アームスは賭けに弱い
その日の夜はユーバリーだけ連れて庶民食堂へ。
「おばちゃん、ラーメンに卵」
「私はハンバーグ」
「私も」
「はいよ。あ、今日知らない商店がラーメンを売れと言って来たんだけど知ってるかい?」
「どこ?」
「イチバーン商店だよ」
あー、あそこか。
「売ったの?」
「いや、聞いてからにしようと思って在庫ないと言っておいたよ。よかったかい?」
「うん、契約してるのサバーンとギルドだけだから。他に契約したら伝えるね」
「なんか断ったら凄い剣幕だったけど大丈夫かい?」
「うん。あそこには卸さないから。ニバーンが来ても売らないでね。あそこにも卸さないから」
「はいよ」
「もし脅されたら教えて。対処するから」
「あまり無茶な事をしないでおくれよ。あんたいつも騒動の中心になるからね」
うん、それは自覚してる。
席に付いて晩飯をすする。
ズゾースゾー。やっぱりラーメン旨っ。
「ねぇ、冬休みにかぁ様とどこに行くの?」
「知らない。なんか修行させられるみたい」
「メロンでやるの?」
「どうだろう?メロンにはちょっと行きたいんだよね。庶民街の武器屋に話があるから」
「私も行く」
「来ないで。大事になるから」
「また意地悪するっ」
「意地悪じゃない。本国の姫が庶民街に行くとか大事なんだよ。それより飛び級の勉強してなよ。受けて落っこちたら恥ずかしいぞ」
「わ、わかったわよ」
ユーバリーは俺が2つ飛び級をすると思っている。ユーバリーが一つ飛び級すると同学年で中等スタートになるからそれを狙ってるのだろう。こいつ友達いないからな。
そうなったらストロベリーのラズも同学年だ。二人が友達になってくれたらユーバリーも俺に付き纏わなくなるかもしれない。猫ミミプレイは何となく罪悪感があってあまりやれないから単に子守をしているのと変わらんのだ。
部屋に戻って一息付く。
「姫様、マグソフのクリームシチューと私のは味が違いましたね」
「そうだね。プロの料理人が作った味だったね」
「あちらの方が美味しいですか?」
と、少し寂しそうなゼル。
「どちらも美味しいよ。あれは外の味付け。ゼルのはおウチの味付け。毎日食べるならゼルのを選ぶ。そしてたまにマクドのを食べる。そんな感じだね」
「あまり意味がわかりません」
「ゼルの料理はホッとする味って事だよ」
「それはいいことですか?」
「いいことだよ」
そういうと少し喜んでくれた。
冬休みに入る直前にクインシーから手紙が来た。アームス達とメロンに行ってから修行の場に行くらしい。
なら、スライサーとかの発注を聞いておこう。
サバーン商会めっちゃ流行ってんな。各地の冬の仕入れとかが多いのかな?
「こんちはー」
「おー、ちょうど良かった。スライサーを各100ずつ仕入れたい」
「そんな注文入ったの?」
「商人の買付でな。あれ手元に来るの時間かかるだろ?今の間に在庫を確保して春に売る」
「冬は忙しいの?」
「年内はな。それが過ぎたら3月くらいまでは今まで通りだろう。商人の動きが少なくなるからな」
「商人が来るようになって良かったね」
「あぁ、いちご姫様々だ。学生のバイトもすぐに来てくれるし助かってるぜ」
「それは良かったね」
「あ、ラーメンとキャラメルとかなんだがよ、イチバーンとニバーンの奴が独占するなとかイチャモン付けて来たけどあっちには卸してないのか?」
「最初に断ったの向こうだからね。卸すつもりはないよ」
「そうか、商売人は無茶するときもあるから気を付けとけよ」
「忠告ありがとう」
「それじゃ、スライサー頼んだぜ」
「はーい」
念の為に商業ギルドに寄る。
「すいません。登録したレシピのことで聞きたいんですけど」
「どういったことでしょう?」
「ここで誰でもレシピを買うことは可能なのですか?」
「契約書が無ければお売りしませんよ」
「なら良かったです」
これなら問題無しだな。
そして冬休みに突入。
「アームス、気のせいかもしれないんだけど、オレンジの馬車が後ろに付いて来てきてない?」
「す、スマン」
「ん?」
「バレンシアがどうしても招待しろと言ってきたのだ」
「は?」
「なんでOKしたのさ?」
「あいつがしつこく春休みにシャルロッテを招待すると言ってきかなかったのだ」
「それで?」
「期末テストでその・・・」
「まさか賭けて負けたんじゃないでしょうね?」
「すまん」
「行くかどうか決めるのは私でしょっ」
「そ、そうだ。俺もそう言ったのだ。そうしたら冬休みは自分はオレンジに帰れないから招待しろと言われてしまって・・・」
「お前なぁ、俺にも賭けに負けただろ?なんで凝りてないんだよ」
「ちゅ、中間は俺の方が点数が良かったのだ」
「バレンシアは賢いの?」
「あぁ、錬金術コースを受けるらしい」
