを持って薬草工房に。
「お婆さん、これ鑑定して」
「なんじゃこれは?」
「飲むカイロ。寒いときに飲むと体が温まるとおもうんだ」
鑑定してもらうと飲むカイロと出たらしい。効能は飲むと一定時間体が温まり寒さをしのげるとのこと。新しいポーションは名付けた人が決めるのだろうか?とても不思議だ。
ちなみにこの世界にカイロという言葉は無かったのだ。
ゼルと自分で実験する。同じ量を飲んでどれぐらい体が暖まるかと効いてる時間を試さねば。
「辛いスープみたいで美味しいですね」
「効能がどうなるかわからなかったから味だけで決めたからね」
飲むと少しして体がポカポカしてきた。コートを脱いでも暑いくらいだ。
「姫様、これ凄いです」
「本当だね。この季節の気温がちょうどよく感じる」
研究室に戻るとレインにニンニク臭いと言われたのでレインにも飲ました。これで臭い仲だ。今度は消臭ポーション作ろう。
結局、身体の大きさはあまり関係なく、ポーション瓶1本で6時間くらい持続した。
明日はニンニク抜きで作ってみよう。




