砂の味
「ごめんねクインシー様。あんな事を言うつもりじゃなかったんだけど」
「いや、嬉しかったぞ。私の為に言ってくれたのだろ?」
「うーん、メロンと比べてあまりにも熱量がなかったから、心が死んでるのかなと思っちゃって。王や王子に何言われても反応しないし」
「そうだったな。だから挑発したのか?」
「そう。でもまだ熱量あったから何とかなるんじゃないかな」
「そうだといいな」
そんな話をしながらパカラっと馬を走らせた。
「王よ、義姉の義娘をなぜあのままかえしたのですかっ」
「黙れ」
「は?」
「黙れと言ったのだ。それとフェニックス、お前は腑抜けすぎるぞ。女の子に手をあげようとした挙げ句にのばされるとは情けない。防御ぐらい出来んのかっ」
「ち、父上・・・」
「ジライ」
「はっ」
「お前にフェニックスを預ける。王子と思わなくてよい。新兵として鍛えろ」
「かしこまりました」
そしてその場を離れようとしないジライ。
「なんだ?」
「陛下、一度メロン王国を訪問したいのですが」
「姉上に仕返しでもするのか?」
「いえ、シャルロッテ様に本日の真意を問いたく」
「なぜだ」
「言葉こそ我らを馬鹿にしたようではありますが、なぜあのような物言いをされたのか真意がわかりかねるのです」
「真意を尋ねてどうする?」
「いえ、ただ確かめたく」
「好きにしろ」
「は、戻りましたらフェニックス様を鍛えさせて頂きます」
「ちっ、父上」
「今日から父上と呼ぶな。陛下と呼べ。一人前の兵士になるまで父ではない」
ー廃教会ー
「では、シャルロッテ様。どのような魔法を使えるか見せて頂けますでしょうか」
「何も使えませんけど?」
「では魔法発動の呪文をお教えしますので」
と、魔法書を開いて呪文のお勉強。いわゆる詠唱ってやつか。
暗記はまだいいからと魔法書を手に持って詠唱する。ただ詠唱するだけでは発動しないので魔力を込めながら詠唱するらしい。
「魔力を込めるってどうやるの?」
「魔力測定の時と同じございます」
あの時は手を置いただけだったんだけどな。
色々と説明されたけど魔法が発動することなく今日は終わった。
翌日も同じ。
「弱りましたな。あれだけの魔力がおありなのにこうも発動しないとは」
「本当に魔力はあるのかな?」
「それは間違いございません」
「シャルロッテ、お前が使う体術にファイアボールのようなものがあっただろ?あれをやってみろ」
と言われて波動拳を出す。
「これは魔法だろ?」
「はい。詠唱無しに出るとは驚きですが見たことのない魔法です」
「もっと威力のあるやつはあるか?」
あるけど、あれのコマンド何だっけな?
