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嫁になんていかないからねっ。  作者: しゅーまつ
未成年編

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マーセナリーに到着

マーセナリーは見た目普通の国だ。世紀末みたいな国を想像していたからちょっと拍子抜けだ。良いガタイのやつが多いけど。


「このまま家に向かうぞ」


クインシーはそう言って街の中心に向けて馬を走らせた。


うん、王宮なんだろうけど要塞みたいな作りだな。


「クインシーである」


「お帰りなさいませ姫様」


いくつになっても姫様なんだな。

クインシーが姫様ってなんか柄じゃないよなと思ってると脇腹をつねられた。クックックッと笑ってたのが振動で伝わったのかもしれない。


中に通されてしばらく別室で待たされた後に王の間にいく。きらびやかな王宮と違って意外と質素だ。が、騎士というより兵士の数は多い。



「姉上か。久しぶりだな」


クインシーの弟の王か。王も着飾らずに軍人みたいな格好なんだな。ちょっと格好いい。ゴテゴテと勲章とかを付けてるわけでもない。紋章の入った帽子に濃いグリーンに金ボタンに金地で縁取られたマント。他にも偉そうな人がいるけど、金が入っているのは王だけか。


「パトリオット、息災か?」


「姉上も元気そうであるな。そいつらは誰だ?随分と可愛らしい客だが?」


「私の義理の娘のようなものだ。家を離籍したから私が後見人になった。その際にマーセナリーの家名を与えたから報告がてら来たまでだ」


「ほう、姉上が後見人にねぇ。少し私室で話そうか」


パトリオットと呼ばれたクインシーの弟。傭兵国家の王は立ち上がって、ザッとマントを翻してツカツカと奥へと歩いていく。


クインシーもそれに続くと兵士の列は一斉に剣を胸の前に立てる。傭兵国家の敬礼みたいなものなのかな?


どうもどうも、みたいな感じで手を降っても微動だにしなかった。


私室入ると帽子とマントを脱いだパトリオット。


そして振り向いてギンッとクインシーを睨んだ。


「姉ちゃんっ。なんで全然帰って来ないんだよっ」


ん?


「ずっとバタバタしててな。お前は変わらんな」


「もう、王様なんてやだよっ。姉ちゃんがやってくれよ。あいつら怖いんだよっ。ぜっんぜん笑わないし、ずっと眉間にシワを寄せてるし」


ん?


「傭兵国家なんだから仕方がないだろ?」


「だってさ、最近戦争もほとんどないし、国のお金が足りないからどうするとかばっかり言われるし。何でもかんでも陛下、陛下って聞いてくるし。そんなのわかんないっつーのっ」


ん?


「ねぇ、ねぇ。君名前なんて言うの?」


「シャルロッテ・ストロベリー改め、シャルロッテ・マーセナリーです。お初にお目に掛かります、パトリオット・マーセナリー陛下」


「へぇ、ストロベリーの姫だったのが姉ちゃんの義娘になったんだ。今いくつ?」


「10歳です。年が明けたら11歳になります」


「奇麗な髪してるねぇ。ちょっと触っていい?」


と、撫で撫でされた。


「うわ、柔らかくて気持ちいい髪の毛してるねぇ。シャルロッテもマーセナリーなんだから僕の義姪ってことだよね?」


「そうなるな」


「ここに住みなよ」


「住むか馬鹿者。シャルロッテはメロンの王族にもしてあるのだぞ」


「なら、マーセナリーの王族にもしておくよ。だからここに住みなよ。部屋も用意するから」


「お前、自分の子供がいるだろうが」


「息子なんて可愛くないんだよ。最近すぐに口答えしてくるし臭いし。その点シャルロッテは甘い匂いがしていいね。やっぱり女の子がいいよ。ねぇ、シャルロッテ。僕の娘にならない?」


「あ、あのクインシー様」


「なんだ?」


「本当に弟様でいらっしゃいますか?」


「あぁ、昔からこんなんだ。長女は少し歳が離れててな。パトリオットは私と歳が近かったからずっと私の後ろにくっついていたような奴だ。長男とはいえ長女、私、パトリオット。女姉妹の末っ子の男だ。全く男らしくないのだ」


「そんなのシャルロッテに言うなよぉ。カッコ悪いじゃないか」


「さっきと随分と雰囲気が違うような気がしたのですけど」


「これでは下の者に舐められるだろ?部下達の前ではああなるように自己暗示をかけているのだ」


そんな事が出来るのか面白いな。


「姉ちゃん、何日くらいここにいるの?春までいる?」


「いや、明日にはここを出る。シャルロッテにマーセナリーの家名を与えた報告がてら貴様の顔を見に来ただけだ。親父は部屋か?」


「えー、もっといなよ。僕もシャルロッテを構いたい」


嫌でございます。と心の中でつぶやく。


確かにクインシーと似て美形だけど元の俺と歳は同じぐらいだろう。おっさんには構われたくないのだ。


そして前王のもとへ向かう。



「父上、お久しぶりです」


「おぉ、クインシーか。元気そうで何よりだ」


「父上は少し痩せられましたな。御身体がどこか悪いのでありますか?」


「身体を動かさぬとこんなものだ。して、その者達は?」


「始めまして大殿様。シャルロッテ・ストロベリー改め、シャルロッテ・マーセナリーでございます」


「ん?クインシーの子供であるか?」


「ストロベリー家を離籍した際にクインシー様に後見人になって頂きました。本日はそのご挨拶に伺わせて頂いた次第でございます」


「そうであったか。しかし、我を大殿と呼ぶか。シャルロッテは和国と関係があるのか?」


「和国?」


「海の向こうの国だ。そこでは王を殿と呼び、先代王を大殿の呼ぶのだ。よくそんな事を知っていたな」


「ほ、本で学びました。中途半端な知識で申し訳ございません」


「よいよい、敬意を払ってくれておることは理解しておるでな。ワシはモーラーと申す」


「ではモーラー陛下とお呼びさせて頂きます」


「うむ。お爺ちゃんでも良いぞ。クインシー、でかしたな。ワシも女の子の孫が欲しかったのじゃ。少し頭を撫でさせてもらえぬか」


と、撫で撫でされた。モーラーは間違いなくこの人の息子だな。

 