「は?帝王学じゃないの?」
「気が変わったらしい。先に学んでお前に教えて恩を着せるといっていた」
「はぁ〜、俺が錬金術コースに入る頃には卒業してんだろが」
「中等の間に教えるつもりみたいだ。マシューもそんな事を言っていた」
「じゃ、私は育成コースに行こうかな」
ゲーム画面が見えるから育成に行く必要はない。バレンシア達がこれで育成コースに行けば儲けものだ。
「じゃ、私と一緒に育成だね♪」
ユーバリー、スマンこれは嘘だ。
バレンシアが付いて来ても自分はメロンでは武器屋に行ったら終わり。その後はひと目の付かない所で修行させられるみたいだからバレンシアはアームスと遊んでいてくれたまえ。
メロンに着くと、騎士と兵士が大勢出迎えてくれる。まるで凱旋帰郷のようだ。
ーオレンジの馬車ー
「メロンは盛大に歓迎してくれているな」
「はっ、これもバレンシア王子の御威光かと」
「アームスめ、渋っていたくせになかなか粋な事をするもんだ」
バレンシアは盛大なお迎えに気を良くしていた。
「ただいまー」
ここに来るのは2回目だけど自然とそんな風に言ってしまった。ジルベスターが出迎えてくれたからだ。
「おかえりなさいいちご姫様」
アームス達とバレンシアそっちのけで俺だけに構うジルベスター。それはそれで良くないと思うぞ。
そしてリーリャも出迎えてくれたので抱きついてリーリャを補充する。
「ようこそ、メロン王国へ!」
他の騎士達はちゃんと仕事してんな。格下の国とはいえ他国の王子なんだからちゃんとお出迎えは必要だ。
「シャルロッテ、驚いたか?」
と、バレンシアがニヤッと笑う。
「はい、腰が抜けるほど」
自分を出迎えたと思って兵士達に手を振るお前にな。
兵士の隊長も挨拶に来た。
「いちご姫様、兵士一同お帰りを楽しみにしておりました」
「みんな元気だった?」
「はい。いちご姫様もゼル殿もご息災の様で安心致しました」
隊長、自国の王子達に先に挨拶したほうがいいと思うぞ。
バレンシア達はメイド長のノノロが案内、俺達はリーリャ。部屋に向かうのに手ではなくリーリャの腹をムニムニしながら向かう。ノノロがいるからリーリャも怒れないのだ。
(伸びますっ)
しずしずと歩きながらそう小声で言いづけるリーリャ。スカートの中に手を突っ込んだら流石に怒るかな?部屋に入ったらスカートをめくろう。エッチなガーターベルト見たい。
前と同じ部屋に案内されてドアが閉じた瞬間にスカートをめくるとリーリャがはいているのは厚手のタイツだった。
「これにはガーターベルトも必要ありませんよ」
なんて色気の無い・・・。しかも毛糸パンツとは。
仕方がないので抱きついて胸にぐりぐりと顔を押し付けると頭を撫で撫でしてくれた。これはこれで嬉しい。
リーリャを補給し終わるとクインシーがやってきた。
「詳しい話は夜にする。今日は皆で食べるからそのつもりでな」
「陛下もおられます?」
「あぁ、アームスが突然バレンシアを招待すると言ってきたからな。マスクが居て良かった」
リーリャの補充は完了しているのでクインシーも補充。やはりフワフワ加減はクインシーの方が上。リーリャがスポンジケーキならクインシーはシフォンケーキだ。
リーリャから正装に着替えるから先にお風呂に入って下さいと言われる。
「一緒に入ろ」
「今回はダメです。他国の王子もいるのでメイドとしてけじめをつけなければ叱られます」
くそっ、バレンシアのせいだ。
風呂から出ると裾の広がったフワフワのドレスに着替えさせられる。髪の毛もアップにしてアクセサリーも付けられた。ドレスはグリーン基調。それに金のアクセサリー。頭は赤髪。まるでクリスマスツリーだな俺。頭に星でも付けられそうだ。
「シャルロッテ様、よくお似合いです」
「ドレスは緑なんだね?」
「はい。他国の方もおられますのでメロンの王族としてグリーンに致しました」
そういうことか。
リーリャが仕事モードなのでちょっと寂しい。腹を伸ばしたら嫁に行けなくなって俺のものになってくれるだろうか?そう思って腹を引っ張ったらおやめ下さいと仕事モードで怒られた。
そして食堂に向かうと一番早かったようでコックが挨拶に来てくれた。
「お帰りなさいませ。お戻りを楽しみにお待ちしておりました。明日、神のケーキを教えて頂きたいのですがお時間はございますでしょうか」
ユーバリーかアームスが報告したのか。神のケーキとかだんだん大げさになってしまったな。
「あれはたまたまそう呼んだだけでメロンケーキの方が上なんだよ。シフォンケーキはおやつみたいなもので、あと焼くための型が別に必要なんだよ」
「そうでしたか。ではそれも含めてお願い致します」
プライドを刺激されたのか引きそうにないのではいと答えておいた。




