マーセナリーはヤバいかも
部屋に戻ってクインシーと話す。
「何やってんですかっ」
「スマンな。ちょっと実家を助けてくれんか」
どうやらマーセナリーの傭兵達の士気が下がっていて今一度やる気を奮い立たせて欲しいとクインシーがパトリオットから頼まれたらしい。
「傭兵を鼓舞するとか嫌だよ。戦争に加担するみたいじゃないか」
「大昔は戦争屋とも揶揄されたがな、現代では少々意味合いが違うのだ」
と、クインシーがマーセナリーの役割について教えてくれる。
現代では戦争がほとんど発生はしていないが、小競り合いは各地でよくあるらしい。そういう所に依頼されると基本は防衛になり、相手側もマーセナリーが雇われたらと知ったら本気で攻める事はないとのこと。それ以上になったらマーセナリーが本腰を入れてくると知っているからだそうだ。
今のマーセナリーは戦争の抑止力として使われる事の方が多いらしい。そしてマーセナリーの傭兵を雇うには莫大な金がかかる。もしマーセナリーを雇った国が負ければ金を回収できなくなるのとマーセナリーの威信を掛けて雇われた国に味方をするのだそうだ。
「で、何が問題になってるの?」
「雇われて小競り合いの場に行っても戦いになることが減ってな。実際戦わない事が増えるに連れて戦力が下がっているのだ。どうせ今回も行くだけで終わるのだろ?と」
「マーセナリーは戦うのが好きなんじゃないの?」
「別にマーセナリーは人殺しが好きなのではないぞ。規律はどこの軍よりも厳しいから武器を持たぬ市民も殺さぬし、どさくさに紛れて女を襲ったり盗みを働いたりすることもない」
「へぇ」
「戦力が落ちてくるとそのうちマーセナリーは大したことがないと思われて、そのまま戦争に突入するおそれもある。マーセナリーは常に恐れられる国であらねばならんのだ」
「国にお金が無いのは依頼が減っているから?」
「そうだな。払う金額に見合ってないと思われているのかもしれん」
なるほどな。兵士以外にこれといった産業がないマーセナリーには死活問題なのだな。
「で、なんで私が兵士を鼓舞しなきゃなんないの?」
「パトリオットは私にやってくれと言ってきたのだがそれでは解決にならん。王子が考えを改めないと先がないのだ」
「どういうこと?」
「あいつは何も出来なくとも第一王子だから自動的に王になれると思っている。そんな奴が王になったら国は終わる。自分より歳下のシャルロッテが兵士達を上手く鼓舞するのを見たら焦るだろ?」
「でも私がやることじゃないよね?」
「それはそうだな。変な事をさせようとしてすまなかった。明日兵士を集めたみたいだがやはり断ろう。私もこの国を出た人間だ。余計なお世話だったかもしれん」
ちょっと寂しそうなクインシーには悪いがそうしてもらおう。俺には関係のない話だ。
翌朝、見るだけでいいからと兵士達を集めた所に連れて行かれた。これを見たら出発だ。
パトリオットが演説をする。
「マーセナリーの者達よ。最近たるんでおるっ。このままではマーセナリーが他国に舐められてしまうぞ」
と、こんな感じの話が続く。結構長い。
で、次は第一王子のフェニックスが演説台に。
「お前らっ。なぜ訓練に力を入れん。この役立たずどもめがっ」
うん、子供にこんなことを言われたらやる気なくすだろうな。
兵士達はけなされても何だとっ?とかの反応をしない。こう何というのか熱気がないのだ。またかよみたいな感じだ。
「これはマーセナリーは将来無くなるかもしれんな」
クインシーはそう呟いた。俺も同感だ。
くどくどと嫌味だけを言ったフェニックスが演説終わりに
「客人が来ている。おい、挨拶ぐらいしていけ」
と、マイクを渡された。
クインシーは悔しそうな顔をしている。自分の国がだめになっていくのを目の当たりにしているからな。
はぁ、ダメ元でやってみるか。