そしてクインシーはパトリオットにした説明と同じ事を話した。


「シャルロッテよ。ここに住むか?」


「父上、シャルロッテはメロンの王族でもありますのでここには住みません」


「そうか、であればマーセナリーの王族にも加えるようにパトリオットに言っておく」


うん、発想が同じだ。


それにしてもそんなに簡単に王族に加えるのやめなさい。


しばらく孫々されてから食事を皆で取ろうと言われて部屋で待機。元々クインシーが使ってた部屋だそうだ。意外と女の子の部屋っぽいぞ。


ジロジロ見ているとクインシーに何が言いたい? と凄まれた。


「王妃様とかは?」


「食事の時に来るであろう。余り関わるな、お前の嫌いなタイプだ」


「そうなの?」


「私が嫌いだからな。明日には帰るから何か言われても応戦するなよ」


また人を問題児みたいに……


「王子たちをぶちのめすなよ」


「しませんっ」


クインシーは弟に話があるからここで待っておけと言って出ていった。


しばらくして戻ってきたら食事の為に食堂に向かう。メイドさん達はみなキリッとした感じで美型だ。この感じからするとメイドも戦えるのだろうか? リーリャみたいなふにふに感は見た目からは感じられない。お触りしたらもの凄く冷たい目で見られそうだ。


少し待たされたあと、皆が揃ったので挨拶をして食事だ。


メロンの食事の方が洗練されているけど、ここの食事の方が肉々しい。味付けもやや濃い目だ。塩胡椒ガッツリだから好みではある。クインシーはこれを食べて育ったからラーメンとか気に入ったのかもしれない。


「シャルロッテさん、マーセナリーの家名を与えられたからといっても王位継承権があるとは思わないことよ」


王妃からそう釘を刺される。


「当たり前田のクラッカーでございます」


「なんですのそれ?」


「なんでもありません」


「シャルロッテも本当にここに住めばいいのに」


王よ、やめなさい。王妃が怖い顔をしているではないか。


「本当じゃな。クインシーの部屋を使えば良いでないのか?」


「父上、ナイスアイデアです」


「パトリオットも父上もいい加減にして下さい。シャルロッテはフルーツ学園の生徒でもあります。住むならメロン王宮です」


いえ、メロン王宮にも住みませんけど?


「お前、マーセナリーを乗っ取るつもりか?」


一つ年上の第一王子、フェニックスがそう突っかかって来る。お爺ちゃんと父親が俺を構うのが不満なんだろう。


「殿下、本日はご挨拶に伺ったまででございます。明日には出立いたしますので」


「フンッ、どうだかな」


「フェニックス、突っかかるな。シャルロッテが暴れたらどうするのだ」


暴れません。


「クインシーおばさん、こんなちっこいのが暴れたからとどうってことありません。クインシーおばさんとは血が繋がってないのです」


「確かに血は繋がってないな。だがマーセナリーらしさは一番持っておるぞ」


クインシー、あなたが挑発してどうする?恐らく王妃が嫌いでその息子の事も嫌いなのかもしれない。母親に似てひねた顔をしているからな。


「マーセナリーらしさがあるとな。こんなに可愛いらしいのにそれは素晴らしい。どのような事ができるのじゃ?」


前王、乗り気になりなさんな。


「シャルロッテはメロン軍を指揮出来ます。私の代わりを任せたいぐらいですよ父上」


クインシー、王妃に向かってドヤ顔するのやめなさい。大人しく帰るんでしょ?


「クインシー様、お戯れをおやめ下さいまし。そんな冗談はよしこさんです」


「ん? お前は兵士達を鼓舞したではないか。ほら、あれを教えてやれ」


「姉ちゃん、あれってなに?」


「こいつは掛け声だけで兵士達を鼓舞させるのだ。フェニックスがあれぐらいできたならマーセナリーも安泰なのだかな」


そうニヤッと笑ってウイスキーを煽る。よく見たらいつの間にかめっちゃ飲んでんじゃん。王妃が嫌いで飲むピッチが早いのかもしれない。


「やって見せろよ」


は?


「フェニックス殿下、クインシー様の戯れですよ。私ごときが軍を鼓舞することなど出来るはずがございません」


「ジーク・メロンっ!」


クインシー、やめなさい。


「なんだそれは?」


「シャルロッテが考えた軍への掛け声ですよ。シャルロッテがこの掛け声をかけるとそれに続いて兵士達が一斉に同じ掛け声を行ったのですよ。それはそれは圧巻にございます。オレンジの王子を見学に招いておりましたが圧倒されておりましたな」


そう言ってわっはっはっはと笑うクインシー。


「シャルロッテよ、それを見せてくれぬか? 最近訓練しかしておらぬ我が民の士気が下がっておっての。パトリオットも頭を悩ましておるのだ」


そう前王に言われてクインシーを見るとやれという目で見られた。


これは酔ってるのか何か意図があるのかわからんな。


暴れるなと言ったくせに何をさせるつもりなのだろう? 参ったなこりゃ。




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