私は今何をやってるの?
ポーションの座学は面白い。薬学みたいな感じなんだろうけど、元の世界と違うところは魔力が関係してくることだ。
読んどおけと渡された教科書は攻略本みたいで面白い。基本の組み合わせが乗っていて、混ぜ方や抽出方法などが書いてあるので錬金術のポーションコース以外の人に見せていけないそうだ。ゼルは除外してもらったけど。
「魔力は測ったことある?」
「魔力はそこそこあるみたいなんですけど全く発動しないので適正無しと言われました」
と誤魔化しておく。
「発動は問題ないわ。特殊な混ぜ棒を使うから。これで混ぜると勝手に魔力を吸われるの。ただやりすぎると魔力切れで倒れるから気を付けて」
「倒れる前にわかります?」
「立ってられないぐらいだるくなるから分かる。それを越えてやり続けると気を失うから」
実際に物を作って実験をたくさんしたくても魔力切れで出来いないのだそうだ。
「じゃ、初級の治癒ポーションを作ってみるから」
使うのは傷に効く草みたいなもの。それを煮出して混ぜ棒を使って混ぜていく。ポーションの資格を取らないとこの混ぜ棒が手に入らないらしい。この草だけでも効能があるので庶民はそのまま使ったりするそうな。
小鍋に入れて沸騰させて草を投入。ぐるぐると混ぜて色が変わったら完成。
それを濾して冷ます。
「この赤色が濃いほど効能が高いの。あなたの作ったポーションは随分と色が濃くなってるけど何かした?」
「いえ、言われた通りやっただけです。見てましたよね?」
「そうね」
「じゃ、指を切って」
「は?」
「指を切って効能があるか確かめるの」
「姫様、私が指を切ります」
「ダメよ。自分でやることに意義があるの。はいナイフ」
「自分のでやります」
とバタフライナイフを出す。しかしこのナイフは自分しか切ってないな。
シュッと切ると思ったより深く切れてしまった。
「そんなに深く切る必要はないっ。上のランクのポーション持ってくるわ」
「い、いえ。まず自分の作ったので試します」
ポーションをゴクッと飲む。
うっげぇぇぇ。苦いっ
「馬鹿ね、ポーションは掛けてもいいのよ」
先に言えよ。
が、ポーションは飲んでも効くらしくあんなに血がボタボタ出てたのに傷が治った。
「これ、初級ポーションの効能じゃないわね。色が濃いとは思ったけど中級くらいの効能があるわ。何をやったの」
「言われたことしかやってません」
「まぁいい。次は回復ポーションを作る」
今度は回復草の葉と根を使う。
「分量は回復草が2に対して根の粉末が1。そのうち粉末にするのも自分でやってもらうから」
またそれをグツグツ煮て棒で混ぜる。
「黄色くなったら完成よ」
ぐるぐると回しているとどんどん黄色くなった。
「また濃いわね。なにかした?」
「見てましたよね?何もしてませんっ」
で、効能は今のところわからないけど味見をする。
顔が真ん中に寄るぐらい渋い。
「レインさん、こんなの飲めたものじゃありません」
「回復ポーションは渋いの。我慢して飲んで」
鼻を摘んで飲んでも渋過ぎてダメだ。
「レイン先生・・・ギブです」
何が回復ポーションだ。渋すぎて逆に体力持っていかれたわ。
「私は先生ではないわ。あなたはポーションを作れる事がわかったから今日はもういい。明日は朝から来て、一通り作ってもらうから」
部屋に戻ってクインシー達に報告。明日から午前中も研究室に行くことになったのとポーションを作れた話をした。
「ハッハッハッハ。治癒のポーションを飲みましたか。苦いでしょう。あちこちを怪我した時は飲ませるのですが苦さで気を失うのも防げますからな」
ジルベスターはそう説明してくれる。なるほど、そういう使い方もあるのか。
「体力回復ポーションは渋くて飲めなかったんだけど」
「それが難点なのですよ」
「兵も戦場であれば死に直面するから渋くても飲むだろうが、訓練だと飲みたがらない物だ」
嫌なポーションだ。罰ゲームに使えそうだよな。
「明日帰るぞ」
唐突にそういうクインシー。
「リーリャはおいてってくれる?」
「ダメだと言ったろうが。今夜肉を食いに行く。少し遅くなったが飛び級合格の祝いだ」
アームス達も誘ってジルベスターの思い出の店にいく。何でも好きに頼めと言われたのでシャトーブリアン頼んじゃお。
ゼルはTボーンか。肉々しくていいね。皆はサーロインだ。クインシーとジルベスターは分厚いやつを頼んでいる。パンを食わずにワインと肉しか食わないつもりだな。
皆は塩胡椒。俺はバターとホースラディッシュを追加で頼んだ。
うっひゃぁ、やわらけぇ。
バターで風味を足してホースラディッシュを乗せて食べる。ウマウマ。
が、悲しいかなシャルロッテボディ。口は食べたいのにもうお腹がいっぱいなのだ。
仕方がないので、ゼルにアーンして残り1/3ほど食べて貰った。
「この食べ方美味しいですね」
「ホースラディッシュはローストビーフとかに合うからね。今度部屋でする?」
「はいっ」
マッシュポテトと食べるんだっけ?またレムのお料理教室見ておこう。
「シャルロッテ、もう錬金術の勉強を始めてるのか?」
「そうだよアームス。もう初等どころか専門コース以外の授業を受けなくてもいいって。だから中等で習う基礎を教えてもらってるの。ポーションって苦かったり渋かったりするんだね」
「ん?」
「え?」
「ポーションを作ったのか?」
「うん」
「そんなの中等ではやらんぞ。錬金術コースに受かってから受ける授業だ」
「そうなの?」
というか錬金術コースのテストなんて受けてないぞ?
