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さながら

翌日はやっぱり軍の演習に駆り出された。朝から冷え込んでいるので早速昨日買って貰ったコートとブーツ、帽子で防寒した。めっちゃ暖かい。



前と同じように演説台がありクインシーがジライ隊長を紹介して挨拶をさせていた。


「お父さん、軍の演習を見に来たりするの?」


「娘の勇姿を見たくて参りました。今日は非番ですよ」


ジルベスターも参戦していた。


「シャルロッテ。出番だ。まだ号令を出すなよ」


「わかってます」


今日はアームス達も皆来ているのに演説をするのは俺だけとはこれいかに?


まぁ、いいや。今日の目的はジライにメロン軍の熱量を浴びせてマーセナリーに刺激を与えるということだろうからな。


今日もドンッと演説台に飛び乗る。


「シャルロッテだ」


ウォぉぉぉおっ!


名前を言うだけでこれだ。まるでアイドルのコンサート会場みたいだな。花火とか上げてくれないかな。


「盛り上がってるかーっ!」


ウォぉぉぉおっ!


「前はどうだーっ」


うぉぉぉぉおっ!


「後ろーっ!」


うぉぉぉぉおっ!


二階・・・はないな。


「平和を掴みたいかーーっ」


うぉぉぉぉおっ!


「神は甘味を求め、我らは平和を求める。我らがメロン軍にとって平和は甘味なのである。平和を守れっ!そしてその甘味を噛みしめるのだっ!ジーク・メロンっ」


「ジーク・メロン」


「ジーク・メロンっ」


「ジーク・メロン!」



「どうだジライ。シャルロッテがマーセナリーの王になると言ってもおかしくないであろう?」


クインシーにそう言われたジライはシャルロッテを呆然として見ていた。


シャルロッテの新しい濃いグリーンのコートはさながらマーセナリー王のマントのように見え、ジライはシャルロッテがマーセナリーの王として兵士達を鼓舞しているように見えていたのであった。そしてこうつぶやく。


「見えるぞ、私にも王が見える」


鳴り止まないジークメロンコールのやめ時を見失ったシャルロッテ。クインシーからの号令がいつまでもたっても来ない。


「構えっ!」


ザッ


「突撃ーーーーーっ!」


うぉぉぁぉおぉっ!


「あっ、また貴様は・・・」


「だってクインシー様がいつまでも止めに入ってくれないからじゃん」


今日は前回と違って陣形を複雑に変えて突撃をする。これはより実戦に近い形だそうだ。


「いちご姫様、あの陣形はいつ指示されたのですかな?」


と、ジルベスターに聞かれる。


「知らない。練習してたの見せてくれてるんじゃないかな?よく揃ってるよね」


「クインシー様、あれは事前に指示されていたのでしょうか?」


とジライも驚いている。


「いや、兵士達が自分達の練度をシャルロッテに見てもらいたくてやっているのだろう。この前は単純な突撃だったからな」


「シャルロッテ様に見てもらいたい?」


「メロン軍は実戦をすることがないからな。訓練の成果を見せられるチャンスなのだ」


俺に見せたい為に頑張ってくれているのか。それならちゃんと見ててやらないと悪いな。


再び演説台の上に立ち、腕を組んで皆の演習を見届ける。


「敵将討ち取ったりーーーっ」


ウォぉぉぉお!


「皆の者っ!見事であった。ジーク・メロンっ」


「ジーク・メロン!」


ジークメロンコールをしばらく続けた後に拍手を送っておいた。


「もう終わりでいいかな?」


「最後に手を振ってやれ」


とクインシーに言われて手を振って皆のコールに応えて馬車に乗り込んだ。


「見事なものですな。掛け声が地響きのようでしたぞ」


とジルベスターに褒められる。


「みんなノリいいよね」


「そうですな。騎士団にも取り入れましょう。次回は騎士団の訓練にもお願いします」


「団長にやってもらって下さいよ。騎士団はクインシー様の管轄じゃないと伺ってますし、団長ともお会いしたことございませんし」


「そうでしたか。団長も紹介致します」


いや、もうお腹いっぱいデス。



そしてジライにも話し掛けられる。


「シャルロッテ様、マーセナリーの兵を牙の丸くなった犬と呼ばれた意味が理解出来ました。実戦が無いにも関わらずここまで熱を持って訓練をされているメロン軍と比較するとおっしゃった通りです」