脳内でボタンを押してジャンプして演説台にドンッと飛び乗った。
「よう、犬っころども」
ザワッ
「私はシャルロッテ・マーセナリー。クインシー・マーセナリー・メロンの義娘だ。クインシー様の実家はどんな国かと思ったが飼い犬しかいない国とは驚いた」
ザワザワザワザワ。
先程まで反応しなかった兵士達が犬呼ばわりされて殺気立ってきた。
「お前ら、他の国から餌もらえなくなったんだってな。そりゃこんな弱そうな犬なんて誰も必要としてないからしょうがないな」
そう言うと兵の上の人だろうか?切り傷で片目を失った威圧感のある人が出てきた。
「クインシー様の義娘様と言えど聞き捨てなりませんぞ」
「お前は誰だ。先に名を名乗れ。それでも軍人か?」
「我はマーセナリー軍大将、ジライである」
「貴様が犬っころの大将か」
「貴様っ、まだマーセナリーを犬扱いするのかっ」
「当たり前だ。傭兵なんざ餌貰ったら誰にでもしっぽを振る犬と変わらん」
大将まで犬扱いされて怒り狂う兵士達。なんだ、熱量あるじゃん。
後ろで王と前王が慌てて止めろと言うのをクインシーが抑えている。このままで良いってことね。
「犬と言われて悔しいのか?」
「我ら誇り高きマーセナリーの兵を愚弄するなっ」
「誇り高き?ならば問おう、貴様らは犬ではなく何なのだっ!」
「我らは兵士だっ」
「兵士は何をするものだっ」
「戦うものだっ」
「なら、なぜその牙を磨かん?王子にクソミソに言われて尻尾を下げたままなのだっ」
「そ、それは」
「貴様ら牙は何の為にある?餌を食うためか?違うだろっ。敵の喉を食い破る為のものではないのかっ」
シーーーン
「磨かぬ牙など抜いてしまえっ。飼い犬になりたいやつは鎖に繋がれていろ。それが嫌なやつは牙を磨くのだっ」
ザワザワザワザワ
「みな自分の行動を振り返ってみてほしい。どうせ戦いにはならない、そう思って牙を磨かなくなったのではないか?自分の牙は丸くなってはいないか?」
シーーーン
「マーセナリーは恐れられるからこそマーセナリーである。恐れられないマーセナリーなど牧場とかわらん。この先のマーセナリーが牧場になるかどうかはお前達次第だ。私はクインシー様にお世話になっている。そしてクインシー様が大好きだ。そのクインシー様の実国が牧場だと馬鹿にされる事が無いように願う。私はクインシー様にいつまでも強く美しくあって欲しいのだ。いかなる時もクインシー・マーセナリーだと実国名を誇りを持って名乗って欲しいのだ。以上」
シーーーーン
第一王子のフェニックスが怒り狂ってこちらに来る。
「貴様っ!我が国の兵を犬扱いした上に叔母上の為にとは何たる言い草だっ。叔母上はもうマーセナリーを出ているのだぞっ」
「うるさいっ。お前がどうなろうと知ったことではないがお前の無能さで国をダメにしたら許さんからなっ」
「貴様っ」
と、殴りかかってきたのでライジングニーからPPP+Kのコンボを食らわせる。
バシュッ
サマーソルトキックをモロに食らってダウンする王子。
「貴様がそんなに弱いから兵が付いて来ないのだ。兵をけなす前に自ら鍛えて手本になりやがれ」
「きゃーーーっ、貴様っ、第一王子に何をするかっ。無礼であるぞっ。この者をひっ捕らえよっ」
そう王妃が命令するとゼルが俺の前に立つ。
「姫様に手出しをするなら斬る」
そして、命令された兵とゼルの間にクインシーが割って入る。
「止めろゼル、もういい帰るぞ。パトリオット、父上いいな?」
「あ、ああ」
「王妃よ。私を敵に回す覚悟があるなら追って来い。全力で腑抜けたマーセナリーを打ちのめしてやろう。それとジライ」
「ハッ」
「老いたなお前。そんな先の丸い牙ではシャルロッテには噛み付けんぞ」
「クインシー様・・・」
クインシーは俺をひょいと抱き、そのままその場を去ったのであった。