「中等で習うのはポーションの種類と効能とかそんなのだけだ」
「私は今なにをやってるの?」
「もう錬金術の授業と同じじゃないか?」
「なんで今からする必要あるの?」
「そんなの俺に聞くなよ」
それもそうだよな。
ユーバリーはまだ拗ねている。俺と一緒に中等教育に行くつもりだったみたいだし、シャル姉様と呼ばされるのが嫌でたまらないらしい。
ごちそうさまして外に出ると懐かしい石焼き芋屋が荷車を引いて売っていた。
「かぁ様。一つ買って」
と、ユーバリーがおねだりする。焼き芋は一つ銅貨2枚。
「ユーバリーはよく食べるようになったな」
「うん」
ステーキ一枚ペロンと食べてまだ食べられるのか。成長期なのかな?焼き芋を一口もらったけど元の世界のと違ってあまり甘くない。それでもユーバリーは旨そうに食っていた。
「ゼルとリーリャにも買ってあげようか?」
「だ、大丈夫です」
二人共断った。
ゼルはTボーンステーキを食って、俺の肉も食べてさらに食うのは恥ずかしいのかもしれない。ゼルは食べなくても平気そうにしているが食べさせるとよく食うのだ。筋トレもよくやってるしな。リーリャはもしかしたら腹を気にしてるのかもしれない。太鼓腹までいくとアレだけど、ポコタンとした腹ぐらいなら可愛いのに。
部屋に戻ってリーリャは置いてって貰う。腹を伸ばしておかねばならないのだ。
風呂から上がって太ももに顔を埋めながら気の済むまで腹をむにむにしておいた。
翌日、またねと行って学園に向かった。帰ったらまたいないんだなと思うと寂しかった。
研究室に行くとレインは朝から色々とやっているようでもういた。
「おはようございます」
「じゃやるよ」
相変わらず起伏のない淡々とした話し方をするレイン。表情もあまり変わらない。
朝から色々なポーションを作っていく。初級のものは製法が開示されているので配合表を見ながら作っていく。どうやら俺が作ると初級よりもぐんと効能が上がることがわかった。
「お昼休憩」
食堂に食べにいく時間があるかわからなかったのでラーメンを持ってきたのだ。
実験用具でお湯を沸かして大きめのビーカーに割って入れてお湯を注ぐ。透明な容器だとラーメンがふやけていく様と卵が白くなっていくのが面白いな。
「なにそれ?」
「ラーメン。お湯を入れるだけで食べられる優れものです」
ぐぅ~
「レインさんお昼ご飯は?」
「いつも食べてない」
「食べます?まだあるから良かったらどうぞ」
「いくら?」
「安いからお金はいいです」
「ちゃんと払う」
「じゃあ銅貨1枚。卵はサービスします」
「それでいいの?」
「これ私が考えたやつだからこの値段なんです。商店で買うと銅貨5枚です」
「へぇ。自分でも考えたのが商品化してるんだ」
「作り上げてくれたのは食堂のおばちゃんですけど。もう食べられますよ」
ゼルはお先にどうぞというのでレインと一緒に食べる。
「美味しい」
「良かったです。明日からも持ってきましょうか」
「うん」
レインは汁までしっかり飲んでいた。
再開まで時間があるので少しおしゃべり。
「え?ここで寝泊まりしてるんですか?」
「実家は遠いし、学生でも教師でもないから宿舎にも入れないから仕方がない」
「ご飯はどうしてるの?」
「ここであるものを食べる」
「寝るのは?」
「簡易ベッドがある」
「お風呂は?」
「タオルで拭くから大丈夫」
よくそんな生活してんな。影があるけど美形なのに。
「私の部屋に泊まりに来ます?寝室一つ空いてるので使えますよ」
「部外者は入れないでしょ」
「護衛とかメイドとか出入りしてるから問題ないと思いますけど確認しておきます。問題ないなら来ますか?」
「いいの?」
「はい。しょっちゅう誰か出入りしてますので」
「わかった」
昼からもポーション作り。レインは何となく機嫌がよくなった気がした。
帰りに事務所に寄って確認するとご自由にと言われた。基本王族関係にはノータッチみたいだ。
部屋に戻ると手紙が置いてあり、クインシーが買った物件と俺が買った物件はまとめてギルドが交渉してくれて金貨6枚から5枚まで下げてくれたと書いてあった。既に支払い済だったので振込返金されるとのこと。さすがクインシーの圧は凄い。