「マーセナリーも熱は残ってると思うよ。その熱が冷めきらないうちに頑張ってね。私はクインシー様が誇りを持ってマーセナリーだと言い続けて欲しいの」


「かしこまりました。老体ではございますが最後に一花咲かせて散ろうと思います」


「ジライさん」


「はい」


「その傷かっこいいね。兵士じゃなく戦士って感じがする。不便だろうけど両目でいらぬとこまで見えるより、片目で見るべき物だけ見るのがいいんじゃないかな」


「あ、ありがとうございます」


ジライはなぜか涙を流して喜んでくれたのであった。



翌日ジライはマーセナリーに帰り、俺はユーバリーの尻触りながら勉強を教えた。


そして年が明ける日に盛大なパーティが行われる。まずは王宮のパーティ、次は騎士団のパーティ、最後に兵士達のパーティをハシゴする。酒の飲める年齢だったら潰されてたなこれ。


兵士達のパーティが一番盛り上がり、酔った兵士は俺にパンチをされる為に並んでいる。


「バカヤロー」


なぜ俺が皆に闘魂を注入せねばならんのだ?


酔ったゼルも闘魂注入してほしそうにしているので闘魂チューをしておいた。


おい、バレンシア。並んでもお前には闘魂チューはせん。アンデス、お前もモジモジして並ぶな。



兵士達は真夜中まで騒いでいるしまだまだ続きそうなので退散する。



そして翌々日に学園宿舎に帰ることに。


ジークメロンコールと共に盛大に見送られて出発。


「アームス、メロンに押し掛けた甲斐があった。春休みはアームスとアンデスも招待するから皆で来てくれ」


「そうか。なら甘えよう」


宿舎に着くとバレンシアはアームス達にそう伝えていた。出発前は友達って感じでもなかったけど、しばらく一緒に過ごして友達になったみたいだな。



「シャルロッテ、飛び級でどこまで上がってくるつもりだ?」


バレンシアがそう聞いてくる。


「どうだろね?中等には上がれると思うけど」


「高等まで上がったら同級生だな」


え?


そういや、アームス達は今年16歳。高等に上がる年だ。


「中等で専門コースの基礎とか学ぶんでしょ?それで適性を見て高等のコースを選ぶからいきなり高等なんてないよ」


「前例はな」


とニヤッと笑ってまたなと去っていくバレンシア。


「アームス、私が同級生になるなんてことあるの?」


「お前のことだから無いとは言えん」


「えーっ、私と一緒に中等に行こうよ。そうしたらアンデスにぃも一緒だし」


そうか、二つ飛ぶとアンデスと一緒になるのか。あまりそんなこと考えてなかったな。


「ま、バリ姉は自分が上がることだけ考えてて。私だけ上がってバリ姉が落ちたら呼び捨てにするからね」


「えーーっ。私の方が歳上なのに」


「学年が上の方がお姉さんね。私が上級生になったらシャル姉って呼んでね」


「いやー、そんなの絶対にいやっ。ずっと一番下からやっと抜け出せたのにっ」


「じゃ、頑張ってねぇ」


と意地悪を言ってから別れたのであった。



ー マーセナリー ー


「どうだった?」


「陛下、私は戦士としてもう一花咲かせて散りましょう。殿下も明日から殿下ではありません。私の事を隊長とお呼び下さい。敬語も使って頂きます」


「なぜたかが兵士隊長のジライに敬語を使わねばならんのだ」


ギロッ


ジライはフェニックスを片目で睨み付ける。


「飲まれますぞ」


フェニックスはその言葉の意味をわかっていなかったがパトリオットは理解した。


そしてパトリオットはその日以降自己暗示を解くことがなくなったのであった。




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