↓↙←→S
「はーーーっ、かーめーは・・・」
「波ーーーーっ」
ドーーン
良かった合ってた。
「す、凄まじいな。しかし変わった詠唱だな」
やっぱり魔力はあるということだけど魔法書を見ながらやっても発動することは無かった。
「今回はここまでというより、賢者様のお力は一般的な魔法使いと異なるのかもしれません」
「ということは?」
「ここまま続けても無意味かと」
「では魔力を抑える魔法も無理ということか」
「はい。常に運動をされるか欲を満たして安定させなければなりません」
ということで魔法訓練はこれで終わりになった。賢者というのも前世の残念な人生の賜。魔法は転生特典のコマンド入力だからこの世界の魔法とは仕組が異なるのだろう。魔法チートで人生を謳歌出来るのは無理だったか。
魔法特訓は空振りに終わってしまったので早めに帰ることになった。
また寒い思いをしながらメロンに帰るとマーセナリーの大将が来ていると告げられた。
クインシーの部屋に呼ばれて大将のジライと面談。
「ジライがシャルロッテの真意を聞きに来たそうだ。随分とマーセナリーは暇らしい」
「真意ってどういうこと?」
「犬呼ばわりされた真意にございます」
「いや、傭兵国家の兵士なのに随分とやる気というか熱量が無いなと思っただけ。まぁ、王の叱咤にも反応しないし、王子のイヤミもいつもの事で面倒くせぇなぐらいの感じだったんだろうけど」
「それはひと目でおわかりに?」
「メロンの軍人ってさ、飲んだりしてるときはどうしようも無さそうな奴もいるんだけど、訓練の時はもっとピシッとしてるんだよね。クインシー様が前に立つとグッとやる気も伝わってくるし。マーセナリーと比べて活躍する機会が無いにも変わらずだよ。だからマーセナリーの兵はもっとこう怖さとか威圧感みたいなのがあると思ってたんだ」
「実際にご覧になられていかがでしたか?」
「メロン軍に攻められたらボロ負けすると思うよ。戦術とか色々とあるだろうけど兵士のやる気がないとそれも生きて来ないでしょ?」
「そのように見えましたか?」
「私は戦いの事を知らないけどね。マーセナリー兵は戦闘のプロで挑発しても顔に出さないっていうならわかるけど、すぐ殺気だったから違うでしょ?戦う目的を見失ってるのかもしれないね」
「目的?」
「メロン軍は国と国民を守るという目的がはっきりしている。マーセナリー兵の目的は?」
「力の象徴であることです。それによって平和がもたらされるのです」
「王や王子はそれを言わないからじゃない?わかってるだろうというのは幻想だよ。ダメだ、たるんでる、なぜ訓練しない?と言われるだけじゃね」
「ジライ、いつからああなった?パトリオットが王になってからか?」
「そうやもしれませぬ。パトリオット陛下は良い王でいらっしゃいますが」
「あいつは甘やかされてたからな。しかし、王がそういうことに不向きであればジライがやらねばならんのではないか?お前が引退し、フェニックスが王になればより酷くなるだろう?」
「クインシー様のおっしゃるどおり私は老いました。次の世代の者がと思ってはおりましたが」
「ジライ、もう一花咲かせてから死ね。お前の役目だ」
「ここを出る前に陛下よりフェニックス様を新兵として鍛えろと命令されました。シャルロッテ様に無様に倒されたのを見て一人前になるまで父と呼ぶなと」
「ほう、パトリオットがよくそれを言ったな」
「はい、王妃様にも口を出すなと叱りつけておられました」
「シャルロッテ、お前がやった事は無駄では無かったようだぞ」
「王子に逆恨みされそうです」
「そうなればお前がマーセナリーを奪え。手伝ってやる」
「クインシー様、それは無謀でございます。マーセナリーの王は兵を動かせるものでないと」
「ジライ、今日明日はゆっくり休め。明後日いいものを見せてやろう」
嫌な予感がする・・・
「では私はこれにて失礼を致します。欲を満たして参りますわ」
と、そそくさと逃げたのであった。
部屋に戻って思いっきりリーリャを補充したあと。
「ゼル、明日誰かに送って貰って帰ろう」
「無理ですよ」
「だってさ、絶対に明後日ジークメロンをさせられるんだって」
「いいではないですか。姫様の掛け声に軍が応える。まさに王の所業です。ストロベリーの王にはなれませんでしたが、マーセナリーなら姫様が王になれます」
「王になんてなりたくないの。こうしてリーリャをふにふにしてたいの」
「伸びますっ」
伸ばしてるんだよ。嫁にいけない身体にしてやる。ふにふにふにふにっ
「キャーハッハッハッハ」
ビクッ
そうだ。リーリャには悪魔が乗り移るんだった。
「もうっ、くすぐったいですっ」
そして飯は食堂でと連れて行かれると不機嫌なユーバリーとバレンシアがいる。
「どこに行ってたのよ?」
「犬牧場」
と答えたらジライも食堂に居たのであった。
飯が砂の味だった。




